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はじめに
EU(European Union)とは ヨーロッパの27ヶ国 で構成される国際機関であるが、他の国際機関よりも多くの 権限 が与えられ、政策 も著しく発展している。そのダイナミックさゆえに、EUは「超国家的組織」と呼ばれているが、加盟国や、広くヨーロッパの諸制度を理解する上で、EUに関する知識は欠かせない。特に、EUが加盟国の法制度に与えている影響は甚大で、国内法の多くはEU法に関連している(参照)。
I. EUの発展
EUが発足したのは1993年11月であるが、その起源は第2次世界大戦の終結からほどない1950年代に遡る。特に、1958年に設立された EEC(European
Economic Communty)を基礎にしている(詳しくは こちら)。EECは西欧6ヶ国によって設立され、加盟国間の経済統合を推進してきた(⇒ 欧州統合の目的)。
1993年11月、EEC は ECと改名されたが、ECは2009年12月に廃止され、EU に引き継がれることになった(詳しくは こちら)。つまり、2009年12月まで、EUとECの両者が設けられていたが、現在はEUに一本化されている。
現在、加盟国数は27に達している(EU加盟国の地図)。つまり、加盟国数は当初の4倍以上に増えているが、さらなる拡大が予定されている(参照)。このような状況を考慮し、機構制度や法的基盤を整えるため、2004年10月には 欧州憲法条約 が締結されたが、急速に進められるEU拡大に対する警戒心や抵抗も根強く、2005年夏、フランス国民とオランダ国民は欧州憲法条約の発効を阻止した(参照)。これを契機に、EUは、これまでにない危機的状況に直面することになったが(参照)、2007年12月には、憲法条約に変わる新しい条約(リスボン条約)が制定された。リスボン条約も、アイルランド国民投票で批准が否決されるなど(参照)、発効が危ぶまれたが、2009年12月、ようやく発効するにいたった。現在のEUは、このリスボン条約によっている。
なお、2007年3月、EC設立の基盤となったローマ条約の締結から50年が経過したが(参照)、同月、ヨーロッパ再統合(「鉄のカーテン」によって分断された東西ヨーロッパの統合)を象徴する都市ベルリンで記念式典が開催され、ベルリン宣言 が採択されている。
II. EUの
「柱構造」
当初、欧州統合は経済分野で発展するが、次第にその他の分野でも進展する。それらを束ねる組織として、1993年11月に設けられたのがEUである。その当時、EUは、@ 従来から存在するEC(3つの共同体)、A 新たに制度化された 外交・安全保障政策 と B 同様に新たに制度化された 司法・内政分野における協力 の3本柱からなる「家」(European house)のような存在であった(各柱の違いについては こちら)。
EU発足当初の3本柱構造(マーストリヒト条約体制)
( アムステルダム条約体制は こちら)

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なお、現在は、リスボン条約に基づき、上掲の「3本柱構造」は廃止され、1本化されているが、厳密には、以下の図が示すように、「2本柱構造」をとる(詳しくは こちら)。また、ECは廃止され、EUに引き継がれている(詳しくは こちら)。
III. EU法の体系
1.
第1次法と第2次法
1.1.
