Top      News   Profile    Topics    EU Law  Impressum          ゼミのページ


Star
EU法講義ノート


E C E U ) の 機 関

 EC条約第7条第1項は、ECの機関として、@議会(Parliament)、A理事会(Council)、B委員会(Commission)、C裁判所とD会計検査院(Court of Auditors)を挙げている[1]。この内、EU法を学ぶ上で重要なのは、@〜Cの機関であるが、これらは、自らを以下のように呼んでいる。


New リスボン条約体制については こちら




欧州議会European Parliament

欧州議会(ストラスブール)

EU理事会Council of European Union[2]

EU理事会

欧州委員会European Commission

欧州委員会

EC裁判所Court of European Communities

EC裁判所

写真提供: Audiovisual Library European Commission





ハテナ ECの機関? それとも、EUの機関?

 EU3本柱の中で、最も広範かつ徹底した活動を行い、また、加盟国間の統合の度合いが強いのは1本目の柱、すなわち、ECである。以下では、このECの機関について説明する。なお、これらは、EUの機関と呼ばれることもあるが、実質的には、ECの機関として活動している。ECの機関は、EC条約内で挙げられている(第7条)。そのため、同条約ではなく、EU条約(第4条)で言及されている欧州理事会(European Council)は、ECの機関ではな[3]欧州理事会と、ECの機関であるEU理事会の違いについて注意しなさい(参照[4]


New リスボン条約に基づき、ECは廃止され、EUに承継された(詳しくは こちら)。従って、現在、すべてEUの機関となり、ECの機関か、それとも、EUの機関かという問題は生じない。




以下では、これらの機関の構成・権限について説明するが、以下の点に注意すべきである。


@ 構成

 各機関のメンバーは、どのような人からなり、またどのようにして任命されるか。

 加盟国との関係はどのようになっているか。


A 権限

 ・ 立法手続における役割

 ・ EC法の履行に関する役割

 なお、これらの点については、EU憲法による改正についても注意すべきである。


諸機関


  


拡 大 E U (27ヶ国体制)の 機 構 制 度

 2007年1月、ルーマニアとブルガリアがEUに加盟し、EUは27ヶ国体制に発展したが、同体制下における機構制度は以下の通りである。  

    ・2004年4月までに加盟していた15ヶ国

 

欧州委員 

(人)

EU理事会の特定多数決における

(票)

欧州議会の議席

(人)

各国の人口 

(100万人

1議席あたりの人口

 (万人)

1

29

99

82.4

83.2

  フランス 1 29 78     62.9

イギリス

1

29

78

60.3

77.1

イタリア

1

29

78

58.7

スペイン

1

27

54

43.7

オランダ

1

13

27

16.3

ギリシャ

1

12

24

11.1

ベルギー

1

12

24

10.5

ポルトガル

1

12

24

   10.5

スウェーデン

1

10

19

  9.0

オーストリア

1

10

18

  8.2

デンマーク

1

 7

14

  5.4

フィンランド

1

 7

14

  5.2

アイルランド

1

 7

13

 4.2  

ルクセンブルク

1

 4

6

  0.4

 6.7

合計

15

237

  570


    ・2004年5月以降に加盟した12ヶ国

ポーランド

1

27

54

   38.1

 ルーマニア 1 14 35  21.6

1

12

24

   10.2

ハンガリー

1

12

24

   10.0

 ブルガリア 1 10 18     7.7

スロバキア

1

 7

14

    5.3

リトアニア

1

 7

13

    3.4

ラトビア

1

 4

 9

    2.2

スロベニア

1

 4

 7

    2.0

28.6

エストニア

1

 4

 6

    1.3

キプロス

1

 4

 6

    0.7

1

 3

 5

    0.4

 8.0

 新規加盟12ヶ国 12 108 215
 

27ヶ国

27

345

  785

 



