特に、東方拡大 が、ソーシャル・ダンピング(従来の加盟国において)や経済発展の援助(新規加盟国)という新たな問題ないし課題を生み出していることを考慮すると、イギリスは自らの利益を重視し過ぎていると言えよう。また、EU加盟国に要求される連帯的意識に欠けた態度は、「豊かな国のエゴ」として他の加盟国首脳より批判されている(参照)。
第2次世界大戦終了直後より、イギリスは欧州統合に距離をおいてきたが(参照)、国際化・市場開放政策を掲げる Blair 政権は、むしろ経済統合に積極的であるとも解されている(詳しくは こちら)。もっとも、英国が望むのは、まさに経済統合そのものであり、加盟国の連帯性を前提とした政治同盟ではないと捉えることもできる(参照)。今日、EUは単なる経済同盟にとどまるものではない。この点において、イギリスは欧州統合に消極的であると言える。
なお、フランス と オランダ の国民投票で、欧州憲法条約の批准が否決されたことを受け、イギリスは、いち早く、批准手続の凍結を決定したが(詳しくは こちら)、これは自国内でも批准が否決される危険性を踏まえた判断であるとすれば、欧州統合に懐疑的であるとは言えない。実際に、批准手続の一時休止ないし見直しは、欧州理事会によって決定されている(詳しくは
こちら)。
種々の課題が残されたまま、理事会の議長国はイギリスに承継される(参照)。通常、議長国は欧州統合の推進に尽力するが、2005年下半期はどのような展開が見られるか注目される。6月23日、イギリスは 欧州議会 に方針を説明する予定であるが、議長としての任期がまだ残っているルクセンブルクの Juncker 首相 は欠席するとしている。その理由として、同日は母国の公休日であることが挙げられているが、次期財政計画の決定をめぐって生じた Blair 首相との確執も無視できないであろう。Juncker
首相が指摘する「EUの深刻な危機」とは、24ヶ国対1ヶ国の構図を呈しているとも解される。
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