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キプロス承認拒否に対するEU加盟国の批判

 2005年7月29日、トルコは関税同盟の拡大に関する議定書に署名したが、従来通り、キプロス共和国を独立国家として承認するわけではないと宣言した。キプロス政府や同国を支援するギリシャは、直ちに異議を述べているが(詳しくは こちら)、8月2日、フランスの de Villepin 首相もトルコを批判し、キプロスが承認されないならば、10月3日に予定されている加盟交渉の開始を延期すると語った(参照)。

  参照 仏首相のその他の批判的見解

de Villepin 首相

de Villepin 首相


写真提供:
Audiovisual Library European Commission


 これに対し、トルコの Erdgan 首相は、加盟交渉開始までにキプロスを承認しなくてもよいことを保証してきたとされる Chirac 大統領の見解を指摘し、新たな要件の追加は受け入れられないと反論している(参照)。

 2004年12月、EU加盟国首脳(欧州理事会)は、加盟交渉の開始までに、関税同盟の拡大に関する議定書を締結するよう、トルコに要請しているが(参照@A)、キプロスを独立国家として承認することまで明確に要求しているわけではない。2005年6月に首相に就任した de Villepin 氏は(参照)、厳格な態度で臨んでいるが、メディアは、フランス政府の方針を変更するものとして捉えている(参照)。Chirac 大統領と de Villepin 首相は、共に保守系政党の UMP に所属している。同党は、トルコのEU加盟に反対してきたが、2004年12月の欧州理事会において、Chirac 大統領は、交渉の開始に同意している。なお、フランスの Le Figaro 紙によると、現在、Chirac 大統領は de Villepin 首相と同様に考えているとされるが、公式には確認されていない(参照)。


New  Chirac 大統領の見解



 2004年12月の決定に反し、近時では、トルコのEU加盟に否定的な見解が増え始めている(参照)。2005年8月9日付の Der Standard 紙(オーストリア)によると、デンマークの Rasumussen 首相も初めて批判的な見解を示すと共に、EUが地理的に、シリアやイラクに接することは想定しがたいと述べたとされる(参照)。

 2005年9月、ドイツでは、連邦議会選挙が実施される予定であるが、かねてよりトルコのEU加盟に批判的な態度を明確に示してきた(参照)保守系政党の CDU・CSU が約7年ぶりに政権に復帰する可能性が大きい。実際に政権交代が実現すれば、フランスと共に、トルコの完全加盟を阻止する動きにでると解される。




(参照) FAZ v. 2. August 2005 ("Paris: Ankara muß Zypern anerkennen")

Die Presse v. 5. August ("Ankara akzeptiert keine neuen Bedingungen")

Der Standard v. 9. August 2005 ("Front gegen Türkei-Befürworter bröckelt")

 


トルコのEU加盟問題

オーストリア首相の見解


(2005年8月2日 記 8月11日更新)