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 欧州理事会
 リスボン条約体制


目 次

    はじめに

  1. 組織・構成

  2. 任務・権限

  3. 意思決定手続

  4. リンク


リストマーク ニース条約体制は こちら

2019年下半期
議長国
フィンランド

ベルギー・ブリュッセルにあるEU理事会

E U 理 事 会
(ベルギー・ブリュッセル)

© European Union, 2009



はじめに

 これまで理事会は主たる立法機関として活動してきたが、欧州議会の立法権限が拡充されたことによって、理事会の権限は相対的に弱まった。これはEUの立法手続における加盟国の影響力低下を意味するが、その一方で、EUの民主的正当性は強化される。ただし、欧州議会も議席配分の著しい不均衡という大きな問題を抱えているが(参照)、理事会はこの問題を補正する役割を持っている(詳しくは こちら)。

 リスボン条約は 欧州理事会 をEUの最高意思決定機関として正式に機構制度に組み入れている。これによって、EU理事会は、欧州理事会が定めた基本方針や戦略的ガイドラインを実施する機関としての特徴がより鮮明になった 。他方、従来は加盟国の特権であった条約改正権限も、限定的であるが、与えられるようになった(EUの機能に関する条約第81条第3項第2款、第333条第1項等)。



1.組織・構成

 従来通り、理事会は各加盟国の代表で構成されるが、同人は大臣級の人物であり、その議決権行使は派遣した加盟国政府を拘束するようでなければならない(EU条約第16条第2項)。実際に誰が派遣されるかは、これまで同様、会議ごとに異なるが、その詳細は欧州理事会が特定多数決で決定する(EU条約第16条第6項第1款、EUの機能に関する条約第236条)。また、各加盟国が平等に交替して務める議長(後述するように、外務理事会の議長は除く)の順番も欧州理事会によって決定されるが、従来のように、任期は半年にする必然性はない(EU条約第16条第9項)。リスボン条約を採択した政府間協議の最終文書附属第9宣言第1条では、3ヶ国が18ヶ月の期間、議長グループとなり、その内の1ヶ国が順番に6ヶ月間、議長になるとされているが、これは従来の実務と同じである。

    リストマーク 議長国の順

 前述したように、リスボン条約は理事会の組織・構成について詳細に定めておらず、欧州理事会の決定に委ねているが、以下の理事会の設置や議長については予め定められている。

総務理事会(General Affairs Council

 同理事会は理事会の作業の一貫性を確保する。また、欧州理事会議長や欧州委員会と共に欧州理事会の会議の準備を行う(第16条第6項第2款)。


外務理事会(Foreign Affairs Council)

 同理事会は欧州理事会が定める戦略的ガイドラインに従いながら、EUの対外的政策を決定し、また、EUの行動の一貫性を確保する(第16条第6項第3款)。なお、同理事会の議長は共通外交・安全保障政策の上級代表が務めることも(任期は5年)、すでにEU条約内で定められている(第18条第3項)。
 

 前述した点からも分かるように、外務理事会の議長を除き、理事会の議長は各国が交替して務める。また、同議長と欧州理事会議長は異なり、後者は2年半の任期が与えられた専任職である。
 

    リストマーク 従来の組織・構成については こちら



2.任務・権限

    リストマーク 従来の任務・権限を参照


3.意思決定手続

  リスボン条約は、立法手続を経て制定される「法律」と、そうではない第2次法とを区別しているが、理事会が「法律」案について審議し、また、採決をとるとき、その会議は公開されることが初めて基本条約の中で明記された(EU条約第16条第8項第1文)。 なお、「法律」としての性質を有さない第2次法については、その限りではない。そのため、理事会の会議は、立法作業(「法律」の制定)とそうでないものとに分けられる(第2文)。

 理事会の議決は、原則として、特定多数決による(第16条第3項)。これに対し、従来は絶対多数決が原則と定められていた(EC条約第205条第1項)。

 すでにニース条約は、二重の特定多数決制度を導入し、加盟国はその適用を要請しうるとしていたが(EC条約第205条第4項、詳しくは こちら)、リスボン条約はこれを原則としている(EU条約第16条第4項)。この新しい手続によれば、2014年11月1日より、特定多数決は、①各国に1票の持票が与えられ、55%の加盟国(かつ、少なくとも15の加盟国)が賛成し、かつ、②これらの国の国民が、全EU市民の65%に相当するときに成立する(第16条第4項第1款)。他方、法案の採択を阻止するには、少なくとも4ヶ国が反対しなければならず、3ヶ国以下の場合は、採択される(第2款)。

 なお、理事会が、欧州委員会や 共通外交・安全保障政策の上級代表 の提案を受けず、法令を制定するときは、特定多数決の要件が厳格になる。つまり、①72%の加盟国が賛成し、かつ、②これらの国の国民が、全EU市民の65%に相当していなければならない(EUの機能に関する条約第238条第2項)。

 前述した点からも分かるように、各国の持票数が人口に照らして決められていた 従来の制度 (EC条約第205条第2項)は廃止され、2014年11月1日からは、新制度による(EU条約第16条第4項)。もっとも、特に、ポーランドの要請に基づき、移行措置が設けられ、2014年11月1日より2017年3月31日までの期間、各加盟国は ニース条約体制 の適用を要請しうる(EU条約第16条第5項、リスボン条約附属第36議定書第3条第2項参照)。さらに、ある一定数の加盟国による拒否権の行使に関する特例(いわゆる、イオアニア条項)も存続する(リスボン条約を採択した政府間協議の最終文書附属第7宣言参照)。

 

4.リンク


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