各国の人口 (2006年)は、Eurosat の資料 による
 


 統治機構制度(特に、欧州委員会の定数と欧州議会の議席数)は、度々、変更されているので、注意が必要である。


・ 15ヶ国体制時の機構制度については こちら

・ 25ヶ国体制時の機構制度については こちら

・ 27ヶ国体制(ニース条約制定時)の機構制度

  ・ 制定時のニース条約による機構制度

  ・ 現在の機構制度

  ・ 2009年6月の欧州議会選挙後の議席数

  ・ 2009年11月以降に就任する欧州委員会の定数


・ 欧州憲法条約による改正については こちら

・ リスボン条約による改正については こちら (こちらも参照





ニ ー ス 条 約 に よ る 機 構 制 度 改 革


リストマーク 欧州委員会 

 EU拡大に伴い、欧州委員は増員された[6]。ニース条約の「EU拡大に関する議定書」[7]4条第1項 によれば、2005年1月1日以降に初めて任命される欧州委員会には、各国出身者が1名ずつ任命されることになるが、2002年12月、コペンハーゲンで開かれた欧州理事会は、その導入日を2004年11月1日に変更した(Barroso 欧州委員会の就任[8]。なお、EU加盟国の総数が27(ないし27以上)になるときは、もはや委員は各国より1名ずつ選出されない。委員の総数は理事会が全会一致で決定することになっている(前掲議定書第4条第2、EC条約第213条第1項参照)。

 現在の委員会は、2004年11月に任命された。任期は5年であるため(EC条約第214条第1項)、次期委員会は、2009年11月に任命される予定であるが、すでにEU加盟国数は27に達しているため、ニース条約の「EU拡大に関する議定書」4条第2項 に基づき、委員は各国から1名ずつ任命されず、委員会の定数も26名以下に削減される。なお、この規定は、欧州憲法条約やリスボン条約によって改正される予定であるが、両条約ともまだ発効していない。

リストマーク  Barroso 欧州委員会の就任

 
欧州憲法条約による見直し


 リスボン条約による見直し



リストマーク EU理事会の議決(特定多数決)における各加盟国の票数

前掲のEU拡大に関する議定書と宣言によれば、表1内の新しい票数配分は、200511日より適用されるが、200212月、コペンハーゲンで開かれた欧州理事会は、2004111日より適用する旨を決定した[9]


       リストマーク 特定多数決の成立については こちら
    

なお、EU拡大が実現した2004年5月1日から同年1031日までの期間、現加盟国には従来の票数が与えられる(参照)。他方、新規加盟国の票数は以下の通りである(移行措置)[10]


 ポーランド  8
 チェコ、ハンガリー 5
 スロバキア、リトアニア、ラトビア、スロベニア、エストニア 3
 キプロス、マルタ 2
  計 37

25ヶ国すべての票数を合計すると、124になるが、そのうち、88票以上が得られれば、議案は可決される(前掲表1内の新しい票数配分によれば、総計321票のうち、232票が得られれば、特定多数決は成立する)。また、同数以上の票と3分の2以上の加盟国の賛成が得られれば、いわゆる「二重の特定多数決」は成立する。 なお、EC条約第205条には第4項が設けられ、加盟国は、特定多数決制による決議には、EU人口の少なくとも62%が反映されていることを要求することができると定める(反映されていない場合は、決議は成立しない)。

 リストマーク 欧州憲法条約による見直し



リストマーク EU理事会議長国

現行制度は、2006年末まで存続することになっているため、それまで新規加盟国が議長国になることはない。


 任 期  議 長 国
 2004年度     1〜 6月    アイルランド
7〜12月    オランダ
 2005年度  1〜 6月    ルクセンブルク
7〜12月    イギリス
 2006年度  1〜 6月    オーストリア
7〜12月    フィンランド 
2007年度  1〜 6月    ドイツ
7〜12月    ポルトガル
 2008年度  1〜 6月    スロベニア
7〜12月    フランス
 2009年度  1〜 6月  チェコ
7〜12月    スウェーデン
 2010年度  1〜 6月    スペイン
7〜12月    ベルギー
 2011年度  1〜 6月    ハンガリー
7〜12月    ポーランド
 2012年度  1〜 6月    デンマーク
7〜12月    キプロス
 2013年度  1〜 6月    アイルランド
7〜12月    リトアニア
 2014年度  1〜 6月    ギリシャ
7〜12月    イタリア
 2015年度  1〜 6月    ラトビア
7〜12月    ルクセンブルク
 2016年度  1〜 6月    オランダ
7〜12月    スロバキア
 2017年度  1〜 6月    マルタ
7〜12月    イギリス
 2018年度  1〜 6月    エストニア
7〜12月    ブルガリア
 2019年度  1〜 6月    オーストリア
7〜12月    ルーマニア
 2020年度  1〜 6月    フィンランド

