EU財政は、@加盟国からの拠出金、A加盟国の税(消費税)収の一部、B共通関税( 参照)、また、C輸入相殺金等で賄われているが
、@ について、イギリスには優遇策が設けられている。これによって、同国の財政負担は66%、軽減されている。つまり、イギリスは、1ユーロの支払いに対し、66セントの払戻しを受けており、現在、その総額は、年間で46億ユーロにも上る。
いわゆる「イギリスへの払い戻し」(British rebate)は、"I want my money back" というサッチャー首相の発言に基づき1984年に導入されているが、同首相は、EU(当時はEC)から受け取るよりも、多くの資金を拠出することは、「貧しい国」にとって不当であるとし、拠出金の返還を求めた(参照)。また、当時、EUの全予算の70%以上は、農業政策 の分野に当てられていたが、農民の少ないイギリスが受ける恩恵は小さいことが、払戻しの根拠として挙げられていた。Iron Lady の一連の発言は、イギリスが利己的であり、また、欧州統合を必ずしも積極的に推進するものではないことの一例として、よく指摘されている。
今日、イギリスは最も豊かな加盟国の一つに発展しているため、欧州委員会は、優遇策の見直しを提案している(参照)。
現在、EU理事会議長国を務めるルクセンブルクは、現在の水準で優遇策を凍結することを提案しているが、イギリスはこれに反対している。その背景には、拠出金の払い戻しを受けた後でも、同国は、ドイツに次いで最も多くの資金をEUに提供していることがある(下のグラフ参照)。
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