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欧 州 委 員 の 担 当 職 務 発 表 さ れ る


 2004年8月12日、次期欧州委員会委員長に内定している José Manuel Durão Barroso 氏は、委員会メンバーの担当職務を発表した。これまで新委員会の人事は、8月後半に発表されるものとされていたため(参照)、今回の迅速な決定は各方面に驚きを与えている。各委員候補とその担当政策分野は以下の通りである。


 氏 名 (出身国)  担 当 政 策 分 野
Margot Wallström (スウェーデン)
   (参照
事務総局、報道・コミュニケーション(兼委員会副委員長)
  ※ 2004年11まで、環境政策担当
Günter Verheugen (ドイツ)
 参照:@AB
産業政策・企業、商品移動の自由、航空・宇宙(兼委員会副委員長)
  ※ 2004年11月まで、 EU拡大担当
Jacques Barrot (フランス) 交通政策 (兼委員会副委員長)
従来は、運輸政策も含まれていたが、分離される。
Rocco Buttiglione (イタリア)
 
こちらも 参照

Franco Frattini (イタリア) と交代
    (参照


司法・内務問題 (兼委員会副委員長)
Siim Kallas (エストニア) 総務・通訳・監査 (兼委員会副委員長)
Peter Mandelson (イギリス) 通商政策
Joaquín Almunia (スペイン) 経済・通貨政策
 ※ 現職留任

 

欧州憲法条約が発効し、スペイン出身の Solana 氏EU外相 に任命されれば、同国出身の Almunia 委員は辞任しなければならない(欧州憲法条約附属第34議定書第4条)。これは、委員会メンバーは、各国より1名ずつ任命されるという原則に基づいた措置である。

Dalia Grybauskaite (リトアニア) 予算・財政
Charlie McCreevy (アイルランド) 域内政策サービス市場
従来は、商品の移動の自由、航空、租税・関税政策も含まれていたが、これらは分離される。

 

Vladimír Špidla (チェコ) 労働・社会政策、男女平等
Viviane Reding (ルクセンブルク) 情報社会・メディア政策
Janez Potocnik (スロベニア) 学術・研究・開発政策
Jan Figel (スロバキア) 教育・青少年・文化政策
Markos Kyprianou (キプロス) 健康政策
消費者保護政策は2007年元旦、新委員の管轄となる
Stavros Dimas (ギリシャ) 環境政策
Ingrida Udre (ラトビア)
Andris Piebalgs (ラトビア) と交代
租税・関税
エネルギー政策・原子力安全に変更
参照
Neelie Kroes (オランダ) 競争政策
László Kovács (ハンガリー) エネルギー政策・原子力安全
租税・関税に変更
参照 
Danuta Hübner (ポーランド) 地域政策
Mariann Fischer Boel (デンマーク) 農業政策
Joe Borg (マルタ) 漁業政策
Benita Ferrero-Waldner (オーストリア) 対外関係
Olli Rehn (フィンランド) EU拡大
Louis Michel (ベルギー) 発展援助政策


New 2007年元旦、ブルガリアとルーマニアのEU加盟に伴い、両国より新しい委員が任命された参照)。

Meglena Kuneva (ブルガリア) 消費者政策
Leonard Orban (ルーマニア) 多言語政策



    (2004年11月までの委員とその担当政策分野は こちら



 母語のポルトガル語だけではなく、英語と仏語 を用いて行われた会見において、Barroso 次期委員長候補は、効率的な職務遂行と目標達成を念頭において、人事は決定されたと述べている。イギリスの Mandelson 氏(当初は競争政策担当と目されていた)やフランスの Barrot 氏が主要ポストからはずれる一方で(もっとも、Barroto 氏は副委員長を兼任する)、中小国出身者が要職に指名されているのは、過去の経歴・経験を考慮したためとされる。


 また、委員会の使命をまっとうすべく、全委員の団結性が強調されている。このチームワークを重視する観点より、ある委員が他の委員を指揮・統括するといった人事機構は採用しないことを次期委員長候補は明確にしている。ドイツ政府が要求していた、いわゆる Super Commissar (参照
の任命は見送られたことになるが、ドイツ出身の Verheugen 委員には、従来より多くの管轄権が与えられている。この点を踏まえ、ドイツの Schröder 首相は、賢明な人事であったと評価している参照。なお、Verheugen 氏を含め、計5人の副委員長が委員長を補佐することになるが、新加盟国からも1人、副委員長に指名されている。なお、欧州憲法(条約)に基づき新設されるEU外相も副委員長になるが、この人事は欧州憲法発効後に始めて行うこととし、対外関係を担当する Ferrero-Waldner 女史は副委員長に指名されていない(参照 @ A


 新委員会が取り組む課題の一つとして、Barroso 氏は、祖国の首都で採用された リスボン戦略 (2010年までに、EUを世界中で最も競争力のある地域にするための戦略)の実行を挙げているが、従来の取り組みに不満を示しつつ、雇用の創出と制度改革の必要性をEU加盟国に訴えている。


(2004年8月13日記)

(参照) 欧州委員会の公式サイト
FAZ
Die Welt
NZZ
Der Standard (人選について)