E C ( E U ) の 機 関 |
EC条約第7条第1項は、ECの機関として、@議会(Parliament)、A理事会(Council)、B委員会(Commission)、C裁判所とD会計検査院(Court of Auditors)を挙げている[1]。この内、EU法を学ぶ上で重要なのは、@〜Cの機関であるが、これらは、自らを以下のように呼んでいる。 |
写真提供: Audiovisual Library European Commission |
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以下では、これらの機関の構成・権限について説明するが、以下の点に注意すべきである。
2007年1月、ルーマニアとブルガリアがEUに加盟し、EUは27ヶ国体制に発展したが、同体制下における機構制度は以下の通りである。 ・2004年4月までに加盟していた15ヶ国
・2004年5月以降に加盟した12ヶ国
統治機構制度(特に、欧州委員会の定数と欧州議会の議席数)は、度々、変更されているので、注意が必要である。
欧州委員会 EU拡大に伴い、欧州委員は増員された[6]。ニース条約の「EU拡大に関する議定書」[7]第4条第1項 によれば、2005年1月1日以降に初めて任命される欧州委員会には、各国出身者が1名ずつ任命されることになるが、2002年12月、コペンハーゲンで開かれた欧州理事会は、その導入日を2004年11月1日に変更した(Barroso 欧州委員会の就任)[8]。なお、EU加盟国の総数が27(ないし27以上)になるときは、もはや委員は各国より1名ずつ選出されない。委員の総数は理事会が全会一致で決定することになっている(前掲議定書第4条第2項、EC条約第213条第1項参照)。 現在の委員会は、2004年11月に任命された。任期は5年であるため(EC条約第214条第1項)、次期委員会は、2009年11月に任命される予定であるが、すでにEU加盟国数は27に達しているため、ニース条約の「EU拡大に関する議定書」第4条第2項 に基づき、委員は各国から1名ずつ任命されず、委員会の定数も26名以下に削減される。なお、この規定は、欧州憲法条約やリスボン条約によって改正される予定であるが、両条約ともまだ発効していない。
EU理事会の議決(特定多数決)における各加盟国の票数 前掲のEU拡大に関する議定書と宣言によれば、表1内の新しい票数配分は、2005年1月1日より適用されるが、2002年12月、コペンハーゲンで開かれた欧州理事会は、2004年11月1日より適用する旨を決定した[9]。 特定多数決の成立については こちら なお、EU拡大が実現した2004年5月1日から同年10月31日までの期間、現加盟国には従来の票数が与えられる(参照)。他方、新規加盟国の票数は以下の通りである(移行措置)[10]。
25ヶ国すべての票数を合計すると、124になるが、そのうち、88票以上が得られれば、議案は可決される(前掲表1内の新しい票数配分によれば、総計321票のうち、232票が得られれば、特定多数決は成立する)。また、同数以上の票と3分の2以上の加盟国の賛成が得られれば、いわゆる「二重の特定多数決」は成立する。 なお、EC条約第205条には第4項が設けられ、加盟国は、特定多数決制による決議には、EU人口の少なくとも62%が反映されていることを要求することができると定める(反映されていない場合は、決議は成立しない)。
現行制度は、2006年末まで存続することになっているため、それまで新規加盟国が議長国になることはない。
欧州憲法条約による見直し
上掲の議席配分は、2004年6月の欧州議会選挙 より適用される。依然として、大国に不利な票数配分であるが、ドイツ特有の問題は幾分、解消されている。 なお、新規加盟国の議席数は、遅くとも2004年1月1日までに、加盟条約が締結されることを条件にしている(前掲議定書第2条第2項)。当初は、ブルガリアとルーマニアの加盟 も予定されており、両国の議席数(それぞれ、17、33)を加えると、総議席数は732になる(前掲宣言参照)[11]。総議席数が732に達しないときは、これに近づけるように、各国の議席数が増やされることになっている(前掲議定書第2項第3項)。 ブルガリアとルーマニアの50議席を配分し直した後の各国の議席数(2004年6月から2009年6月)は下記の通りである。
ブルガリアとルーマニアの新規加盟(2007年元旦)により、両国の議席数(それぞれ、18、35)が追加され、総議席数は785となった。
ニース条約による司法制度改革については こちら |
(脚注) 本文に戻るときは、行頭の番号をクリックしてください。
[1] |
その他に、補助機関ないし補助施設として、経済・社会部会(Economic and Social Committee)、地域部会(Committee of the Regions)、欧州中央銀行(European Central Bank)や欧州開発銀行(European Investment Bank)がある(EC条約第7条第2項、第8条および第9条参照)。 |
[2] |
3つの欧州共同体の最高機関である理事会(Council)は、1993年にEUが創設されたのに伴い、EU理事会と称するようになったが、従来通り、共同体(EC)の機関である。議長国は、会議の招集、準備および司会を担当する(EC条約第204条[旧第147条]参照)だけではなく、第3国との関係においては、EC/EUを代表する任務を負う。 |
[3] |
So Hakenberg, Grundzüge des Europäischen Gemeinschaftsrechts,
Verlag Vahlen 2003, 3rd edition, p. 35 (para. 20). |
[4] |
See also Koenig and Haratsch, Europarecht, Mohr 2003, 4th edition, paras.
908-909. |
[5] |
Declaration on the enlargement of the European Union, OJ 2001, No. C 80,
80. |
[6] |
2002年12月12・13日、コペンハーゲンにおける欧州理事会最終決議、SN 400/02, Ziffer 7. |
[7] |
Protocol on the enlargement of the European Union, OJ 2001, No. C 80, 49. |
[8] |
Ibid. Ziffer 7. |
[9] |
新しい議決制度の詳細について、Koenig and Haratsch, Europarecht, Mohr 2003, 4th edition, paras. 163-165. |
[10] |
これは、2002年10月24・25日、ブリュッセルで開かれた欧州理事会で決定された。 |
[11] |
なお、1996年制定のアムステルダム条約では、議席の上限は700とされたが、ニース条約はこれに従っていない。 |