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EU法講義ノート

   E U の 機 関  リスボン条約体制


 EUの発展は機構制度にも大きな課題を突き付けている。つまり、@加盟国数の増加(EU拡大)は諸機関の規模を拡大させるが、それによって組織の実効性、特に、意思決定機能が害されてはならない。逆に、この要請が満たせなければ、EUのさらなる拡大も困難となる(参照)。また、AEUの権限の拡大や政策の発展は諸機関の任務を増やす。リスボン条約に基づき、EUにはさらに多くの権限が与えられ(参照)、また、新しい組織が設けられることになったが(例えば、こちら を参照)、機構制度を実効的かつ分かりやすくするだけではなく、より民主化することも重大な課題である 。なお、既存の主要4機関の課題は以下の通りである。

 ・理事会

  立法手続における各国の持票数、また、可決(ないし否決)に必要な票数の見直し(参照

 ・欧州議会

  立法権限の強化(参照)、議席総数および議席配分の修正(参照

 ・欧州委員会

  規模の適正化(参照)、EUの対外的代表権の調整参照

 ・裁判所

  管轄権の拡大(参照)、個人の権利保護手続の改善参照、訴訟遅延の解消参照


 リスボン条約は、EUの機構制度全般を改正しているが、欧州議会、理事会、欧州委員会、裁判所および会計検査院が機関(institutions)として位置付けられていることには変わりはない(EU条約第13条第1項)。なお、ECが廃止され、EUに承継されたことを受け、EC裁判所はEU裁判所と名称が改められた(詳しくは こちら)。また、欧州理事会と欧州中央銀行が基本諸条約の中では初めて正式に機関として掲げられ ることになった(第13条第1項) 。つまり、リスボン条約体制下において、EUは、以下の7つの機関を有する。

 

 欧州議会

 
 

 欧州理事会

 
 

 理事会

 
 

 欧州委員会

 
 

 EU裁判所

 
 

 ・欧州中央銀行

 
 

 ・会計検査院

 


 なお、独自の法人格を有する欧州中央銀行は(EUの機能に関する条約第282条第3項第1文)、そもそもEUから独立した機関か、それとも、EUの機関の一つかという問題もあるが 、前述したように、新EU条約第13条第1項は、EUの機関として扱っている。



EUの諸機関


 欧州議会、欧州理事会、理事会、欧州委員会およびEU裁判所の組織・任務の重要事項はEU条約内で定められ(第14条〜第19条)、より詳細な規定はEUの機能に関する条約内に設けられている(第223条〜第281条)。他方、欧州中央銀行と会計検査院については、EU条約ではなく、EUの機能に関する条約で定められている(第282条〜第287条、EU条約第13条第3項参照)。

 前掲の諸機関は、基本諸条約によって与えられた権限のみを、基本諸条約に従い行使しうるという原則(個別的授権の原則)は、EU条約第13条第2項でも明記されている。

 なお、欧州議会、理事会および欧州委員会は、相互の協力体制の詳細について協議し、基本諸条約に反しない範囲で、取り決めることもできる(EUの機能に関する条約第295条)。
 


リスボン条約 従来の機構制度(ニース条約体制)については こちら


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