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デンマーク首相、欧州憲法条約と欧州統合について語る


デンマーク国旗
  欧州憲法条約 の批准に先立ち、デンマークでは、2005年9月27日に国民投票が実施されるが、この直接民主主義と欧州統合の将来について、Rasmussen 首相は以下のように語っている(2005年3月19日付け Die Presse 紙のインタビュー記事より[参照])。


リストマーク 国民投票で欧州憲法条約の批准が否決された場合について

 ある加盟国が憲法条約の批准を拒否する場合、憲法条約は発効しない。他に選択肢はない(参照)。なお、そのようなことが生じる場合には、欧州統合に積極的な加盟国間で新たな共同体が設立され、独自の欧州統合路線が推進される危険性がある。

 デンマークは、すでに、ユーロの導入共通防衛政策警察・司法協力の分野 (こちらも 参照)で、例外が認められており、EU・ECの政策に参加していない。そのため、2005年9月の国民投票で欧州憲法条約の批准が否決される場合、さらに新たな opting-out が認められるとは考えられない。唯一、考えられる例外は、EUからの脱退であろう。そのため、私は、9月の投票の重要性を国民に訴えている。


リストマーク デンマークでの国民投票の見通しについて

 従来、欧州統合に反対してきた組織・団体も、今回は批准を支持しているし、アンケート調査でも支持派が多数を占めている。もっとも、1992年のマーストリヒト条約の批准に際し、ユーロの導入 を見送ったときも、2000年にニース条約の批准を否決したときも、アンケート調査の結果は良好であり、民意は直前に変わっている。そのため、今回もどのような結果になるか予想しがたい。


リストマーク 現在のEUの問題について

 現在の最大の問題は、雇用不足にある。我々は、経済を活性化させ、将来にわたり、豊かな生活水準を維持しなければならない。経済の活性化と生活水準の維持の両立は困難であるが、従来は、この問題に対する取り組みが弱かった。例えば、労働市場の自由化によって、経済に活気を与えることができようが、もっとも、生活水準を低下させてはならない。おそらく、EU市民は従来よりも長く働かなければならなくなるであろうし、退職年齢も引き上げられるかもしれない。しかし、それによって、給与水準が低下するようなことがあれば、政策的には、むしろ後退している。時給1ユーロの中国とは競争できないため、研究・教育への投資を奨励する必要があろう。つまり、人件費の安いアジアには、質のよい労働力で対抗しなければならない。

 

   
(参照) Die Presse v. 20. März 2005 ("Rasmussen: Dann bleibt nur noch der Austritt")

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(2005年3月20日 記)