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第2次法の制定理由明示義務(EC条約第253条)


1.義務の内容

 第2次法の制定に際し、ECの諸機関(欧州議会、EU理事会および欧州委員会)は、立法趣旨(理由)を示さなければならない。また、欧州委員会の提案や欧州議会ないし経済・社会部会の見解について言及しなければならない(EC条約第253条)。これは、@ 第2次法を制定した機関自らが調査したり、A EC裁判所による法令審査を可能にするだけではなく、B 当該第2次法の影響を受ける者に立法理由を知らしめ、自らの権利保護を可能にするために要求される(Case C-296/93, France and Irland v Commission [1996] ECR I-795)。

 どの程度、明確に示す必要があるかどうかは、制定される法令の種類・性質によって異なるが(後述参照)、簡略に述べるならば、上掲の3つの目的の達成に必要な程度であればよい。また、あらゆる点について、事細かに説明する必要はないが、重要な点は網羅されていなければならない。なお、説明は簡潔になされていてもよいが、単に根拠規定が反復されるだけでは足りない(Case C-325/91, France v Commission [1993] ECR I-3283)。また、補完性の原則比例性の原則 を遵守していることなどが挙げられていなければならない。




リストマーク 決定(decisions)
 
 通常、決定(decisions)は、特定の加盟国や個人を対象にして発せられる。つまり、個別的なケースにおいて制定される第2次法であるため、その制定理由は、具体的かつ明確に示されなければならない(参照)。もっとも、補助金の返還を求める決定について、名宛人が手続に参加しているため、すでに認識している点についてまで明記する必要はない。また、秘密保持の観点から、限定されることもある。


リストマーク 規則(regulations)、指令(directives)

 通常、規則(regulations)や指令(directives)は、対象者を特定せずに発せられる(その例外は こちら)。そのため、これらの法令を制定するにいたった一般的な事情や目的が示されてあればよく、個々のケースの特殊事情について言及する必要はない(Case C-27/00 and C-122/00, Omega [2002] ECR I-2569, para. 51)。



 国際条約規定が定める環境保護基準よりも厳格な基準が導入される場合、理由の説明義務は重くなるかどうかという問題について、EC裁判所は、以下のように述べて、これを否定している(Case C-27/00 and C-122/00, Omega [2002] ECR I-2569, paras. 49-50)。


49 [....] Recital 5 [of the Preamble] states that the results of modifications to aircraft to make them comply with the Chapter 3  [in Annex 16 to the Chicago Convention] standards are less satisfactory than those achieved by modern aeroplanes.

50 Moreover, it can be seen from the Regulation as a whole that the Community legislature proceeded from the principle that new engines with a by-pass ratio of less than 3 have less satisfactory environmental characteristics than engines with a higher by-pass ratio or aircraft engines of entirely new design.




 通常、立法理由は、法令の前文の中で示されているが、その文言のみならず、文脈、また、該当分野におけるすべての法規範に鑑み、立法理由が読み取れれば十分である(Case C-180/96, UK v Commission [1998] ECR I-2265, para. 70)。



2. 義務違反の効果

 立法趣旨の説明は、立法手続要件の一つに当たる。そのため、重大な義務違反があれば、EC裁判所によって、第2次法は無効と宣言される(EC条約第230条第2項参照)。例えば、ある企業への公的支援の適法性について判断した委員会の決定(decision)は、市場の状況、同企業の市場シェア、また、公的支援が競合企業に与える影響などについて言及していなければならず、これらの点に触れていない場合は、無効である(Joined Cases C-329/93, C-62/95 and C-63/95, Germany v Commission (Bremer Vulkan) [1996] ECR I-5151)。


 また、第2次法の根拠規定が誤って指摘されたため、立法手続(諸機関の関与や決議方法)に影響を及ぼした場合も、同様に無効と宣言される(Case C-300/89, Commission v Council [1991] ECR I-2867)。







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