新規加盟の実体的要件として、EU条約第49条第1項(リスボン条約体制)は以下のように定める。
@[地理的要件]
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ヨーロッパの国であること
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A[政治的・法的要件]
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EU条約第2条所定の諸原則を尊重し、また、その促進に尽力すること
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B その他、欧州理事会が設ける基準
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EU条約は1992年2月7日に締結され、1993年11月1日に発効しているが、その間の1993年6月21〜22日、コペンハーゲンで開催された欧州理事会は、前掲のEU条約上の要件を確認するとともに、新たな要件を設けた。コペンハーゲン基準[Bull. BReg. 1993, 629, 632]と呼ばれる新要件の内容は以下の通りである。
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コペンハーゲン欧州理事会
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コ ペ ン ハ ー ゲ ン 基 準  |
@[地理的要件]
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ヨーロッパの国であること
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A[政治的・法的要件]
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法治国家、民主主義、基本権および人権の保護、また、少数派の保護を保障する安定した制度を有すること
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B[経済的基準]
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市場経済が機能していることと、EU内の競争力と市場力に耐えうること
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C[EC法の総体系の受容]
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EUの政治目標と経済・通貨同盟の目標に従い、また、EC法の総体系(acquis communautaire)を受け入れうること
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Aの少数派の保護や、Bの経済的基準は、前述したEU条約第49条の新規加盟要件の中では触れられていないが、これは中・東欧諸国の社会・経済的背景を考慮した新たな基準である。同様に、CのEC法の総体系の受容もEU第1次法の中では言及されていないが、従来より、加盟の要件とされてきた。
E C 法 の 総 体 系  |
“Acquis communautaire” (アキ・コミュノテール)というフランス語で知られるEC法の総体系は、 これまでに制定(また、改正された)すべての共同体法を含み、約8万の規定からなるとされる。これらは35(ないし32〜33)の章に分けられ、申請国による受容が個別的に調査される(参照)。
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これらの基準は、1995年、マドリードにおける欧州理事会によって確認される共に、申請国はEC法の総体系の適用に必要な行政機構を整備しなければならないことが指摘された。
もっとも、前掲の基準を満たすならば、EUに加盟する権利が与えられるわけではない(EU条約第49条第1項は、加盟を申請することができると定める)。第3国の新規加盟は、むしろ、EU理事会や加盟国の判断に委ねられている。この点において、EU加盟は政治的な判断を必要とする。
なお、トルコとクロアチアに対しては、特別の要件が設けられている。
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