Top      News   Profile    Topics    EU Law  Impressum          ゼミのページ



 
E U 法 に 違 反 す る 加 盟 国 へ の 損 害 賠 償 請 求
  


 EC法の実効性を高めるため、EC裁判所は、指令の置換義務を怠った加盟国への損害賠償請求を認めているが(詳しくは こちら、さらに、加盟国がEC法に違反した場合にも、この判例法理の適用を拡張している(Case Brasserie du Pecheur [1996] ECR I-1029)。

 EC法に違反する
加盟国に対し、個人が損害賠償を請求しうるための要件について、EC条約は特に定めていない。他方、ECに対する損害賠償請求については、EC条約第288条で定められているが、前者もこれに準ずると解されている。そのため、第288条の場合と同様に、以下の3つの要件を満たすことが必要になる。

@

違反したEC法は、個人に権利を与えるものであること


A

違反の程度が重大であること
 
 例えば、加盟国に裁量権が与えられているケースにおいては、その行使の暇疵が明白で、著しい場合がこれに相当する。具体的には、個々の事例ごとに検討する必要があるが、指令の置換期限を遵守しなかった場合(Case Dillenkofer [1996] ECR I-4845)や、EC法の適用に際し、裁量権が全く、または、ほとんど与えられていないにも拘わらず、これを適切に適用しない場合(Case Hedley v Lomas [1996] I-2553[本件では、EC法に反し、輸出許可を与えなかったことが問題になった])には、EC法違反の程度は重大であると解される。

 他方、指令の文言が不明確で、異なる解釈が可能であり、加盟国の解釈も相当であると解される場合には、重大なEC法違反が存するとは解されない(Case British Telecom [1996] ECR I-1631; Denkavit [1996] ECR I-5063; Brinkmann [1998] ECR I-5255)。また、国内裁判所による判断の誤りについても、例えば、関連するEC裁判所の判断を明らかに誤って解釈するといった場合でなければ、重大な違反があるとはいえない(Case C-224/01 Köbler)。

B

EC法違反と生じた損害との間に因果関係があること


 なお、被害者は損害の発生やその規模の拡大を適切に防止しなければならない他、損害の賠償を適時に請求しなければならない(Case Brasserie du Pecheur [1996] ECR I-1029)。指令の期限内に置き換えられなかったケースでは、その後に制定された国内法が遡及的に適用されるようにすれば足りる(Case Bonifani [1997] ECR I-3969)。なお、加盟国は国内法を制定し、損害賠償請求期間を定めることもできる(Case Palmisani [1997] ECR I-4025)。


    リストマーク EC法上の損害賠償請求訴訟