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E U  理 事 会 (Council of European Union)


   目 次
    はじめに
   1. 構成
   2. 任務および権限
   3. 議決方式
   4. リンク

スウェーデンの国旗

2023年上半期
議長国
スウェーデン



リストマーク リスボン条約体制は こちら


 



EU理事会
(ベルギー・ブリュッセル)

写真提供: Audiovisual Library European Commission
   はじめに ~ EU理事会と欧州理事会の違い

   EU理事会は、ECの政策を決定し、また、法令を制定する最高機関である。この意思決定機関は各国政府の代表で構成されるため、ECの政策ないし法令は、加盟国政府によって決定されると言える。つまり、ECは加盟国によって統制されているわけである(リストマーク EC/EUの「主人」としての加盟国。理事会では加盟国の利害が激しく対立し、審議が紛糾することもまれではないが、理事会はあくまでもECの機関である。1993年より、理事会は、自らを「EU理事会」と呼んでいるが[1]ECの機関であることを考慮すると、この名称は必ずしも適切ではない[2] 

その他に、加盟国政府間のフォーラムとして、欧州理事会(European Council)が設けられている。この組織は、EUECではない)の機関とされることもある(EU条約第4条など参照)。



 欧州理事会は、加盟国政府の代表(通常は中央政府の長や外務大臣)と 欧州委員会の委員長 で構成される。この組織について、EC第1次法 は当初、何ら定めていなかったが、1974年、加盟国政府は半年に2回、会議を開くことを決定した。第1次法内で正式に承認されるようになるのは、単一欧州議定書(1986年制定、1987年発効)以降のことである。

 その主たる任務は、EUの重要事項ないし基本方針を決定し、また、加盟国間の政治協力を強化することにある(EU条約第4条参照[3])。 例えば、EU条約第13条は、共通外交・安全保障政策 の基本方針は欧州理事会によって決定されると定めている(参照、第17条も参照されたい)。また、欧州理事会は、その他の政策の一般方針・目標を定め、その実施をEU理事会を初めとするECの機関や加盟国に要請することができる(リストマーク リスボン戦略)。




 なお、 欧州理事会はECの機関ではな いため、ECの政策・活動に関与しないが、高度に政治的な案件については、欧州理事会にも役目が与えられている。例えば、EC条約第99条第2項は、加盟国の経済政策のガイドラインについて欧州理事会は審議すると規定する(経済政策に関し、加盟国はECに権限を完全に委譲しておらず、基本的な権限を保有している)。

 なお、欧州理事会は、ECの機関ではないが、欧州委員会の議長が抜ければ、ECの機関であるEU理事会と同一である。EU外の国際機関である 欧州評議会(Council of Europe) とは異なるので注意を要する。

     リストマーク 欧州憲法条約による改正

     リストマーク リスボン条約による改正 New




 通常、欧州理事会は、3ヶ月ごとに開催される。過去の会議については、こちら

2004年 

6月17・18日

11月 4・5日

12月16・17日

2005年 

3月22・23日

6月16・17日

10月27日  (結果)

12月15・16日

2006年 

3月23・24日

6月15・16日

10月20日

12月14・15日

2008年  3月13・14日
6月19・20日

2010年  6月17日 New

2004年5月の EU東方拡大 後、欧州理事会はブリュッセルで開催されている。

 また、毎年3月の欧州理事会では、EUの(持続的)発展について話し合われている。




 ECの機関としてのEU理事会と、その他のECの機関(例えば、EC裁判所)間の均衡を保つため、EU理事会ではなく、加盟国政府に権限が与えられている場合もある[4]。この場合、加盟国政府の代表は、EU理事会という組織的枠組みの中で行動すると解されている[5]。なお、この組織は前述した欧州理事会に類似するが、欧州委員長が参加しない点で、欧州理事会とは異なる。





