TOP      News   Profile    Topics    EU Law  Impressum          ゼミのページ


EUの旗  EU市民とトルコ系住民の統合 トルコ国旗

 EU内には多くのトルコ系市民が生活しているが、1960年代、トルコから多くの労働者を受入れたドイツには、特に多くのトルコ系市民が居住している。ドイツで生まれ、ドイツ語を話す移民2世や3世も生まれる一方で、トルコ系市民は、依然として、新しい故郷に溶け込んでいないことが指摘されている。

 2004年11月、ドイツ各地では、トルコ系住民による大規模なデモが行われ、平和とイスラム教に対するテロの撲滅を訴えた。これは、11月2日、オランダで、イスラム教に批判的な Theo van Goch 映画監督が殺害されたことをきっかけに、各地でモスクやイスラム教施設への放火が相次いだことに端を発している。監督を殺害したのは、オランダ国籍を有するイスラム原理主義者とされているが、一連の事件を背景に、ドイツで、イスラム系住民がドイツ社会に溶け込んでいないことが改めて認識されるようになった。近時、改正された移民法によれば、2005年1月より、ドイツ語の習得を移民に要請することができる。また、近時、Schröder 首相は、テレビのトーク・ショーで、私生活ではさておき、公務員が職場でスカーフを頭に巻くのは受け入れられないとし、ドイツ社会に溶け込むことの重要性を訴えた(イスラム教とスカーフについて こちら を参照)。
イスラム教徒

 なお、両民族の関係は年々、緊密になっており、「パラレル社会」(Parallelgesellschaft)現象はもはや深刻な問題ではないとされる一方で、信心深いトルコ系住民の数は増えており(2000年の65%から71%に増加)、宗教的団体も増えているとされる。また、日常生活や職場で差別感を味わっているトルコ系住民も、5年前の65%から80%に増えており、これはドイツ社会を二分し、「パラレル社会」を引き起こしかねないと警告されている。Daniel Cohn-Bendit 欧州議員は、イスラム系住民にも出世の機会を保障し、ヨーロッパ社会で受け入れられることを示す上でも、トルコのEU加盟は重要であるとしている参照




 一連の議論において、Schmidt 元首相は、1960年代にトルコから移民を受け入れたのは誤りであったと発言し、物議を醸した。所属政党の SPD (ドイツ社会民主党)や緑の党は、この発言を批判したが、カトリック教会の指導者は称賛している参照



(参照)   Stern (Politiker mahnen Integrationsbereitschaft an)

トルコのEU加盟問題 



(2004年12月10日 記)