@ 欧州憲法条約
EUの機能を実効的にし、将来にわたる正当性を確保するため、新たな法的基盤の整備が必要とされているが、実質的な議論は、フランスとオランダの選挙後でなければ行えないとする意見が大勢を占めている。議論の叩き台は、2007年上半期に議長国を務めるドイツによって提出されるため、フィンランド議長国期間中の大きな発展は期待しえない。
(参照) 2006年6月の欧州理事会の決定
なお、フランスとオランダの国民投票で否決された憲法条約の「死」を宣告する立場もあるが、フィンランドはその発効を目指し、批准作業を進めている。当初は、議長国就任前の批准が目標に掲げられていたが(参照)、早くても2006年9月になると見られる(参照)。
(参照) 各国の批准状況
A EU拡大
当初の予定では、2007年元旦、ブルガリアとルーマニアのEU加盟が実現するが、最終判断はまだ下されておらず、2006年秋に提出される欧州委員会の報告書に基づき、決定される(詳しくは
こちら)
2006年上半期に本格的に開始されたトルコとクロアチアとの加盟交渉も進展すると解されるが(参照)、上半期の議長国オーストリアが訴えていた新しい加盟要件の導入にフィンランドは強く反対している。トルコのEU加盟に関し、態度が明確に分かれる国の議長国期間が続いたが(2005年下半期の議長国イギリスは積極的に支持、続くオーストリアは懐疑的)、フィンランドは中立ないし加盟を支持する立場にある。同国から議長国のたすきを引き継ぐドイツの
Merkel 首相は、かねてより加盟に消極的であるため(参照)、フィンランドの議長国期間中に交渉がどの程度進展するか注目される。
なお、欧州委員会でEU拡大を担当する Rehn 委員 はフィンランド出身である。トルコが関税同盟を完全に実施していないことを強く批判しているが、議長国就任に際し、フィンランドの Tuomioja
外相もトルコを警告している(参照)。
2006年12月の欧州理事会では、将来のEU拡大に関する問題について審議される予定である。
(参照) 2006年6月の欧州理事会の決定
B 競争力の強化
リスボン戦略 でも謳われているように、経済発展と雇用の創出はEUの最重要課題にあたる。それを達成すため、技術革新、エネルギー問題、労働と生産性の質の向上、世界貿易の自由化、移民、社会制度など、幅広く協議することをフィンランド政府は重視している。なお、これらの問題のすべてに、EUが取り組めるわけではなく、加盟国の下に政策権限が残されているものある。そのため、フィンランド政府は各国の主権や特殊性にも配慮しているが、前掲の案件については、10月の欧州理事会で審議される予定である。なお、エネルギー問題に関しては、EUへの最大のガス供給国ロシアの参加も検討されているが、ロシアの隣国フィンランドでも、供給源の1国集中は批判されている。
(参照) 2006年5月のEU・ロシア首脳会談
C その他の案件
EU外交能力の強化、ロシアを初めとする第3国との外交関係の発展、9月に予定されているASEM・EU会議など外交問題も主要な政策課題に挙げられている。また、EUの第3の柱の強化 や EU意思決定手続の透明性・実効性の向上も重視されている。
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