経済の自由化・国際化
2005年6月17日の 欧州理事会 において、イギリスの Blair 首相は、自国の優遇策 の見直しに一貫して反対し、EU次期財政計画 の成立を阻んだ(詳しくは こちら)。週明け早々の20日、Blair 首相は、イギリス下院で自らの立場を説明しているが、@ 全予算の40%以上が農業政策に費やされる現在のEU財政制度はもはや支持しえず、A
将来の経済発展に貢献しうる研究・教育の奨励にもっと予算を割く必要性を改めて強調した。
研究・教育の奨励は広く支持されており、実現は困難ではない。また、欧州理事会で予算の拡大を要求していたのは、何もイギリスのみではないとされている(オーストリア首相)。もっとも、研究・教育の振興に関するECの権限は弱く、基本的な権限は、加盟国の下に残っている(参照)。そのため、各国は独自の予算を組んで、助成することが可能である。
これに対し、農業政策に関する権限は、ほぼ完全にECに委譲されている。また、この政策分野では、「財源の一体性」の原則が適用されている。つまり、農産物の価格調整や、農家への補助金の給付など、政策の実施に必要な費用は、すべてECより支出される(詳しくは
こちら)。そのため、EC(EU)の全予算に占める割合も大きくなっているが、農業の財政的支援は必ずしも良い結果につながるとは限らず(@農家の自助努力を妨げることや、A第3国との貿易摩擦がエスカレートしている)、見直しの必要性も広く認識されている。しかし、その実施には、ECの基本原則の修正が不可欠であるため、容易な課題ではない。そのため、Blair 首相が農業政策の改革を持ち出したのは、協議の失敗を意図した行為であると解されている。
6月17日の欧州理事会終了後、Blair 首相は、労働者の保護に厚い伝統的な 社会モデル は、国際化や経済の自由化の要請に即し、修正されなければならないと述べている。つまり、労働条件や給与水準は、市場の要請に従い、フレキシブルに決定されるべきことを提唱するものと解される。もっとも、EUの
東方拡大 後、ソーシャル・ダンピングに関する問題が一段と深刻化している状況を踏まえると(詳しくは こちら)、伝統的な「ヨーロッパ型社会モデル」の見直しは、すべての加盟国の支持を得ることができないであろう。なお、独仏は、新規加盟国の租税政策を批判しているが(詳しくは
こちら)、租税(法人税)の調整にイギリスは反対している。これが Blair 首相の目指す社会モデル改革を妨げていることは言うまでもない。
イギリスの市場開放政策
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