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新 欧 州 委 員 長 候 補 の 内 定


 2004年6月17日〜18日、EU加盟国首脳は、Prodi 欧州委員長の後任(正確には、後任候補)について意見がまとまらず、人選は先送りされたが、理事会議長国であるアイルランドの外交交渉により、EU加盟25カ国は、ポルトガルの José Manuel Durão Barroso 首相を候補に指名することで合意した。正式決定は、6月29日夕方の臨時首脳会議でなされる予定である。

 Barroso 首相は、6月の欧州議会選挙 で勝利を収めた保守系政党の出身であり、欧州議会の承認を得られるものと考えられているが、他方、フランスの Chirac 大統領は、Barroso 首相の主催下、ポルトガル領のアゾレス諸島で米英西首脳はイラク戦争について合意したことなどを挙げ、最後まで同氏の指名に反対していたとされる。他方、Chirac 大統領と緊密な関係を築いているドイツの Schröder 首相は、今回、譲歩することで、経済問題担当の主要委員はドイツから擁立するという戦略に出ていると見られている。実際に、小国から委員長が任命されるとすれば、大国が他の主要ポストを獲得する確立は高くなる。ドイツ政府は、去った5月の EU拡大 を成功させた Verheugen 委員を経済担当委員に指名するものと考えられている
参照

 Barroso 首相について、現職の Prodi 欧州委員長は、適任であると賛辞を送っている。特に、彼の個人的貢献や、本国での欧州統合推進策を高く評価している参照
   

Prodi欧州委員長と ポルトガルの Barroso 首相

   リストマーク Barroso 首相の経歴

Prodi 委員長(左)と Barroso 首相


写真提供: Audiovisual Library European Commission



  [背景]

 約1週間前の欧州議会選挙で、保守派が勝利を収めたことを受け、新委員長は保守派より選出する動きが強まっているが、2004年6月17日〜18日の欧州理事会において、各国の保守系政党は有力な候補者を擁立することができなかった参照。 欧州議会選挙の結果を考慮した人選は、現行法上、根拠があるわけではないが、同日に採択された欧州憲法(条約)草案は、その旨を謳っているため、その正当性はすでに広く認められていると解してよい (詳細は こちら

 さらに、共通外交・安全保障政策の上級代表はスペインの Solana 氏(継続)、また、経済問題担当の欧州委員には、EU拡大を成功させたドイツの Verheugen 委員(現在、EU拡大担当)が内定しており、両者は社民党系の政治家であるため、欧州委員長まで左派であることは絶対に避けるべきとの意見が強力に主張されている。

 6月17日〜18日の欧州理事会では、仏独と、英の対立も表面化した。特に、フランスの Chirac  大統領は、欧州統合に中腰な国から欧州委員長を任命するわけにはいかないとし、カメラの回っている前で、あからさまに、Blair 首相の推す Patten 氏(現欧州委員)の委員長就任を批判した。なお、同氏は保守派に属していたため、欧州議会の同意は得られたと解される。他方、仏独は、社会党系のベルギー首相を候補に推していた。

 その後、スペインの Solana 氏の名前も浮上し、加盟国政府から依頼されれば断るわけにはいかないと、彼自身も乗り気を見せていたが、その後、スペイン外相は、彼は共通外交・安全保障政策の上級代表に内定しているとの声明が出され(前述参照)、Solana 委員長案も消えた。


(2004年6月29日 記)

  (参照) 欧州委員会の任命手続