指令は、その実効性が最も保証される形で置き換えなければならない。つまり、法的安定性を有し、十分に明確で拘束力のある国内法が制定されなければならない。法的拘束力がなく、裁判規範性に欠ける行政措置は不適格である(Case
C-361/88, TA Luft [1991] ECR I-2567)。このような要件が満たされるのであれば、必ずしも法律が制定される必要はないが、指令が個人に権利(例えば、法的救済を受ける権利)を与えることを目的としている場合は、加盟国は、その権利が保障されるような形で国内法を整備しなければならない(Case
C-433/93, Vergaberichtlinien [1995] ECR I-2303)。
前述したように、指令が直接的に適用されることはなく(原則)、加盟国は所定の期間内に国内法に置き換えなければならないが、置換期間が終了する前であっても、指令はある一定の効力を持つ。つまり、置換期間中、加盟国は指令の目的に反する措置を発してはならない。これは、EC条約内の指令に関する規定(第249条第3項)だけではなく、第10条第2項より導かれる(Case
C-129/96, Inter-Environnement Wallonie [1997] ECR I-7411)。
指令が所定の期間内に適切な形で国内法に置き換えられた場合であれ、その国内法は指令の目的に完全に合致しないこともある。そのような国内法は適用が排除されるのではなく、指令の目的に合致するように解釈・適用されなければならない(指令に合致した国内法の解釈)。
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