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はじめに
第2次世界大戦によってヨーロッパは荒廃し、また、東西に分断されるが、平和の確立と経済復興を目指し、1950年代には 3つの欧州共同体(EC) が西ヨーロッパの6ヶ国によって設立された( 欧州統合の目的)。その内の一つがEECである。
1993年11月、EECはECと名前が変わるだけではなく、EUが発足し、政策分野が拡充された(参照)。また、現在、加盟国数は27に達している(EU加盟国の地図)。つまり、加盟国数は当初の4倍以上に増えているが、さらなる拡大が予定されている(参照)。このような状況を考慮し、機構制度や法的基盤を整えるため、2004年10月には 欧州憲法条約 が締結されたが、急速に進められるEU拡大に対する警戒心や抵抗も根強く、2005年夏、フランス国民とオランダ国民は、欧州憲法条約の発効を阻止した(参照)。これを契機に、EUは、これまでにない危機的状況に直面することになったが(参照)、2007年12月には、憲法条約に変わる新しい条約(リスボン条約)が制定された。リスボン条約も、アイルランド国民投票で批准が否決されるなど(参照)、発効が危ぶまれたが、2009年12月、ようやく発効するにいたった。現在のEUは、このリスボン条約によっている。
なお、2007年3月、EC設立の基盤となったローマ条約の締結から50年が経過したが、同月、ヨーロッパ再統合(「鉄のカーテン」によって分断された東西ヨーロッパの統合)を象徴する都市ベルリンで記念式典が開催され、ベルリン宣言 が採択されている。
・半世紀にわたるEC法(EU法)の歴史
・ECの発展 年表
・量だけではなく、質的(効力の面)でも強化
( EC法の特殊性)
I. EUの3本柱構造
欧州統合は、当初、経済分野で発展するが、次第に政治分野でも進展し、両分野を束ねる組織として、1993年11月にEUが発足する。EUは、@
ECを基礎とし(第1の柱)、A
外交・安全保障政策(第2の柱)とB
内務・司法分野における加盟国間の協力(第3の柱)を束ねる「屋根」である。
アムステルダム条約による3本柱構造
( マーストリヒト条約体制は こちら)
( 現行のリスボン条約体制は こちら)
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なお、現在は、リスボン条約に基づき、上掲の「3本柱構造」は廃止され、1本化されているが、厳密には「2本柱構造」をとる(詳しくは こちら)。また、ECは廃止され、EUに引き継がれている(詳しくは こちら)。
◎ 第1の柱と第2、第3の柱の相違
第1の柱(EC)において、ECは加盟国から独立して行動しうる。また、ECの法令は市民に直接、権利・義務をあたえることができ(国内法に置き換えることなく直ちに適用されうる)、国内法と矛盾する場合には、EC法が優先する(司法統制も発展している)。
EC法の特殊性
国内法に対する優先性
直接適用性
直接的効力
これに対し、第2、第3の柱の分野の法令には、このような強力な効力は与えられていない。政策を実効的に実施するためには、強力な法令が必要になるが、加盟国が主権の委譲(つまり、EUレベルでの政策決定)に消極的な案件は、第2、第3の柱の分野にとどまっており、法令の効力も弱い。なお、第3の柱から第1の柱に移された事項 や(EC法化)、両方に関わる案件もある(⇒ 3本柱の一貫性の要請)。
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第1の柱の分野において、加盟国はECに主権(立法権)を委譲し、ECレベルでの政策決定に同意しているが、国益に大きく関わる案件(例えば租税や社会保障)に関しては、加盟国の全会一致でなければならないとし、一種の保護策を設けている。全会一致制度は、第2、第3の柱において多用されているが、25ヶ国の同意を得ることは容易ではないため、その削減を求める見解が有力に主張されている。
EUとECの違い
II. EU法の体系
1.
第1次法と第2次法
1.1.
