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トルコ国旗 欧州委員会 トルコとの加盟交渉を 条件付で 提案


 かねてからトルコのEU加盟問題について検討してきた欧州委員会は、2004年10月6日、確かに、まだまだ改善すべき点はあるが、トルコは 加盟要件 (政治的要件) を満たしているため、同国との加盟交渉を開始すべきであるとの見解を示した。これを参考にした上で、EU理事会は、2004年12月16・17日、実際に加盟交渉を開始すべきかどうかについて判断することになっている参照


 交渉の最終目標は、EU加盟の実現にあるが、これを達成するための方策として、欧州委員会は、以下の3つの柱からなる戦略を提案している。



@

EU・トルコ間の協力制度の強化

 トルコの制度改革を促進し、強化するため、トルコ支援を強化する一方、2005年末より、トルコの政治改革を毎年、詳しく調査する必要があるとしている。また、欧州委員会は、民主主義、人権保護、法の支配の諸原則に関し、重大な問題が継続して生じる場合には、加盟交渉の中断を提案するとしている(最終的判断は、理事会が特定多数決に基づき決する)。このように、交渉中断の可能性が盛り込まれているのは、トルコのEU加盟に消極的な欧州委員やEU加盟国、また、その市民の立場を考慮したものである。


A

特別な交渉手続の実施

 地域政策、農業政策、労働者の移動の自由などの分野では、特別なアプローチが必要とされる。トルコからの移民がEU労働市場に与える影響については、さまざまな見解が主張されているが、長期にわたり移住を制限し、
また、セーフガード条項を設けることについても検討されるべきである。

 財政的な影響について、現段階では正確に評価しえないが、現行の政策が維持されるならば、トルコの加盟は、EU財政に非常に大きな影響を与えるものと解される。なお、同国のEU加盟は、2014年以降の予算編成において考慮されるべきである。

B

政治・文化的対話の強化

 EU市民とトルコ国民の友好関係を深めるため、両者間の対話を強化すべきである。


 欧州委員会によれば、EU加盟交渉はトルコの制度改革を促進するために必要であるとされるが、EU加盟は目標にすぎず、その実現が保障されているわけではない点を強調している。



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欧州委員会の判断の背景


 前述したように、2004年10月6日、欧州委員会は、トルコとのEU加盟交渉の開始を提唱したが、この判断は、全会一致で採択されたわけではないことを Verheugen 欧州委員(EU拡大担当)は明らかにしている参照

 同じくドイツ出身の Schreyer 委員(予算問題担当)によると、Fischler 委員(農業政策担当)、Bolkestein 委員(域内市場政策担当)、Barrot 委員(地域政策担当)、Lamy 委員(通商政策担当)、de Palacio 委員(運輸政策担当)、Rehn 委員(企業・情報社会政策担当、次期EU拡大担当)、Figel 委員(スロバキア出身)と Kyprionou 委員(キプロス出身)の8名は加盟交渉の開始に消極的であったとされる。また、争点は、特に、@ トルコのアルメニア政策、A トルコ国民の移住の自由、また、B キプロス問題にあったとされる参照

 なお、後に、Bolkestein 委員は、交渉の開始に反対したのは 自分のみであったと語っている参照。また、Verheugen 委員によれば、争点は、キプロス問題に限定されていたとされる。もっとも、この問題は、ギリシャ系キプロスが国連案を否決したことですでに片付いているとしている参照。また、キプロス島の統一は、トルコがEUに接近すればするほど、容易になると Verheugen 委員は考えている参照


(参照) Die Welt v. 7. Oktober 2004 ("Kein Automatismus für Ankara")
EU-Nachrichten, Nr. 36, 2004, S. 5-6 ("Basis für Verständigung")


(2004年10月24日 記)






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欧州委員会に対する批判

 欧州委員会は、トルコとの加盟交渉の開始を提唱したが、以下のように批判されている。

@ トルコは加盟基準を完全に満たしているとは言えない。

A トルコのEU加盟の影響が深く検討されていない参照

  こちらも 参照

B 加盟交渉を開始する前から、交渉の最終目標をオープンにすべきではない(参照





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Barroso 欧州委員長 加盟交渉の開始を支持

 2004年12月10日、Barroso 欧州委員長は、ブリュッセルで、トルコ首相と会談し、加盟交渉の開始に賛成しており、トルコのEU加盟を支援すると語った。また、交渉は来年中に開始されるべきであると述べた。

 去る11月に発足した新委員会は、旧委員会の立場を継承しているが、その立場に拘束力はなく、最終決定はEU加盟国によって下される。


(参照) Der Standard v. 10. Dezember 2004 (Barroso für Beitrittsverhandlungen mit Türkei)


(2004年12月11日 記)





(参考)  欧州委員会の Press Release
欧州委員会の報告書


(2004年10月7日記 10月24日 更新)