はじめに
これまで、欧州理事会はEUの政策の基本方針を決定する組織として位置付けられていた(従来のEU条約第4条第1項)。この役割は、特に、共通外交・安全保障政策 の分野で明記されていたが(EU条約第13条)、EC条約は言及せず、ECの機関として列記されることもなかった(EC条約第7条第1項参照)。他方、前掲の機能に鑑み、EUの機関として捉えられることはあった。
リスボン条約は、欧州理事会をEUの機関として統治機構制度の中に正式に組み込むだけではなく、その組織を改め、また、権限を拡大している。なお、従来に同じく、欧州理事会に立法権は与えられていない。新条約はこの点を明瞭に定めている(EU条約第15条第1項第2文)。
従来の法的状況については こちら
1.組織・構成
従来、欧州理事会は、加盟国首脳と欧州委員会の委員長で構成されてきたが 、リスボン条約に基づき、欧州理事会議長というポストが新設され、同議長もメンバーとなった(EU条約第15条第2項第1文)。なお、欧州理事会がコンセンサスに基づき意思決定する場合を除き、欧州委員長と欧州理事会議長に議決権は与えられていない(EUの機能に関する条約第235条第1項第2款)。さらに、共通外交安全保障政策の上級代表 も会議に出席するが(EU条約第15条第2項第2文)、欧州理事会のメンバーではなく、議決権はない。
欧州理事会議長は、欧州理事会が特定多数決で選び(欧州理事会のメンバーの中から選ぶ必要はない)、任期は2年半である。なお、1回に限り、再任は可能である。また、任務の遂行に支障が生じた時、欧州理事会は特定多数決で解任しうる(第15条第5項)。任期中、議長は加盟国内の職務(公務)を兼任してはならないことが明定されているが(第15条第6項第3款)、欧州委員会の委員長を兼ねることも許されないと解されている
。なお、常任の議長職が設けられたことから、6ヶ月の任期で加盟国が交替して務める従来の制度は廃止された。ただし、理事会(欧州理事会ではない、また、外務理事会を除く)については、従来通り、加盟国が持ち回りで議長を務める。 |
van Rompuy 議長
(前ベルギー首相)
詳しくは こちら |
議長の任務は以下の通りである(第15条第6項第1款)。
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