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European Council
欧州理事会


リスボン条約体制
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   はじめに

   1. 組織・構成

   2. 任務・権限

   3. 会議の開催

   4. 議決

   5. リンク

 
2009年11月の欧州理事会

2009年11月の欧州理事会
© Council of the European Union

 


はじめに

 これまで、欧州理事会はEUの政策の基本方針を決定する組織として位置付けられていた(従来のEU条約第4条第1項)。この役割は、特に、共通外交・安全保障政策 の分野で明記されていたが(EU条約第13条)、EC条約は言及せず、ECの機関として列記されることもなかった(EC条約第7条第1項参照)。他方、前掲の機能に鑑み、EUの機関として捉えられることはあった。

 リスボン条約は、欧州理事会をEUの機関として統治機構制度の中に正式に組み込むだけではなく、その組織を改め、また、権限を拡大している。なお、従来に同じく、欧州理事会に立法権は与えられていない。新条約はこの点を明瞭に定めている(EU条約第15条第1項第2文)

    リストマーク 従来の法的状況については こちら



1.組織・構成

 従来、欧州理事会は、加盟国首脳と欧州委員会の委員長で構成されてきたが 、リスボン条約に基づき、欧州理事会議長というポストが新設され、同議長もメンバーとなった(EU条約第15条第2項第1文)。なお、欧州理事会がコンセンサスに基づき意思決定する場合を除き、欧州委員長と欧州理事会議長に議決権は与えられていない(EUの機能に関する条約第235条第1項第2款)。さらに、共通外交安全保障政策の上級代表 も会議に出席するが(EU条約第15条第2項第2文)、欧州理事会のメンバーではなく、議決権はない。


 欧州理事会議長は、欧州理事会が特定多数決で選び(欧州理事会のメンバーの中から選ぶ必要はない)、任期は2年半である。なお、1回に限り、再任は可能である。また、任務の遂行に支障が生じた時、欧州理事会は特定多数決で解任しうる(第15条第5項)。任期中、議長は加盟国内の職務(公務)を兼任してはならないことが明定されているが(第15条第6項第3款)、欧州委員会の委員長を兼ねることも許されないと解されている 。なお、常任の議長職が設けられたことから、6ヶ月の任期で加盟国が交替して務める従来の制度は廃止された。ただし、理事会(欧州理事会ではない、また、外務理事会を除く)については、従来通り、加盟国が持ち回りで議長を務める。

 Herman van Rompuy議長

van Rompuy 議長
(前ベルギー首相)

詳しくは こちら

 議長の任務は以下の通りである(第15条第6項第1款)。


 a)

欧州理事会の会議で議長を務め、その作業を活性化すること

 

 b)

欧州委員長と協力し、また、理事会(「総務理事会」)の作業をベースとしながら、欧州理事会の作業の準備をし、また一貫性を保つこと

 

 c)

欧州理事会におけるコンセンサスの成立を促すこと

 

 d)

欧州理事会の会議の終了ごとに欧州議会に報告書を提出すること


 さらに、同議長には、共通外交・安全保障政策に関し、EUを対外的に代表する権限が与えられている(第15条第6項第2款)。これに類する権限は、共通外交・安全保障政策の上級代表にも与えられおり、両者の役割分担が問題にされているが、EU条約第15条第6項第2款の文言によれば、同議長は、欧州理事会の代表として、EUを対外的に代表する。なお、この規定によれば、議長の対外的代表権は、共通外交・安全保障政策に関する案件に限定されている。


2.任務・権限 

 欧州理事会の任務は、従来と同じように、EUの発展に必要な刺激(impeteus)を与え、一般的な政治目標・重要課題を決定することにあるが(EU条約第15条第1項第1文)、立法権限を持たないことが新たに明記された(第2文)。この権限を有するのは、通常、欧州議会と理事理事会である。ただし、以下で説明するように、条約改正や人事に関し、法的拘束力のある決定を下すことができる。また、加盟国の利益に重大に関わる特定の案件について、理事会における立法手続を停止し、欧州理事会に審議を要請する手続も新たに導入されたが、この新手続が適用されるのは以下の政策分野である。
 

 ・

労働者の社会保障(EUの機能に関する条約第48条第2項)

 ・

国内刑事手続法の調整(第82条第3項)

 ・

国内刑事実体法の調整(第83条第3項)


 また、リスボン条約によって新たに設けられた 簡易な条約改正手続 においては、条約改正を全会一致で決定する権限が与えられている(第48条第6項および第7項)。なお、通常の条約改正手続でこの権限を有するのは加盟国(厳密には、加盟国政府間会議)である(第4項)。

 欧州理事会の決定権は、従来通り、共通外交・安全保障政策 の分野でも与えられているが(第24条第1項第2款、第26条第1項)、加盟国によるEUの基本原則違反を全会一致で確定するのも欧州理事会である(第7条第2項)。

 なお、欧州理事会が必要な決定を下さない場合、不作為違法確認の訴え をEU裁判所に提起することができる(EUの機能に関する条約第265条第1項)。

 欧州理事会には、さらに、以下の人事権や組織上の決定権が与えられている。
 

 ・

欧州委員会の委員長候補の指名(特定多数決)(第17条第7項第1款第1文、従来は、加盟国首脳で構成される理事会が指名した〔EC条約第214条第2項第1款〕)

 

 ・

共通外交・安全保障政策の上級代表の任命および解任(特定多数決)(EU条約第18条第1項)

 

 ・

欧州中央銀行総裁、副総裁および同行執行部メンバーの指名・任命(特定多数決)(EUの機能に関する条約第283条第2項第2款)

 

 ・

欧州議会における各加盟国の議席数(全会一致)(EU条約第14条第2項第2款)

 

 ・

理事会の構成およびその議長の決定(特定多数決)(EUの機能に関する条約第236条)



3.会議の開催

 従来通り、欧州理事会は、半年に2回開催されるが、議長は臨時会議を招集することもできる(EU条約第15条第3項)。

 欧州理事会

欧州理事会

欧州理事会の会議場
© Council of the European Union


4.議決

 従来通り、欧州理事会は、原則として、コンセンサスに基づき意思を決定する(第15条第4項)。この場合、採決は行わず、議決権のあるメンバーが反対意見を述べない限り、コンセンサスが得られたものとして扱われる 。ただし、この手続は政治的判断を下す場合に適用され、法的効果を伴う決定に関しては、全会一致(第31条第1項、第48条第6項第2款、第86条第4項)、特定多数決(第18条第1項)、または単純多数決(第48条第3項)によるべきことが法定されている。この場合、議長や欧州委員長は議決権を持たない(EUの機能に関する条約第235条第1項第2款)。つまり、欧州理事会は、加盟国首脳会議として決定を下す 。

 特定多数決の際の持票数 は、理事会に関する規定が準用される(第235条第2項、第238条第2項、EU条約第16条第4項)。

 なお、議決に際し、欧州理事会のメンバーは、議決権の行使を他の1人のメンバーに委ねることができる(EUの機能に関する条約第235条第1項第1款)。

 




 5.リンク

 欧州理事会の公式サイト: 英語 仏語

 欧州理事会議長の公式サイト: 英語 仏語



  
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