リベラル化に対するフランス左派組織の抵抗
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欧州憲法条約の批准に先立ち、フランスでは2005年5月29日に国民投票が実施されるが、共産党、労働組合、また、その他の左派組織は、反対票を投じるよう国民に呼びかけている。その背景には、EU東方拡大 後の市場統合に対する不満が横たわっている。つまり、@ 中東欧諸国から多数の低賃金労働者がフランス国内に移住し、国民の職を奪ったり、また、A
国内企業は施設(工場)を中東欧諸国に移転し、国内労働者を大量に解雇している状況が生じているにもかかわらず、EUレベルで @ 社会労働条件の調整や、A
法人税の調整がなされていないことに左派政党は強く抗議している(Laurent Fabius 前社会党党首、こちらも参照)。欧州憲法条約は、“ultraliberal” であるとして批判されることも少なくない(参照。
なお、今年より、フランスでは聖霊降臨祭(Pentecôte)が公休日ではなくなったが、これは労働条件をさらに悪化させるものとして、祭り当日の5月16日(月)には、各地でストライキやデモが行われた。国政に対する批判は、憲法条約への反対運動に発展している。
Sarthe 県(県庁所在地は、自動車の24時間耐久レースで有名な Le Mans)で開かれた集会で、主催者の共産党は、あるホテルの改装工事に際し、フランス人ではなく、ポーランドの労働者が、(土曜日も含め)週54時間の労働ベースで雇われ、月収として812ユーロ(と50ユーロの週末手当)が支払われたケースを紹介している。なお、フランス法で認められている労働時間は週35時間であり、前述した賃金は、国内最低賃金の4分の3にも満たないとされる(参照)。
さらに、欧州憲法条約は、EC農業政策 の適用範囲を新規加盟国にも拡大するため、フランス農業に脅威を与えるとされる。また、東方拡大 後、EUより支給される補助金は減額されるため、国内農家の収入を圧迫することも指摘されている(参照)。
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