
2007年大統領選挙の前哨戦としての国民投票
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2005年5月29日の国民投票を前に、フランスでは批准反対派が勢力を強めているが、これは、欧州統合に対する不満や懸念(東方拡大の影響 や トルコのEU加盟)よりも、むしろ、国政に対する強い不満の表れである(詳しくは こちら)。国民投票で憲法条約の批准が否決される場合であれ、Chirac 大統領は辞任しないと述べているが(参照)、実際に反対派が過半数に達するようなことがあれば、2007年まで継続する任期中の政治指導力はきわめて低下すると解される。また、党内の勢力地図も塗り替えられ、Sarkozy 氏が次期大統領選候補に選出される可能性が強まる(参照)。
必ずしも必要ではなかった国民投票の実施を Chirac 大統領が決定したのは、憲法条約が国民の生活に直接関わるためであるとされているが(詳しくは
こちら)、その他に、社会党や左派政党全体の分裂を狙ったものと解されている(参照)。実際に、憲法条約の支持を党是とする社会党の中からは、有力な反対派(Fabius前党首、Henri Emmanuelli 氏、Jean-Luc Mélanchon 氏)も出ており(詳しくは こちら)、国民投票の結果は、大統領選候補の決定にも大きな影響を及ぼすものとみられている 。左派の分裂という Chirac 大統領の目標は達せられたが、国民投票を成功裏に導くという自らの最も重要な課題は達成されていない。
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