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EUの旗 EU加盟国外相、トルコとの加盟交渉開始について協議 トルコの旗

 2005年9月1・2日、EU加盟国外相は、イギリスの Newport で会議を開き、トルコとの加盟交渉を 予定通り、10月3日に開始するかどうか決定することになっている。すでに欧州委員会は、当初の計画に沿った提案を行っているが(詳しくは こちら)、加盟国の中からは批判的な見解も発せられている。これは、トルコが関税同盟の拡大に関する議定書に署名した際、キプロスを国際法的に承認するものではないと付言したことに端を発しているが(詳しくは こちら)、フランスの de Villepin 首相 は、キプロスが独立国家として承認されない限り、加盟交渉の開始は延期すべきであると述べている。また、Chirac 大統領も、8月26日に Barroso 欧州委員会委員長 と会談した際、同趣旨の発言をしている(参照@A)。2005年5月の国民投票で欧州憲法条約の批准が否決されたことを受け(参照)、Chirac 大統領もトルコのEU加盟に懐疑的な民意を尊重するようになっているが(参照@A)、9月1・2日の外相会議では、フランスやキプロスの要請に応じ、トルコのキプロス非承認宣言に対する声明が採択される可能性がある(参照外相会議の決定〕)。



 これに対し、Barroso 委員長は、キプロスの承認は交渉開始要件には当たらないとし、10月3日の交渉開始を支持している(参照)。また、交渉の延期を要求している加盟国はないとも述べているが参照)、フランス政府の立場に合致していない。なお、ドイツ野党の CDU・CSU は、トルコのEU加盟を阻止する一方で、特権的パートナーシップを締結すべきとする代替案(参照)を改めて提唱し、その他の加盟国政府に働きかけている。この野党の見解に反し、ドイツ政府は、10月3日の加盟交渉開始を支持しているが、9月の総選挙では政権交代が実現する可能性が非上に高い。その他、代替案は、オーストリア政府によって支持されているが、同国の Schüssel 首相や Plasnik 外相は、交渉プランの中に、代替案を盛り込むことを要求している(参照)。


 紛争当事国であるキプロスの Iacovou 外相は、8月30日、キプロス政府はトルコとの対話を重視するため、当初から交渉の開始を阻止するものではないと述べている(参照こちらも参照)。なお、同月中旬、キプロスの Papadopoulos 大統領は拒否権の行使もありうると発言している(参照)。加盟交渉の開始については、EU加盟25ヶ国の全会一致にて決定される。


  リストマーク キプロス外相の見解

欧州委員会の態度

 2005年6月29日、欧州委員会は、トルコとの加盟交渉を予定通り、10月3日に開始させることを提案しているが(参照)、EU加盟国外相会議を直前に控えた8月28日、Rehn 委員(EU拡大担当)は、加盟交渉の開始に必要な条件はすべて満たされていることを確認した(参照)。7月末、トルコ政府はキプロスの承認を明瞭に否認していることから、Rehn 委員の発言は新たな議論を生むことになったが、8月29日、Barroso 委員長の報道官は Rehn 委員の発言を支持する声明を出した(参照@A)。また、翌30日には、Barroso 委員長自身も、キプロスの承認は加盟交渉開始の要件に当たらないことを強調している(参照)。


Rehn 委員の見解

Ferrero-Waldner 委員の発言





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加盟交渉は10月3日に開始

New トルコは、キプロスを独立国家として承認するものではないとする宣言は大きな波紋を投じているが、9月1日、EU加盟国外相は、トルコとのEU加盟交渉を当初の予定通り、10月3日に開始すると決定した。9月2日の会議において、フランスの Douste-Blazy 外相は、キプロスを承認するよう、トルコの Gül 外相に強く要求しているが、加盟交渉の開始には異議を唱えなかったとされる(参照)。なお、具体的な交渉の枠組みはまだ決まっておらず、9月27日の外相会議で協議されることになっている。

 外相会議では、さらに、前述したトルコの一方的宣言や関税同盟の実施について、EU側も声明を発表することが決定され、その文面は来週、各国のEU大使によって作成される予定である(参照@AB)。なお、トルコの宣言については、欧州議会も、9月27日に協議する予定である(参照)。


   New 欧州議会、加盟交渉の開始を了承





New 2005年9月7日付けの Der Standard 紙(オーストリア)によると、同日に開かれた会議で、加盟国のEU大使は、トルコに対する声明の文面について合意することができなかったとされる。審議は来週に持ち越されたが、次回は加盟交渉の枠組みについて協議する予定になっているため、合意の形成は困難とみられている。


New 2005年9月15日付けの Die Presse 紙(オーストリア)によると、9月14日の会議でも、各国のEU大使は合意に至らなかったとされる(参照)(英仏の合意案は こちら)。


New 2005年9月19日付けの Der Standard 紙(オーストリア)によると、同日の会議で、各国のEU大使は、トルコに対する宣言の内容について、合意したとされる(詳しくは こちら)。