ブルガリアとルーマニアのEU加盟は、2007年元旦に実現した(詳しくは こちら)。


(参照) EU理事会の公式サイト


  
  リストマーク 欧州憲法条約による見直し


リストマーク 欧州議会の議席数

 上掲の議席配分は、2004年6月の欧州議会選挙 より適用される。依然として、大国に不利な票数配分であるが、ドイツ特有の問題は幾分、解消されている。 

 なお、新規加盟国の議席数は、遅くとも200411日までに、加盟条約が締結されることを条件にしている(前掲議定書第2条第2)。当初は、ブルガリアとルーマニアの加盟 も予定されており、両国の議席数(それぞれ、17、33)を加えると、総議席数は732になる(前掲宣言参照)[11]。総議席数が732に達しないときは、これに近づけるように、各国の議席数が増やされることになっている(前掲議定書第2項第3項)

  ブルガリアとルーマニアの50議席を配分し直した後の各国の議席数(2004年6月から2009年6月)は下記の通りである。

 従来の加盟国
 国 名 議席数
 ドイツ 99
 イギリス 78
 イタリア 78
 フランス 78
 スペイン 54
 オランダ 27
 ベルギー 24
 ギリシャ 24
 ポルトガル 24
 スウェーデン 19
 オーストリア 18
 デンマーク 14
 フィンランド 14
 アイルランド 13
 ルクセンブルク 6
 合計 570    
 新規加盟国
ポーランド 54
ハンガリー 24
チェコ 24
スロバキア 14
リトアニア 13
ラトビア 9
スロベニア 7
エストニア 6
キプロス 6
マルタ 5
合計 162    
  合   計  732


 New ブルガリアとルーマニアの新規加盟(2007年元旦)により、両国の議席数(それぞれ、18、35)が追加され、総議席数は785となった。

 2004年6月 実施予定の欧州議会選挙 

 
欧州(EU)憲法による見直し

 
議席不均衡問題

 


 リストマーク EC裁判所 


    ニース条約による司法制度改革については こちら 


(脚注) 本文に戻るときは、行頭の番号をクリックしてください。


 

[1]

その他に、補助機関ないし補助施設として、経済・社会部会(Economic and Social Committee)、地域部会(Committee of the Regions)、欧州中央銀行(European Central Bank)や欧州開発銀行(European Investment Bank)がある(EC条約第7条第2項、第8条および第9条参照)。

[2]

3つの欧州共同体の最高機関である理事会(Council)は、1993年にEUが創設されたのに伴い、EU理事会と称するようになったが、従来通り、共同体(EC)の機関である。議長国は、会議の招集、準備および司会を担当する(EC条約第204[旧第147]参照)だけではなく、第3国との関係においては、EC/EUを代表する任務を負う。

[3]

So Hakenberg, Grundzüge des Europäischen Gemeinschaftsrechts, Verlag Vahlen 2003, 3rd edition, p. 35 (para. 20).

[4]

See also Koenig and Haratsch, Europarecht, Mohr 2003, 4th edition, paras. 908-909.

[5]

Declaration on the enlargement of the European Union, OJ 2001, No. C 80, 80.

[6]

2002121213日、コペンハーゲンにおける欧州理事会最終決議、SN 400/02, Ziffer 7.

[7]

Protocol on the enlargement of the European Union, OJ 2001, No. C 80, 49.

[8]

Ibid. Ziffer 7.

[9]

新しい議決制度の詳細について、Koenig and Haratsch, Europarecht, Mohr 2003, 4th edition, paras. 163-165.

[10]

これは、2002102425日、ブリュッセルで開かれた欧州理事会で決定された。

[11]

なお、1996年制定のアムステルダム条約では、議席の上限は700とされたが、ニース条約はこれに従っていない。