第1次法
EU・ECは条約に基づき発足し、また、条約に基づき重要な改革がなされてきた。これらの条約は第1次法と呼ばれるが、国内であれば、憲法に相当する。つまり、第1次法は、EU・ECの憲法として、@
EU・ECの目標、重要な諸原則、A
機構制度、B 立法手続、C 諸政策の重要事項について、また、D
EU市民の権利について定めている。
詳しくは こちら
第1次法とその締結・発効年
国際条約である第1次法は、全加盟国(の全会一致)によって制定され、全加盟国によって批准された後に発効する(EU条約第52条およびEC条約第313条参照)。
第1次法とその制定年・発効年
その他、基本権や加盟国の憲法に共通の諸原則(民主主義・法治国家原則など)なども第1次法に当たり、EUはその遵守が義務付けられている(EU条約第6条第2項参照)。
1.2.第2次法
第1次法が定める目標を実現したり、第1次法を補うため、EU・ECの諸機関は法令を制定することができるが、この権限や立法手続は、第1次法の中で定められている。第1次法に基づき諸機関が制定した法令や、EC裁判所の判例法も重要な法源であるが、これらを第2次法とよぶ。
・法令制定の嵐 ( 参照)
諸機関が制定しうる第2次法には、規則、指令、決定、勧告、意見があるが、その概要は以下の通りである(EC条約第249条参照)。
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法令名 |
立法者 |
相当する国内法 |
対象者 |
法的拘束力 |
直接的効力 |
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規 則 |
理事会、欧州議会、欧州委員会、欧州中央銀行 |
一般の法令 |
加盟国
私人 |
すべての点においてあり |
あり |
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指 令 |
理事会、欧州議会、欧州委員会 |
一般になし |
加盟国 |
その目的に関してのみあり |
加盟国が置き換えを怠っており、規定が無条件かつ明確に定められている場合はあり(参照) |
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決 定 |
理事会、欧州委員会、欧州中央銀行 |
行政行為
行政命令 |
主として特定の私人、加盟国 |
対象者に対してのみあり |
あり |
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勧告・意見 |
理事会、欧州委員会、欧州中央銀行、会計検査院 |
行政措置 |
加盟国
私人 |
なし |
なし |
2. 立法権限と立法手続
EU・ECは、第1次法(ないし第2次法)が列記する立法権限しか行使しえないが、その権限の有無が争われることも少なくない(参照)。また、EC(なお、EUは条約を締結する権限を持たない)には権限が与えられていないため、その枠外で法令が制定されることもある(加盟国間における条約の締結)。
・ 混合協定
・ ECの条約締結権限(AETR 判決)
第2、第3の柱においては、EUの法令というよりも、加盟国が共同で制定した法令(国際法)としての性質が強い。
立法権限の内容(加盟国法の統一または調整)についても注意が必要である。加盟国の利益に大きな影響を及ぼす案件(間接税率の決定)や域内市場に関する案件について、ECは国内法を調整しうるにすぎない(参照)。
立法手続も同様に第1次法(ないし第2次法)内で定められているが、案件ごとに異なるため注意が必要である。最も基本的な手続の概要は以下の通りである。
☞
EUの第2、第3の柱、通商政策(経済制裁を含む)、農業政策など、加盟国の政策に大きな影響を及ぼす分野では、欧州議会は権限は非常に弱い(ないし立法手続に参加しえない)。
欧州議会の立法権限
3. 効力
4.
各法分野と法令の検索方法
我が国の法律は、公法と私法(さらに社会法)に分けることができる。公法には、憲法、行政法、刑法などが属するが、例えば、行政法は、@行政組織法(国家行政組織法、国家公務員法など)、A地方自治法(地方自治法、地方公務員法)、B行政手続・救済法(行政手続法、国家賠償法など)、C財政・税法(財政法、法人税法など)、D警察・防衛法(警察法、自衛隊法など)、E土地・環境法(土地基本法、環境基本法など)、E教育・文化法(教育基本法、宗教法人法など)に分類することができる。ある特定の法律について調べたり、学ぶときは、このような体系が参考になる。
このことはEU法にも当てはまるが、EU法は32の政策分野ごとに体系化されているため、特定の政策分野に照準をあてて調査・研究することも有益である。
32分野
EC条約が定める政策
EU法の検索方法
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