  EU理事会

 ①

 加盟国の大臣級の代表で構成されるEU理事会は、その権限に鑑み、以下のように分類できる。

ECの最高機関としてのEU理事会
ECの法令を制定する。

EUの立法機関としてのEU理事会
2、第3の柱の分野における政策を決定する。

 その他に、EU理事会は加盟国首脳(大臣級の代表ではない)で構成される場合もある。マーストリヒト条約に基づき導入された、この新しいタイプの理事会も、ECの機関としてのEU理事会に当たるが、実質的には、欧州理事会(政府間協議)として、重要な案件について審議する(EC条約第11条第2項[特定の加盟国間におけるより緊密な政策遂行]および 121条第2項[ユーロの導入])。また、ニース条約に基づき、欧州委員会のメンバーは、この構成による理事会によって指名・任命されることになった(214条第2)。

 なお、EC条約上、加盟国政府に権限が与えられているケースでも、同政府はEU理事会の枠内で行動する場合がある(EC裁判所判事・法務官の任命(第223条第1項)や欧州中央銀行理事会メンバーの任命(第112条第2項))。もっとも、EU理事会の組織が利用されるだけで、理事会自身が行動するわけではない。


 欧州理事会

 

加盟国首脳と欧州委員長で構成される。
EUECの基本要綱について決定する。

 リストマーク 欧州理事会の公式サイト

                                                                               


 EU理事会(以下では、単に理事会とする)において、各国の代表は自国の権利ないし利益を強く主張するため、審議がもつれることが多い[6]。この点において、理事会はECの機関としての性質と、自国の利益を追求したり、加盟国間の利害関係を調整する機関としての性質を併せ持っていると言える。


 
   リストマーク 欧州憲法条約による改正

    リストマーク リスボン条約による改正


   1.   構 成



   リストマーク リスボン条約による改正は こちら

 EU理事会は、各加盟国から1名の代表によって構成される[7]EC条約第203条第1項において、同代表は、加盟国政府のために行動しうる閣僚級(つまり、大臣クラス)の者とされているため、必ずしも閣僚である必要はない。例えば、ドイツは、省庁の次官(Staatssekretären)を派遣することがある。それゆえ、EU理事会の代わりに、使用されることも少なくない「閣僚理事会」という名称は必ずしも適切ではない。

各国の代表は常に同一人物であるわけではない。理事会に誰を派遣するかは、加盟国政府の判断に委ねられているが、例えば、農業政策について協議する場合には、通常、各国より農相が派遣される。このような理事会は、一般に、農業理事会(ないし農相理事会)と呼ばれている。同様に経済政策・財政問題に関する場合には、各国の経済政策・財政担当大臣が派遣され、いわゆるECOFIN-Council が開催される。なお、一般的な問題(EU拡大を含む)について協議するのは、外相理事会である。現在、20以上の理事会が開催されているが、15以下に抑えることが計画されている[8]


 理事会の議長は、各国が交代で務める。その任期は6ヵ月である(EC条約203条第2項)。議長国の順番は、理事会の全会一致の決議によって予め定められており[9]19991月から6月まではドイツ、同年の下半期はフィンランドが議長国を務めた。以後、ポルトガル、フランス、スウェーデン、ベルギー、スペイン、デンマーク、ギリシャ、イタリアアイルランドオランダルクセンブルクイギリスオーストリアフィンランドドイツ(2007年上半期)の順になっている。2009年上半期の議長国はチェコ、また、下半期はスウェーデンである(東方拡大後の議長国)。

 前議長国、現議長国、次期議長国の3国は、いわゆるトロイカtroika[三頭立馬車])として緊密に協力し、政策を遂行することになっている。この3国には、英、仏、独、伊、西の5大国が必ず含まれるように任期は定められている(現在のトロイカについては こちら)。
  


スペインの国旗
スペイン
(2010年上半期)

矢印
ベルギーの国旗
ベルギー
(2010年下半期)
矢印
ハンガリーの国旗
ハンガリー
(2011年上半期)