第1次法
EUは条約に基づき設けられ、また、条約に基づき重要な改革がなされてきた。これらの条約は第1次法と呼ばれるが、国内であれば、憲法に相当する。つまり、第1次法は、EU・ECの憲法として、@
EU・ECの目標、重要な諸原則、A
機構制度、B 立法手続、C 諸政策の重要事項について、また、D
EU市民の権利について定めている。
詳しくは こちら
第1次法とその締結・発効年
国内憲法との主な相違点  |
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EU第1次法は、EUが実施しうる諸政策の基本原則や重要事項について定めている。別の観点から述べるならば、第1次法はEUに政策権限を与えており、EUはこれらの権限しか行使しえない(つまり、第1次法が定める政策しか実施しえない)〔個別的授権の原則〕。
EUの諸政策
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国際条約である第1次法は、全加盟国(の全会一致)によって制定され、全加盟国によって批准された後に発効する(EU条約第52条およびEC条約第313条参照)。
第1次法とその制定年・発効年
その他、基本権や加盟国の憲法に共通の諸原則(民主主義・法治国家原則など)なども第1次法に当たり、EUはその遵守が義務付けられている(リスボン条約発効後のEU条約第2条参照)。
1.2.第2次法
第1次法が定める目標を実現したり、第1次法を補うため、EUの諸機関 は法令を制定することができるが、この権限や立法手続は、第1次法の中で定められている。第1次法に基づき諸機関が制定した法令や、EC裁判所の判例法も重要な法源であるが、これらを第2次法とよぶ。
・量だけではなく、質的(効力の面)でも強化
( EC法の特殊性)
諸機関が制定しうる第2次法には、規則、指令、決定、勧告、意見があるが、その概要は以下の通りである(EUの機能に関する条約第288条、EC条約第249条参照)。
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法令名 |
立法者 |
相当する国内法 |
対象者 |
法的拘束力 |
直接的効力 |
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規 則 |
理事会、欧州議会、欧州委員会、欧州中央銀行 |
一般の法令 |
加盟国
私人 |
すべての点においてあり |
あり |
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指 令 |
理事会、欧州議会、欧州委員会 |
一般になし |
加盟国 |
その目的に関してのみあり |
加盟国が置き換えを怠っており、規定が無条件かつ明確に定められている場合はあり(参照) |
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決 定 |
理事会、欧州委員会、欧州中央銀行 |
行政行為
行政命令 |
主として特定の私人、加盟国 |
対象者に対してのみあり |
あり |
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勧告・意見 |
理事会、欧州委員会、欧州中央銀行、会計検査院 |
行政措置 |
加盟国
私人 |
なし |
なし |
2. 立法権限と立法手続
EUは、第1次法(ないし第2次法)
で挙げられた政策分野・案件についてしか法令を制定しえないが、その権限の有無が争われることも少なくない(参照)。
なお、EUに権限は与えられていないため、その枠外で法令
ないし条約が制定されることもある(加盟国間における条約の締結)。
・ 混合協定
・ 従来のECの条約締結権限(AETR 判決)
共通外交・安全保障政策 の分野において、EUは法律を制定しえないが(参照)、法律としての性質を持たない第2次法(例えば、政策のガイドライン)を採択することは認められる(参照)。なお、この第2次法は、EUの法というよりも、加盟国が共同で制定した法令(国際法)としての性質が強い。
立法権限の内容(加盟国法の統一または調整)についても注意が必要である。加盟国の利益に大きな影響を及ぼす案件(間接税率の決定)や域内市場に関する案件について、EUは国内法を調整しうるにすぎない(参照)。
立法手続も同様に第1次法で定められているが、案件ごとに異なるため注意が必要である。伝統的に、主たる立法機関は EU理事会 であり、欧州議会 の立法権限は制限されているが、次第に強化されている。現行制度(リスボン条約体制)下では、原則として、EU理事会と欧州議会が共同で第2次法を制定する。なお、加盟国の政策に大きな影響を及ぼす分野や条約の締結に関し、欧州議会は現在でも制限されている(詳しくは こちら)。
欧州議会の立法権限
法令制定の嵐 ( 参照)
3. EU法の効力
EU法の特殊性
4. 各法分野と法令の検索方法
我が国の法律は、公法と私法(さらに社会法)に分けることができる。公法には、憲法、行政法、刑法などが属するが、例えば、行政法は、@行政組織法(国家行政組織法、国家公務員法など)、A地方自治法(地方自治法、地方公務員法)、B行政手続・救済法(行政手続法、国家賠償法など)、C財政・税法(財政法、法人税法など)、D警察・防衛法(警察法、自衛隊法など)、E土地・環境法(土地基本法、環境基本法など)、E教育・文化法(教育基本法、宗教法人法など)に分類することができる。ある特定の法律について調べたり、学ぶときは、このような体系が参考になる。
このことはEU法にも当てはまるが、EU法は32の政策分野ごとに体系化されているため、特定の政策分野に照準をあてて調査・研究することも有益である。
従来の32分野
EU法の検索方法
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