2005年5・6月、フランスとオランダの国民投票で欧州憲法条約の批准が否決されて以来、トルコのEU加盟消極論が台頭しているが(参照)、前述した法改正は、この傾向を強めることになった。人権保護ないし少数派の保護は、EU加盟要件のひとつにあたるが(参照)、一連の制度改革が評価され、EU加盟国首脳は、2004年12月、トルコとの加盟交渉を開始すべきであると決定している(参照)。しかし、テロ防止法の改正は従来の改革路線に逆行し、加盟要件 にも反するとギリシャ、キプロスおよびフランスは強く抗議している。他方、イギリス、スペイン、フィンランドは、現段階で、この要件を考慮すべきではないと反論している(参照)。
その他にも、キプロス問題 ないし関税同盟の実施 に関し、トルコはEUから厳しく批判されているが、2006年4月26日、アメリカの Rice 国務長官はトルコを訪問し、同国のEU路線
を後押しするとともに、キプロス問題の解決を支援する米国の方針を伝えた。2004年のマドリード・テロ以降、米・EU関係は飛躍的に改善されているが(参照)、世界平和、民主主義の普及、人権尊重を標榜する Bush 政権がトルコにどのような影響を与えるかが注目される。
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