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E  U の 超 国 家 性 


 EUは加盟国から委譲された権限 を行使し法令(第2次法)を制定している。これらのEU法は、質・量ともに、目覚しいスピードで発展し続けており、すべてを包括的に理解するのは、専門家にとっても困難である。また、EU法が国内法に及ぼす影響は計り知れず、国内の立法機関の立場を弱めているとの批判も見受けられる(参照)。国連やWTOなどの国際機関に比べ、EUの権限は非常に強力であるため、EUは一般の国際機関とは異なる、「超国家的な機関」として捉えられることが多い。つまり、以下の点において、EUは「超国家性」(Supernatinalitaet)を備えるとされている。


EUは、加盟国だけではなく、私人をも直接的に拘束する法令を制定することができる。また、私人に対し、直接的に権利を与えることができるが(参照)、通常の国際法の場合は、国がそれを国内法へ置き換えることを通し、個人にも権利・義務が賦与される。

EU法違反はEU裁判所によって厳格に審査され、その判決は加盟国を拘束する(参照)。EU裁判所には強制的管轄権が与えられているため、加盟国であれ、その審判を拒否することはできない。また、個人もEU裁判所(第1審裁判所)に提訴することができる(参照)。

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EU法は国内法に優位し(参照)、また、国内法に置き換えることなく、直接、適用されるものがある(参照)。

EUは加盟国に頼らない、独自の財源を持つ(参照)。



 なお、従来のEUは、いわゆる「3本柱構造」をとり、超国家性は「第1の柱」にのみ該当していた(詳しくは こちら)。つまり、「第2の柱」と「第3の柱」は、一般の国際組織と異ならなかった。この「3本柱構造」は、リスボン条約に基づき廃止され、現在、EUは「1本の柱」からなっているが、厳密には、@共通外交・安全保障政策(従来の「第2の柱」)とAその他の政策の2本柱体制」を採用している(詳しくは こちら)。また、司法・警察協力(従来の「第3の柱」)についても、例外的に、超国家性を有さない要素が残されている(詳しくは こちら)。


 ところで、EUは、その構成上、国家ではない。また、国家とは異なり、ありとあらゆることを実施しうるわけではない。その権限は加盟国より与えられたものに限定されるが(個別的授権の原則)、新たな権限を生み出す包括的な権限(Kompetenz-Kompetenz)は与えられていない。



(参照) Streinz, Europarecht, 7. Auflage 2005 (München), Seite 50-51 (Rdnrn. 126-132)



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