
オランダ国民が憲法条約に反対する理由
|
2005年6月1日、オランダ国民は、憲法条約の批准に「レッドカード」を示したが(詳しくは こちら)、これは、@ EUの「巨大化」に対する警戒、A 反ユーロ感情の高まり、また、B トルコのEU加盟 への抵抗に基づいている。なお、憲法条約の批准を訴えてきた自国政府に対する国民の不信も高まっているが、国民投票は、フランスのように政府の信任を問うものではないと解されている(参照)。
EUの「巨大化」に対するオランダ国民の警戒感
数年前まで、オランダは「熱心なEU推進派」として知られていたが、現在では欧州統合懐疑論が強まっているとされる。特に、EUの巨大化、また、ドイツやフランス、場合によっては、2004年5月に加盟したばかりのポーランドが欧州政治を牛耳ることに対する警戒感が強いとされる。特に、最大野党の労働党は、欧州憲法は「EU合衆国」を建国し、オランダを滅ぼすものであるとし、批准反対運動を展開していた(詳しくは
こちら)。
なお、EUへの拠出金を国民一人当たりの金額で計算すると、オランダの負担は、ドイツの2倍、イギリスの3倍、ベルギーやデンマークの5倍にあたり、EU25ヶ国中、最大の拠出国である。その反面、オランダの発言力やEUから受ける恩恵が小さいことに対し、国民は不満を抱いているとされる(参照)。
Duisenberg 氏の見解
反ユーロ感情の再燃
「ユーロの導入に際し、国内通貨(ギルダー)を安く売り払ってしまった」とするオランダ中央銀行幹部の発言により、反ユーロ感情が国民の間に再燃していることが憲法条約の批准にも消極的に働いたと考えられる。安定・成長協定 が遵守されないことが分かっていたならば、単一通貨の導入には賛成しなかったとする発言も見られる。 また、ユーロ導入後に物価が上昇したことも、国民の反感を買っているとされる(参照)。なお、前述したとおり、欧州統合懐疑論も強く支持されるようになっているが、かといって、EU脱退やユーロの廃止を希望するものではないと見られている(参照)。
トルコのEU加盟に対する抵抗
トルコのEU加盟に反対の立場を主張していた Pim Fortuyn 氏 や Theo van Goch 映画監督が殺害されたことは、オランダ国内で大きな議論を引き起こしており、イスラム教国からの移民の流入に国民は感情的になっているとされる(詳しくは
こちら)。
「神」への言及が削除されたことへの抗議
なお、補足的な批准反対理由として、「神」への言及が削除されたこと(詳しくは こちら)が挙げられる。特に、アムステルダムの北方に位置する港町 Urk (人口は約1万6000人)では、わずか8.4%の投票者しか憲法条約の批准を支持しなかったとされる。この支持率は、オランダ国内でも最も低い値となっている(参照)。
|