欧州理事会の終了直後、ドイツの Schröder 首相は、イギリスとオランダの反対によって、EU次期財政計画は暗礁に乗り上げたと語った。特に、イギリスは、優遇策 の見直しに譲歩する姿勢を全く見せず、東方拡大 に必要な経済的貢献を拒んだとされる(参照)。
他方、オランダは、EUへの拠出金の削減(年間15億ユーロ)を強く要求しており、理事会議長国の最終案(年間7億ユーロ)にも同意しなかった(参照)。国民一人当たりの金額に換算すると、オランダは、25ヶ国中、最も多くの資金をEUに拠出しており、この点に関する不満が、憲法条約の批准否決につながったと分析されている(詳しくは
こちら)。そのため、Balkenende 首相 は欧州理事会に強い態度で臨んだと解される(詳しくは こちら)。
外交筋によると、イギリスとオランダ以外にも、スウェーデンとスペインがルクセンブルク案を受け入れなかったとされているが(参照)、かねてより、スウェーデンは、EU予算を全加盟国のGDPの1.0%以下に抑えるべきことを要求していた(ルクセンブルクの最終案では1.06%)(参照)。他方、スペインはEUからの補助金の削減に反対していた(参照)。さらに、フィンランドもルクセンブルクの提案を拒絶したとされている(参照)。
イギリスの報道戦略
欧州理事会の終了後、議長国ルクセンブルクの Juncker 首相 は、25ヶ国間の溝は深いわけではなく、欠けていたのは、財政計画を成立させようとする政治的意思であると述べている。また、単に大きな市場(EC市場)を必要とする国と、政治統合をも目指す国とがあり、両者間の対立は表面に現れるより根深いとし、EUは深刻な危機に直面しているとも語っている(参照@、A)。さらに、比較的貧しい 新規加盟10ヶ国 がEUのために、自らの利益を放棄するとしたのに対し、豊かな国が妥協する姿勢を見せないのは恥ずべきことであるとして、イギリスを批判した。
その後のコメント
ベルギーの Verhofstadt 首相も、財政計画の成立に向け譲歩しなかった「豊かな国のエゴ」を批判すると共に、将来、EUは政治同盟に発展する用意があるのかどうか、明確な回答が求められる時期に差し掛かっていると述べている(参照)。
これに対し、オランダの Balkenende 首相 は、「豊かな国のエゴ」とする批判(ドイツの Schröder 首相)は適切ではないと反論している。また、イギリスの Blair 首相は、農業補助金に40%以上(研究・教育予算の7倍)を割く現行制度は見直しが必要であり、それなくして、イギリスは
優遇策 の見直しに応じないとしている。また、伝統的な「ヨーロッパ型社会モデル」は、今日の国際化の過程において再検討を余儀なくされているとし、自らの立場を正当化している(参照)。
他方、Chirac 大統領は、農業政策以外の分野では、加盟国政府からも補助金が支出されていると反論している。なお、6月17日の欧州理事会において、フランスは、EU農業予算の削減に同意する姿勢を見せていた(参照)。
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