2005年3月16日、EU外相会議がブリュッセルで開かれ、クロアチアとの加盟交渉の開始について協議されたが、同国の旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所に対する協力が不十分であるとし(こちらを 参照)、翌17日に加盟交渉を開始することは見送られた。ドイツの Fischer 外相に代わり、会議に出席した Bury 外務次官は、Gotovina
容疑者が拘束され、ハーグに引き渡されるか、同容疑者がクロアチアの支配下にないことが明らかになれば、ドイツは加盟交渉の開始を支持するとし、問題解決の鍵は、クロアチアにあることを強調している。
16日の会議では、特に、イギリスの Straw 外相が加盟交渉の開始に反対したとされているが、ハンガリー、スロバキアやスロベニアと共に、予定通りの交渉開始を支持したオーストリアの Plassnik 外相は、Gotovina 容疑者がクロアチアの勢力下におかれていることを「示唆」する情報はあるものの、これを「証明」する事実はないとしている。なお、加盟交渉の開始には、外相会議の全会一致による了承が必要であった。
加盟交渉の開始に関し、欧州議会は決定権を持たないが、議会内の外交問題担当部会は、交渉の開始を支持しており、国連の旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所への協力が本当に不十分かどうか、EUは独自の調査を行うべきであると考えているとされる(参照)。
Rehn 欧州委員(EU拡大担当)は、外相会議で交渉の先送りが決定されたとはいえ、クロアチアが「ヨーロッパの家族」の一員であることには変わりがなく、同国の用意が整えば、加盟交渉の開始に応じると述べている。この立場を明確にするため、加盟国の外相は、今後の行動計画を作成することで合意したが、加盟交渉の開始時期は特定されていない。また、クロアチアの
Sanader 首相の提案に応じ、容疑者を拘束する Task Force を編成することについても意見がまとまらなかった(2005年3月の欧州理事会について
こちら を参照)。
交渉の開始時期  |
Rehn 欧州委員によれば、クロアチアがEU加盟国を説得する次の機会は、2005年5月の外相会議とされる。なお、イギリスの Straw 外相は、7月中にも開始されうるとの見通しを示している(参照)。
加盟交渉の開始決定
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クロアチアの Mesic 大統領は、今回のEU加盟国外相の決定は予想していた通りであると捉えているとされる。また、Sanader 首相は、加盟交渉開始の先送りは、政治的な失敗ではなく、手続の小休止に過ぎないとコメントしている(参照)。
クロアチアのSanader 首相の見解 |
ドイツのニュース雑誌 Focus の2005年12号182頁には、Sanader 首相のインタビュー記事が掲載されている。
EU加盟国外相の決定に落胆しているかどうかという質問に対し、Sanader 首相は、落胆するか、しないかは私の職務ではないと述べた上で、クロアチアのためにさらに戦わなければならない(旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所に協力し、容疑者の逮捕に尽力する)と発言している。
Del Ponte 主席検事より批判されている点については、無罪を証明するのは困難であるとしている。他方、主席検事の批判に対しては、職務上の適切な行為として理解を示すと共に、敬意を払っているが、自国の協力について、単独では判断しえないとしている。
国民的英雄とされる Gotovina 容疑者の逮捕に反対する国民がいるとされる点については、国民がどのように考えているかは重要ではなく、国際刑事裁判所との協力に影響を及ぼさないと述べている。
Gotovina 容疑者、逮捕される
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(参照)
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"Sie kann nicht allein entscheiden", Focus 2005, Nr. 12, S. 182 |
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(2005年3月24日 記)
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