2004年1~6月の議長国 アイルランド
2004年7~12月の議長国 オランダ
2005年1~6月の議長国 ルクセンブルク
2005年7~12月の議長国 イギリス

2006年1~6月の議長国 オーストリア
2006年7~12月の議長国 フィンランド
2007年1~6月の議長国 ドイツ
2007年7~12月の議長国 ポルトガル
2008年1~6月の議長国 スロベニア
2008年7~12月の議長国 フランス
2009年1~6月の議長国 チェコ
2009年7~12月の議長国 スウェーデン

東方拡大後の議長国



 議長国は、同時に欧州理事会の議長国も務める。各国が議長国を務める半年間には、通常、2回の欧州理事会が議長国内で開かれ、EUの基本方針について協議される。


ポイント

 EU理事会の議長国は、欧州理事会の議長国を兼ねるため、両者は同一であるが、開催される会議によって、その地位が異なる。つまり、EU理事会が開催される場合には、同理事会の議長国であり、欧州理事会が開催される場合には、同理事会の議長国となる。

New

 2004年5月の EU東方拡大 後、欧州理事会はブリュッセルで開催される。




  6ヵ月の任期中、議長国は、理事会を主導する政治的任務を負う。小国にとっては、自国を対外的にアピールする好機であるが、その負担も見過ごしえない。それゆえ、小規模国の新規加盟が中心となるEU東欧拡大に向けては、議長国選出や任期の見直し、また、前述したトロイカの再編などについて議論されている(欧州憲法による改正



リストマーク 事務総局

 前述したように、EU理事会のメンバーは審議事項によって異なるが、常設の事務総局がブリュッセルに設けられており(写真参照)、理事会の任務を補佐している。なお、約3300人のスタッフを統括する事務総長は、共通外交・安全保障政策(EUの第2の柱)の上級代表を兼任している(詳しくは こちら)。

  リスボン条約により、EU理事会の事務総長ではなく、欧州委員会の副委員長が同上級代表を務めることになった(参照)。

リストマーク 加盟国常駐代表委員会(COREPER)

 ECは国際機構であるため、加盟国は大使を派遣することができ、ほとんどの加盟国は常任の大使(いわゆるEU大使)を派遣しているが、これらの者によって加盟国常駐代表委員会(Comité des représentants permanents des Etats membres)が組織され、案件によってメンバーが異なる理事会の任務を補佐している(EC条約第207条参照)。





    2.  権 限 な い し 任 務

 EC条約第202条は、EU理事会の任務として、

  加盟国の経済政策を調整し、

  決定権を行使する

とのみ定めている。そのため、具体的な任務の内容については、個々の条文を参照する必要がある。なお、他の機関に同じく、理事会は、EC条約が定める権限のみを行使することができる。ある権限の行使に際して、理事会には(広範な)裁量権が与えられているため、権限を行使するかいなか、また、どのように行使するかは、その裁量判断に委ねられているが、EC条約が理事会の任務を具体的に定めているときは、その履行が義務づけられる[10]。理事会がEC条約の規定に反し、立法行為を怠るときは、不作為違法確認の訴えEC裁判所に提起することができる(EC条約第232)。

 

   理事会の主たる権限ないし任務は以下の通りである。


(1) 法令の制定

 前述したように、理事会はECの最高機関であり、主たる立法機関であるが[11]、現在では、欧州議会と共同で法令を制定することが多くなっている(立法手続について、詳しくはこちら)。なお、欧州委員会が法案を提出しなければ、立法手続は開始されないが(参照)、理事会は委員会に法案の作成を要求しうる(第208条)。

 EC条約は、ある案件について抽象的にしか定めておらず、その具体化を理事会(または理事会と欧州議会)に委ねている場合が少なくない。例えば、アムステルダム条約 に基づき導入された第255条は、EU市民や加盟国内に住所を持つ個人のEU公文書開示請求権について定めているが、その一般手続や制限等は理事会によって定められる(第255条第2項)[12]

