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Verheugen 欧州委員、2005年6月の欧州理事会について語る

EUの旗 2005年6月15日、欧州委員会Verheugen 副委員長(産業政策等担当)は、 ドイツのラジオ放送局 Deutschlandradio のインタビューの中で、16日より開催される欧州理事会やEU拡大について語っているが、その概要は以下の通りである。


リストマーク EU次期財政計画に関する議論について

 金銭に関する案件はいつも紛糾するが、幸運なことに、EUでは7年置きに審議される(検討中の財政計画は、2007〜2013年に関するものである)。現在、EUは危機に直面しているが(リストマーク 欧州憲法条約批准危機)、それゆえに、財政計画の分野で新たな危機を生み出してはならないという心理的抑制が働いており、6月16・17日の欧州理事会では良い結果が出るものと考えられる。


    リストマーク 2007〜2013年のEU財政計画



リストマーク 議論は、かつてないほど紛糾しているのでは?

 次期財政計画に関し、EU加盟国は、これまで以上に激しく対立しているという見解は証明されていない。前回、加盟国は、会計年度が始まる9ヶ月前にようやく合意に至っているが(1999年、ベルリンでの会合でようやく決着した)、今回は、まだ18ヶ月の時間がある。

 @ EU財政負担の大きな国は、期待するほど、負担が軽減されることにはならないであろうし、A イギリスも 優遇策 を維持することはできないであろう。また、B フランスは農民への補助金の削減に同意しなければならなくであろうし、C スペインも、現在のように多くの資金をEUから受け取ることはできなくなろう。各国がこれに同意しないとすれば、議論は紛糾するが、譲歩するものと解される。



リストマーク 欧州理事会の審議事項について

 6月16・17日、私は、ブリュッセルにいない予定であるが、当初の計画では、まず16日に欧州憲法条約の批准 について話し合い、次期財政計画に関する審議は、翌17日に開始されることになっている。つまり、加盟国首脳は、まず、直面している問題について、先に検討する予定である。



リストマーク 欧州憲法条約について

 欧州憲法条約の要点は、@ EUをより民主的にすること、A EUと加盟国間の権限配分を明瞭にし、また改善すること、B EUの意思決定手続を改善し、EUの国際発言力を高めることにあるが、これらの点に反対する者はいない。また、フランスオランダ の国民投票でも、憲法条約の内容そのものが批判されたわけではない。そのため、憲法条約の批准手続を中断するのは適切ではない。しかし、各国の状況を無視してはならず、憲法条約に関する議論や国民への普及に、より長い時間を要する加盟国には、必要なだけ時間を与えるべきである。

   欧州理事会の決定




リストマーク EU拡大の必要性について

 市民は EU拡大 に対し懐疑的であり、拡大は、市民の見解に反し進められたとする見解も主張されているが(欧州憲法条約の批准に際し、EUや各国政府は、市民の声を聞くことが重要である)、「なぜ、EUは拡大しなければならなかったか」という質問に対しては、逆に、「なぜ、拡大してはいけないのか」という問題を提起することができよう。つまり、アイルランドやポルトガルはEUに加盟することができたのに対し、ポーランドやルーマニアにはなぜ扉が閉ざされなければならないのであろうか。中東欧諸国の早期加盟が阻まれたのは、ドイツが引き起こした第2次世界大戦の後、ヨーロッパは「鉄のカーテン」で分断されていたためであり、自らの責任を考慮すると、ドイツ国民は、EU拡大に反対すべきではない。

 なお、EU拡大は、EUの政治・経済を強化するだけではなく、新規加盟国の政治・経済を安定させるといった重要な役割を有している(参照)。また、東方拡大 によって、ドイツ国内の経済や雇用情勢は改善している(もっとも、ドイツでは、そのように評価されることは少ない)。



リストマーク EU拡大は急ピッチで進行したとする批判について

 中東欧諸国との交渉が開始されたのは、1989年であり、それから加盟には16年の歳月を要した(詳しくは こちら)。そのため、拡大は急ピッチで行われたとする批判は適切ではない。

 また、1994年5月の加盟時、中東欧諸国の経済成長は十分ではなかったとする批判も支持しえない。なぜなら、スペイン、ポルトガル、アイルランドやギリシャも加盟当時は、経済的に発展していなかったためである。


(参照)

Deutschlandfunk v. 16. Juni 2005 (Verheugen fordert mehr Zeit für Ratifizierungsprozess)


(2005年6月15日)