欧州憲法条約は、2004年10月29日、ローマにおいて、EU加盟各国によって締結された(参照)。 その後、すべての国によって批准された後に、同条約は発効することになるが(第IV-447条参照)、2年後の2006年11月1日が目標に設定されている
(同第2項)。
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New 2005年5月〜6月の フランス、オランダ の国民投票で憲法条約の批准が否決されたことを受け、再考期間の導入が決定されている(参照)。これを受け、2006年11月の発効という当初の目標は、実現不可能となった。
各国の批准状況 |
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EUの東方拡大に際し、新規加盟国では国民投票が実施されたが(参照)、この流れを受け、欧州憲法条約についても、国民に直接是非を問うべきとする見解が主張されている。現在(2004年7月)までに、以下の11カ国が投票の実施を決めている(New ベルギーについて)。他方、ギリシャとキプロスでは、実施されないと解されている。なお、国内憲法上、国民投票の実施が義務付けられているのは、アイルランドのみであり、デンマークでは、国会の6分の5の賛成によって、国民投票の実施を見送ることができる。フランスやポーランドでは、大統領が判断することになっている(参照)。ドイツ、オーストリア や ベルギーは、国内法が整備されていないため、憲法改正ないし特別法の制定が検討されたが、後に見送られている(参照@ 、A)。
欧州憲法条約の批准に関する国民投票 |
すでに実施済みの加盟国(2005年6月1日現在)
(後に実施を見送った加盟国を含む) |
2005年初夏の国民投票
これから実施を予定している加盟国(2005年7月11日現在) |
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実 施 予 定 日 |
拘束力 |
デンマーク |
2005年9月27日
延期 |
なし |
ポーランド
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2005年10月9日
(未確定)
延期 |
なし |
ポルトガル |
2005年10月
(未確定)
延期
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なし |
イギリス |
2006年上半期
(未確定) 延期
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△ |
アイルランド |
2006年上半期
(未確定)
延期 |
あり |
チェコ |
2006年6月
実施について検討中 |
なし |
△: |
国民投票の結果に法的拘束力はないが、政府はそれを採用しうる。
なお、イギリスとベネルクス3国の政府は、(拘束力に欠ける)国民投票の結果を尊重するとしている(参照)。 |
(資料) Der Standard@ A、 MDR
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国民投票は、欧州憲法だけではなく、EU統合そのものに関する市民の関心を高めるのに効果的であるが(参照)、投票結果の扱い方については必ずしも統一されていない(参照)。
英仏首脳が国民投票の実施を支持する理由
なお、ドイツ政府は、国民投票の実施を正式に否定している。これは、国民が欧州憲法条約の批准を否決する危険性を恐れているためであるが、そもそも、国民投票を実施する法的基盤が整備されていない(他方、州や市町村レベルでの住民投票の実施は法的に可能である [参照])。そのため、同国では、連邦議会が批准の是非を決定することになっている(参照)。また、同様の理由に基づき、オーストリア政府も国民投票の実施に消極的である(参照)。
独 墺 の 新 し い 動 き
〜 2004年 〜 |
ドイツ政府とオーストリア政府は、国民投票の実施に消極的であることは前述したが、これを支持する見解も出てきた。2004年8月29日、ドイツ与党の
Franz Münterfering 党首は、国民、連邦議会または連邦政府の要請に応じ国民投票の実施を可能にする法案を10月または11月に提出し、国民投票の実施に必要な基盤を整える意向であることを明らかにしている
(参照)。なお、法の整備(憲法改正)については、約10年前、ユーロの導入に際しても議論されたが、現在まで実現していない。
New
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後に、ドイツ政府は国民投票の実施を断念し、憲法条約はドイツ国会の審議を経て批准されることになった。すでに議会の承認を得ているが、現在、憲法裁判所に批准の合憲性を問う訴えが提起されており、批准手続は中断している(参照)。 |
また、オーストリアの Heinz Fisher 連邦大統領も、8月29日、ある一定の条件の下、全加盟国で国民投票を実施することに賛成すると述べている。なお、同大統領は、欧州憲法条約批准に関する国民投票は、「国内の」国民投票と捉えるべきではないとし、EU全域での実施を支持している
(参照)。
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(2004年8月29日記) |
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国民投票において、欧州憲法条約の批准が否決される場合は、例えば、以下の措置を講じることができる。
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国民投票の再実施
ニース条約に関しても、アイルランドでは、第1回目の国民投票(2001年6月)では否決されたが、約1年4ヵ月後(2002年10月)に再び実施された国民投票では可決された(参照)。
フランスで再度、国民投票を実施する可能性
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欧州憲法条約の修正
加盟国の批准を容易にするため、条約に修正を設けることも可能である。例えば、マーストリヒト条約の批准を否決したデンマークには、ユーロの導入を見送る権利が与えられた。
なお、締結から2年後、5分の4の加盟国は批准したものの、他の加盟国では困難な状況が生じる場合、欧州理事会によって審議される(欧州憲法条約第IV-7条第4項)。
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EU脱退
欧州憲法条約の批准を見送る加盟国は、EUから脱退すべきであるとする見解は 憲法協議会 でも主張されていた。その是非
や法的可能性はさておき、選択肢としては考えられる
(参照)。
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なお、ある加盟国が欧州憲法条約の批准を拒否するため、同条約が発効しないときは、従来のEU条約・EC条約の下、残りの幾つかの加盟国間でのみ緊密な統合が推進されるとする見方も強い(参照@、A、B)。
批 准 状 況
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(2004年7月30日 記 2006年12月5日 更新
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