Erdogan 首相 政教分離について語る
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2005年1月末、スイスのダボス(Davos)において、トルコの Erdogan 首相は、Die Welt am Sonntag 紙 のインタビューに応じ、トルコの政教分離について語った。会見の内容は、ドイツ語に堪能な側近の校閲を経て、同年2月6日付けの紙面(10頁) に掲載されているが(タイトルは、「なぜあなたの娘はスカーフを被っているのか」)、その概要は以下の通りである。
トルコにおける政教分離について
1923年以降、政教分離は憲法で定められており、現代トルコの基礎として、厳格に適用されている(参照)。それゆえ、40年前、EUは、トルコの加盟
の可能性について検討するようになった。外国の政治家(例えば、ドイツ野党 CDU の Merkel 党首)の批判は、失当である。
首相の娘はスカーフを被っていることについて
私の妻や娘は、敬虔なイスラム教徒であり、聖典に従い、公の場では
、スカーフを被っているが、これは政教分離に関係していない。なお、娘はスカーフをおしゃれの一つと捉えており、ファッションとして被っている。
宗教問題について、国内で最も権威のある委員会(Diyanet)の見解によると、スカーフはイスラム教のシンボルではない。この点において、キリスト教の十字架とは異なる。
ドイツ国内の1つの州[カトリック教徒の多いバイエルン州]や、フランス全土では、公立学校でスカーフを被ることが禁じられているが、これは現代的な思想に反する。
スカーフを被る女性の就学が禁じられていることについて
トルコの国内法上、スカーフを被って大学に通うことは認められていないため、娘は留学を考えているが、この法律の改正について、現在、我々は検討している。これは、政教分離ではなく、宗教上の自由を国民によりよく保障する上で適切であると考えている。
なお、この発言はトルコ国内で大きな波紋を呼び、後に Erdogan 首相は、法改正に関する審議は、国民の理解が前提であると述べている(参照)。
2008年2月9日、トルコ国会は、大学内でのスカーフ着用禁止措置を廃止することを決定した(詳しくは こちら)。
2008年6月5日、トルコの憲法裁判所は、大学内でのスカーフ着用禁止を解除する国内法は憲法に違反するとの判断を下した(詳しくは こちら)。
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トルコはEUのイスラム化を考えているのかという点について
トルコはEUのイスラム化を企てているとする見解は根拠に欠ける。我々は宣教師ではない。自らの宗教には関心があるが、これを他人に強制しようとするものではない。
トルコの大きさを考慮すると、意図しなくとも、イスラム化は生じるのではないかという点について
EUはキリスト教クラブではないし、そうあってはならないはずである。しかし、もしそうであるとすれば、大勢のユダヤ教徒やイスラム教徒にとって、EU(特に、ドイツ)は故郷になりえない
であろう。EUは、人権保護、信仰・思想の自由、また、民主主義といった共通の価値に基づいており、そうであるとすれば、トルコのEU加盟は実現されるべきである。我々は他の宗教に対して寛容であり、また、他の宗教も我々に寛容であることを期待する。
トルコは、宗教面で異教徒を支配することは考えていない平和な国である。イスラム十字軍というものはなかった。
トルコ国民の平均年齢27歳と非常に若いことについて(ドイツ国民の平均は41歳)
まさにEU市民の平均年齢を下げることにトルコは貢献しうる。多くのEU加盟国で進行している小子化問題を解消する上でも、トルコのEU加盟は有益であろう。
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