欧州憲法条約の批准 や 次期財政計画の策定 という2重の難局に直面し、EUはかつてないほど深刻な危機に直面しているが(参照)、2005年下半期、EU理事会議長国は ルクセンブルク からイギリスに継承される。特に、次期財政計画の決定に関し、イギリスは問題の火付け役にあたり、孤立感を深めている(参照)。そのため、両問題に関し、具体的な成果が得られるのは、2006年上半期(オーストリアの議長国期間)と見られているが、それまでの半年間、イギリスは、自国の利益を貫徹するだけではなく、EU全体の利益のため、各国の意見調整に貢献するか注目される。
2005年6月23日、Blair 首相は 欧州議会 (ブリュッセル)において、向こう半年間の計画を示しているが、主要課題は以下の通りである(参照)。
次期財政計画
2005年6月16・17日の欧州理事会において、各国の首脳は、EUの 次期財政計画 (2007年〜2013年)について審議したが、イギリスとオランダの「全く理解しえない抵抗」(ドイツの
Schröder 首相)によって協議は成立しなかった(参照)。イギリスの優遇策(British rebate) に関し、全く譲歩しなかった Blair 首相は、欧州議会の場でも改めて自らの立場を正当化している。また、優遇策を「まな板」に乗せたイギリスのリーダーは他にいないとも述べている。他方、EUの財政制度や
ヨーロッパ型社会モデル の修正(現代化)の必要性を改めて強調している。
2005年10月の加盟国首脳会議
域内サービス市場の自由化に関する指令
2005年3月、加盟国首脳は 域内サービス市場の自由化に関する指令案 を根本的に見直すことを決定しているが、自由化を推進するイギリスは(参照)、イニシアチブを発揮するものとみられる。
トルコとクロアチアのEU加盟
フランス と オランダ の国民投票で欧州憲法条約の批准が否決されたことを受け、加盟国政府や欧州委員会は、トルコのEU加盟に慎重になっているが(参照)、加盟交渉は、10月3日に加盟交渉が開始されることになっている(参照)。なお、かねてよりイギリスは、トルコのEU加盟を積極的に支援している(参照)。
他方、クロアチアとの交渉の開始について、イギリスは懐疑的とされているが、2005年3月、交渉の見送りが決定されている(参照)。下半期には、この問題について再度検討することになると解される。
その他の主要課題
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