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EUの旗 第17回 EU・ロシア首脳会談

懸案のエネルギー問題、進展せず
ロシア国旗


  2006年5月25日、ロシアのソチ(Sotchi )において、EU・ロシア首脳会談が開かれた。今回で17回目を数えるヨーロッパ2大勢力の会合は、@両者間の貿易・投資の自由化・促進、AロシアのWTO加盟、Bビザ発給要件の緩和とEU内違法滞在ロシア人の送還、Cロシアの人権問題、D2006年末に失効するパートナーシップ・協力協定(PCA)の更新など多岐に亘ったが、最も重点が置かれたのは、ガス供給問題であった。

 1994年12月に制定された「欧州エネルギー憲章」にEU加盟国(また、EC)とロシアは署名しているが、これに基づき、ロシアは国内市場の自由化や、外国企業の受け入れが義務付けられる。もっとも、ロシアは同憲章をまだ批准しておらず、国内市場を解放していない。 最大の貿易パートナーはEUであるが、輸出は国営の Gazprom が独占し、EU企業を排斥している。また、近時は、バルト海にパイプラインを設け、EU市場の開拓に乗り出していパイプるだけではなく、EU企業を買収する動きを見せている。そのため、EUは神経を尖らせているが、2006年初頭、ロシアがウクライナへのガス供給を一時停止しただけではなく、近時の原油高騰、また、中国によるエネルギー資源の大量買い付けは、エネルギー源確保の重要性を強く認識させるに至り、EU加盟国は、ロシアへの大規模依存を見直しつつある。これにロシアは反発し、EUが信用しないのなら、供給先を変更するとし、中国との結びつきを強化しているが、このエネルギー外交政策はEUの不信感をさらに煽っている。

 首脳会談の冒頭、ロシアの Putin 大統領は、ロシアは信頼のおけるエネルギー ・パートナーであると述べるとともに、それを示す例として、バルト海からドイツへ伸びるパイプラインの建設を挙げたとされるが(参照)、この計画はポーランドの不信を買っているだけではなく、この事業を運営する会社の幹部に Schröder 前ドイツ首相(2005年11月退陣)を招いているため大きな波紋を呼んでいる。 黒海の保養地ソチ(Sotchi )での会談は、ロシア側の要請により、90分で終了したため、ガスの供給をめぐる問題は解決されずに終わった。

 なお、ロシア人に対するビザ発給要件の緩和や、EU内違法滞在者の送還義務に関しては、両者間で合意がまとまり、協定が締結された。また、法的には2006年に失効するパートナーシップ・協力協定(PCA)は、新たな協定が締結されるまで適用されることで合意された。




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 2006年5月24日、Eurosat は、EU加盟25ヶ国の対ロシア貿易赤字は、1999年の176億ユーロから、2005年は503億ユーロに増加したと発表した。これは、ガスや石油の輸入が大幅に増えたことによるとされる(1999年の196億ユーロから2005年は706億ユーロ)(参照)。





   (参考)

EU理事会議長国〔オーストリア)の公式サイト

欧州委員会のプレスリリース (2006年5月26日)

Eurosat のニュース(EU・ロシアの貿易統計)(2006年5月24日) 

Der Standard v. 25. Mai 2006 (EU - Russland: Kleine Fortschritte, Skepsis im Großen)


New 2006年10月の首脳会談

 

(2006年5月28日 記)