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欧州憲法


2007年大統領選挙の前哨戦としての国民投票

フランス国旗 2005年5月29日の国民投票を前に、フランスでは批准反対派が勢力を強めているが、これは、欧州統合に対する不満や懸念(東方拡大の影響トルコのEU加盟)よりも、むしろ、国政に対する強い不満の表れである(詳しくは こちら)。国民投票で憲法条約の批准が否決される場合であれ、Chirac 大統領は辞任しないと述べているが(参照)、実際に反対派が過半数に達するようなことがあれば、2007年まで継続する任期中の政治指導力はきわめて低下すると解される。また、党内の勢力地図も塗り替えられ、Sarkozy 氏が次期大統領選候補に選出される可能性が強まる(参照)。

 必ずしも必要ではなかった国民投票の実施を Chirac 大統領が決定したのは、憲法条約が国民の生活に直接関わるためであるとされているが(詳しくは こちら)、その他に、社会党や左派政党全体の分裂を狙ったものと解されている(参照)。実際に、憲法条約の支持を党是とする社会党の中からは、有力な反対派(Fabius前党首、Henri Emmanuelli 氏、Jean-Luc Mélanchon 氏)も出ており(詳しくは こちら)、国民投票の結果は、大統領選候補の決定にも大きな影響を及ぼすものとみられている 。左派の分裂という Chirac 大統領の目標は達せられたが、国民投票を成功裏に導くという自らの最も重要な課題は達成されていない。




 2004年11月、フランス社会党は、欧州憲法条約の支持を大多数の賛成の下で決定しているが、その後は党是から離れる党員が出ており、近時のアンケートによれば、ほぼ半数の党員は憲法条約の批准に反対している(参照)。特に、Laurent Fabius 氏は、同条約「非常にリベラル」であると批判し、François Hollande 党首を窮地に追い込んでいるが、国内経済の停滞や高い失業率を背景に、Fabius 氏の見解は国民の支持を得ている。1984〜1986年、同氏は、François Mitteland 前大統領の下で首相(当時は、フランス国政史上、最も若い首相であった)を務めている。

 なお、Fabius 氏は、党友の Henri Emmanuelli 氏やJean-Luc Mélanchon 氏のように、テレビにまで出演し、憲法条約の批准反対を訴えることを控えているが、これは、次期大統領選への出馬を考慮すると、党の政策を真っ向から批判することは得策ではないと考えているためと解される。


(参照) Der Standard v. 27. Mai 2005 ("Warum Monsieur Chirac öfter ins Kino gehen sollte")

Der Standard v. 27. Mai 2005 ("Kopf des Tages: Laurent Fabius")





(参照) FAZ v. 24. Mai 2005 ("Französicher Poker")


フランスの批准見送り危機

フランス大統領、国内の青年とテレビ公開討論

フランスの国民投票で批准が否決された場合

フランスの批准見送りがEU統合に与える影響

フランス海外県・領土の反応

リベラル化に対する左派の抵抗



(2005年5月26日 記)