2004年8月3日、欧州委員会は、新メンバー候補が確定したと発表した。現在の
Prodi 委員会より留任するのは、ドイツの Günter Verheugen 氏、スペインの Joaquin Almunia 氏(参照)、スウェーデンの Margot Wallström 女史とルクセンブルクの Viviane Reding 女史の4人のみであるが(なお、2004年5月1日のEU拡大に伴い、新加盟国より擁立されたメンバーは
除く)、候補のほとんどは、国内で首相、閣僚(特に、外相、経済相)や国会議長という経歴を持っており、政治的経験は豊富であるとされる。首相歴任者は、Barroso
委員長候補(ポルトガル)、Vladimír
Špidla (チェコ)と Siim Kallas (エストニア)の3名である。歴代委員会の中で女性の比率が最も高くなっているが、新委員長に内定している
Barroso 氏は、委員の3分の1以上は女性であるべきとする当初の目標が達成されることを特に歓迎している(参照)。女性委員は8人になる予定である。
Barroso 新委員長(内定)は、イタリア出身の Monti 委員(競争政策担当)の留任を希望していたとされるが、Berlusconi
伊首相は、国内政治を安定させるため、同氏を財務大臣に任命し、欧州委員には、Buttiglione
(現EU担当大臣)を指名した。前述したように、新任が増えることにより、Barroso
委員長の影響力が増大するとの見方もある(参照)。 |
|
なお、現在までに終了しているのは、各国が1人ずつ、委員候補を指名することのみであり、各委員間の管轄配分は未定である。また、今後の作業を進める際には、まず、委員会の組織を改変する必要がある(現行の組織は こちら)。これは、EU拡大に伴い、メンバーの総数が20から25に増加したためである。新設のポストとして検討されているのは以下の通りである。
・ |
域内市場、経済政策、産業政策などを統括する委員(いわゆるスーパー委員)
Barrosso 新委員長候補は、このようなポストの新設に消極的であるとされるが、委員数の増加に伴い、担当部署の新設も検討されている。
同ポストの新設は見送られた (参照)。
|
・ |
外交政策の中でも、特に、バルカン半島問題を専門に担当する委員
なお、欧州憲法(条約)が発効すれば、外交問題を専門に管轄する委員(EU外相)が新設され、同委員は副委員長を兼任するが(参照)、共通外交・安全保障政策上級代表(兼EU理事会事務総長)の Solana 氏 が内定している。Solana 氏の祖国であるスペインは、現職のAlmunia 氏(経済・金融担当)を委員候補に擁立し、同氏は対外関係担当委員に就任する予定であるが、欧州憲法が発効し、Solana
氏がEU外相(兼委員会副委員長)に着任することになれば、退陣する予定である。
|
Almunia 氏は、従来どおり、経済・金融政策を担当することになった。 |
|
・ |
漁業政策担当委員
従来は、農業政策の中に含まれていた。
なお、長年にわたり農業政策を担当していた Fischler 委員は退陣し、彼の母国オーストリアは、Ferrero-Waldner
女史を指名している。彼女は、現外相としての経験を生かし、欧州委員会でも外交問題を担当するポストに配属されると考えられているが、前述したように、欧州憲法(条約)発効後は、Solana
氏がEU外相に就任する予定である。そのため、管轄分野の調整が必要になるが、Ferrero-Waldner
女史は、前掲のバルカン問題担当委員か、発展援助政策担当委員になる可能性が高い。
|
・ |
交通政策と運輸政策の分離
|
なお、前述したように、委員の総数は増加しているものの、独、仏、英、伊、西の5大国は、従来のポストを1名削減しなければならない(委員は各国より1名ずつ擁立される)。そのため、これらの国の出身者には、比較的重要なポストが与えられるものとされている。独、仏、英の3カ国は、ともに、経済問題(域内市場、産業政策、競争政策など)に注目しているが、特に、ドイツは、現職の
Verheugen 委員(EU拡大担当)をいわゆるスーパー委員に指名するよう、要請している(参照)。
|