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EUの旗 ト ル コ の E U 加 盟 と キ プ ロ ス 問 題 トルコの国旗


 2004年12月16日、欧州理事会は、トルコとEU加盟交渉を開始することを決定した参照。16日の夜から17日にかけては、交渉条件の詳細について協議されたが、キプロス問題 が最大の争点となった。

 従来より、EU・トルコ間には 関税同盟 が設立されているが、2004年5月1日、キプロスがEUに加盟したことに伴い参照、この関税同盟も拡大されることになっていた。ところが、トルコはキプロスを外交的に承認しておらず、関税同盟の拡大を受け入れていない。トルコがEUに加盟するには、現EU加盟国であるキプロスとの和解が不可欠であるため、EU側は、12月16・17日中に、キプロスを承認し、関税同盟の拡大に関する議定書に署名するようトルコに求めていた。しかし、トルコの Erdogan 首相は、この要求に憤慨し、12月17日の深夜2時半ごろ、会議場から立ち去ったとされる参照。また、17日午後の会議でも、トルコは譲歩を示さず、会議終了直前になって、再び、強行に抗議したとされる。このような交渉方法を目の当たりにし、トルコはまだヨーロッパ諸国の一員になっていな いと批判されている参照。 「7000万のトルコ人よりも、60万のキプロス人の方が大切なのか」と恫喝し、即刻、アンカラへの帰国を主張し退席した Erdogan 首相を説得したのは、ドイツの Schröder 首相やイタリアの Berlusconi 首相とされているが参照、交渉が決裂していれば、EU側にも不利な影響が生じていたと解される。


 キプロス問題のために、交渉が決裂する危険性もあったとされるが、最終的に、欧州理事会は以下の宣言を採択した(para. 19)。


 欧州理事会は、トルコ政府が加盟交渉の開始までに、関税同盟の拡大に関する議定書に署名する用意があるとしていることを歓迎する。


 また、EU加盟交渉過程でも、この問題を扱い、必要であれば、国際司法裁判所に提訴することが決定された(para. 20).

 

 12月17日夕方の記者会見において、Erdogan 首相は、トルコ人ジャーナリストより拍手で迎えられたが、関税同盟の拡大に関する議定書への署名は、直ちにキプロスを承認することではないと述べた。また、今後の交渉は、過去41年間の交渉より、困難になるであろうと語った参照。なお、トルコの野党は、今回の決定を批判し、交渉の中止を訴えている参照

 関税同盟の設立と国家承認の関係について、イギリスの Straw 外相は、パレスチナや台湾と協定を締結する国が少なくないことを挙げ、トルコがキプロスとの関税同盟の設立に同意したとしても、直ちに、キプロスを承認することにはならないとしている参照



  欧州理事会の決定は こちら

関税同盟の拡大に関する議定書の調印へ向け前進

トルコ、議定書を締結 New

   





(参照) Der Standard v. 17. Dezember 2004 (Erdogan: Zusage bedeutet keine Anerkennung Zyperns)

Der Standard v. 17. Dezember 2004 (Nach erster Genugtuung macht sich Frunst bereit)


(2004年12月18日 記)