何名かの委員候補の不適切な発言のため、新委員会の発足も当初の予定から遅れることになったが(詳しくは こちら)、2005年に入ってからは、Barroso 委員長自身のスキャンダル(企業家の接待を受けていたこと)が発覚し、欧州議会 より批判されている。
他方、Juncker 首相は、現在のEU25ヶ国の首脳の中で最も長く政権の座にある。また、2005年1月より、EU理事会議長 として諸問題に取り組んでおり、その外交手腕は高く評価されている(詳しくは こちら)。
2005年5月29日のフランス国民投票後、両氏は、欧州議会議長と共に共同声明を発表しているが(詳しくは こちら)、髭を剃らずに会見に臨んだ Barroso 委員長は、フランスの批准否決は欧州憲法条約を「死」に追いやるものではないと述べた後、直ちに、Juncker
理事会議長に発言を譲ったとされる(参照)。また、Barroso 委員長は、6月16・17日の欧州理事会まで、各国は独断で行動すべきではない(憲法条約の批准手続を中断すべきではない)と語っているに過ぎないが、Juncker
理事会議長は、打開策を模索しているとされる。なお、Juncker 氏の試みにもかかわらず、憲法条約の批准手続は中止されることになろうと Die
Presse 紙は予想している。加盟国首脳は、6月16・17日の欧州理事会で今後の対応について協議するものとみられているが、元々 Barroso
氏を支持していなかった上、国民投票の結果の責任を問われたフランスの Chirac 大統領は反撃に出るであろうと Die Presse 紙は報じている(参照)。
EU理事会議長としての任務は、6月末に終了するため、Juncker 首相にとっても、16・17日の欧州理事会は最後の重要責務となると解されるが、その後の7月10日には、自国内でも国民投票が開催される。
Juncker 首相は、憲法条約の批准が否決されるようなことがあれば、辞任するとし、国民に支持を訴えている(詳しくは こちら)。ルクセンブルクは、伝統的に欧州統合推進論がひろく浸透していることで知られているが、近時は、批准反対派の勢力が伸びている(詳しくは こちら)。そのため、6月16・17日の欧州理事会で批准手続の中止が決定されれば、Juncker 首相の政治生命が脅かされることもなくなるが、同理事会で再度、巧みな外交手腕を発揮し、憲法条約の発効に貢献すれば、同条約に基づき新設される
EU大統領 のポストに、また一段と近づくことになる。
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