(参照) Der Standard v. 7. September  2005 (EU-Botschafter erzielen wieder keine Einigung zu Türkei-Erklärung)

Die Presse v. 15. September 2005 (Beitritt: Kroatien profitiert von Türkei-Streit)

(2005年9月7日 記 9月19日 更新)



 EU加盟に代わる選択肢を明確にすべきとするオーストリアの提案(参照)は、他の加盟国の賛成が得られず、採択されなかった。なお、9月2日、トルコの Erdogan 首相は、EU側が新たな要件を設けたり、EU加盟に代わる案を提唱する場合、トルコは加盟交渉を打ち切ると述べているが、これは、オーストリアの提案や、来週中にもまとめられるEUの宣言をけん制するねらいがあるものと解される(参照)。


 キプロス問題の解決について、トルコは、国連案の受け入れを拒否し、南北統一を阻んだのはキプロス(ギリシャ系の南キプロス)であり(参照)、トルコがその責任を負うべきではないとしている。トルコのEU加盟を支援しているドイツの Fischer 外相もこの立場を支持している(参照)。なお、トルコ政府は、キプロス問題の解決には国連の仲介が不可欠であり、独自の一方的な措置は控える方針をとっている参照 





加盟交渉、正式に開始される

New トルコとの加盟交渉開始の最後のハードルを取り除くため、EU加盟国外相は、2005年10月2日(日曜日)、協議を再開した。オーストリアの根強い抵抗 により、話し合いは容易にまとまらず、交渉開始予定日である3日を迎えたが、その日の協議も難航した。交渉開始予定時刻である17時を過ぎても「ゴーサイン」は出されなかっため、交渉開始式典は延期されることになったが、22時を過ぎた頃になって、ようやく打開策がまとまり、0時を過ぎてから、交渉が正式に開始された。なお、その直後(4日、2時5分)、クロアチアとの加盟交渉 も開始された(参照@A)。

 3日夜、ようやく、加盟交渉の枠組みが採択されたとの報告を受け、トルコの Erdogan 首相は、「理性の勝利」を称えている。また、世界平和の実現に向けた我々の希望は強化されたと述べている(参照)。

 トルコとの加盟交渉は、当初の予定通り、10月3日に開始されることはなかったが、理事会議長国イギリスの Straw 外相は、式典開催地であるルクセンブルクでは、すでに4日なっていようとも、イギリスの時刻によれば、3日の内に式典が始まったため、当初の予定は守られたとしている(参照)。現在、ルクセンブルクとイギリスの間には、1時間の時差がある。

 加盟交渉が開始されたとはいえ、加盟への道のりは長く、険しく、10〜15年計画(早くても、2014年〔詳しくは こちら〕)。クロアチアの方が、先に目標を達成する可能性が高い(参照)。


リストマーク オーストリアの譲歩

オーストリアの懸念

トルコに対する新しい要件

Rehn 欧州委員、「ウィーン流舞踏会」について語る



加盟交渉手続の詳細

EU加盟交渉枠組み(ドイツ語)


     リストマーク 2004年12月の交渉枠組み


クロアチアとの加盟交渉、開始される


(2005年10月4日 記)



(2005年9月3日 記  10月4日 更新)





(参照) Der Standard v. 18. August 2005 (Türkische EU-Verhandlungen: Zypern schließt Veto nicht aus)

Der Standard v. 26. August 2005 (CDU/CSU mobilisieren gegen Türkei-Beitritt)

Der Standard v. 28. August 2005 (Türkei-Streit: Fronten in der EU verhärtet)

Der Standard v. 30. August 2005 (Barroso: Alle EU-Staaten sind für Türkei-Beitrittsverhandlungen)

Der Standard v. 30. August 2005 (Zypern will nicht mit Veto gegen Türkeibeitritt drohen)

Der Standard v. 31. August 2005 (Populismus pur)

Der Standard v. 2. September 2005 (Türkei droht mit Rückzug des Antrags für EU-Beitritt)

Der Standard v. 2. September 2005 (Die Türkei provoziert)

Der Standard v. 2. September 2005 (Reaktionen: ÖVP zurückhaltend, BZÖ gegen "Drohgebärden")

Die Presse v. 31. August 2005 (Österreich fordert Alternative zu Vollbeitritt)

Die Presse v. 3. August 2005 (Türkei reizt Schmerzgrenze aus)

FAZ v. 30. August 2005 (Wachsende Skepsis in der Türkei)

FAZ
v. 2. August 2005 (Türkei will Beitrittsgesuch notfalls zurückziehen)
 

 


トルコのEU加盟問題 

 ・ 2004年12月の欧州理事会決定 

 ・ 欧州委員会 条件付で加盟交渉開始提案


 ・ トルコ、関税同盟の拡大に合意



(2005年8月26日 記 10月4日 更新)