制定された法令を実際に適用するために必要な規則を制定する権限は、原則として、委員会に与えられる(EC条約202条)[13]。つまり、理事会(場合によっては、欧州議会と共同で)が制定した法令の執行規則は委員会によって制定される(参照)。なお、 これらの法令を実際に適用するのは、通常、加盟国である(詳しくは こちら)。

 その他、理事会はEC裁判所規程の改正権を有する(245条第2)。

 

(2) 財政

 委員会によってECの仮予算案が作成されると、理事会は、欧州議会と共に、予算を決定する(272条第3)。

 

(3) ECの対外関係の構築

 ECは、第3国または国際機関と条約や連合協定[14]を締結することができるが(第300条および第310条参照)、その締結権は理事会に与えられている。なお、理事会は、交渉権限を欧州委員会に与えることができる。

 その他、理事会は、EUの第2の柱(共通外交・安全保障政策)の一環として採択された決議に基づき、第3国に対して経済制裁を課すことができる(第301条)。

 

(4) 諸評議会メンバーの任命

理事会は、経済社会評議会(第258条第2項)、地域評議会(第263条第2項)および会計検査院(第247条第3項)のメンバーを任命する権限を有する。これに対し、EC裁判所(第233条第1項)および欧州中央銀行理事会(第112条第2項)のメンバーは、理事会ではなく、加盟国政府によって任命される(参照)。なお、従来、欧州委員会のメンバーは、加盟国政府の相互承認によって指名・任命されていたが、ニース条約に基づき、この任命手続は、理事会(加盟国首脳によって構成される理事会)の特定多数決制に変更された(第214条第2項)。

  リストマーク 欧州委員会の指名・任命について

 

(5) 諸機関のメンバーの俸給等の決定

 欧州委員会メンバーと、EC裁判所判事、法務官および事務総長(Registrar)の俸給、手当や年金等について決定する権限も理事会に与えられている(第210条)。

 

(6) EC条約の改正

 加盟国政府または委員会は、EC条約の改正を理事会に提案することができる。理事会は、欧州議会(および場合によっては委員会)の意見を聞き、諸条約改正のための政府間会議を開催するかどうかを決定する(EU条約第48条)。なお、実際に諸条約を改正するかどうかを決めるのは、理事会ではなく、加盟国である。条約の改正には、全加盟国の賛成を必要とする。

 

(7) 第3国のEU加盟

 EU条約第6条第1項所定の諸原則を尊重する、あらゆるヨーロッパの国々は、EUに加盟することができる。加盟申請は理事会に対して行い、理事会は、委員会の意見を聞き、欧州議会[15]同意を得て、全会一致にて決定する(EU条約第49条第1項)。なお、第3国のEU加盟申請が了承されれば、EU加盟国EU自身ではない[16])と同第3国との間に加盟条約が締結され、同条約が全加盟国および同第3国によって批准された後に、EU加盟が実現する。批准は、各国の憲法上の規定に従いなされなければならない(前掲規定第2項)。


  リストマーク 加盟手続について


(8) EUの第2および第3の柱における権限

 共通外交・安全保障政策の分野(EUの第2の柱)において、理事会は、欧州理事会によって決定された方針に従い、共通の行動(EU条約第14条)と、共通の立場(第15条)を決定する。

 刑事に関する警察・司法協力の分野(第3の柱)において、理事会は、共通の立場や加盟国の法令・行政規則を調整するための措置を制定しうる。また、加盟国間で締結される国際条約を起草しうる(第34条)。


 

   3.  議 決 方 式 

 ECの立法手続はEC条約の中で定められているが(例えば、第250条以下参照)、主たる立法機関であるEU理事会の議決についても同様に条約内で明定されている。理事会の議決方式には、全会一致制、絶対多数決制、また、特定多数決制があるが、その詳細は以下の通りである。

 

(1) 全会一致

加盟国が主権の委譲に消極的な分野(例えば、租税〔第93条〕、移動労働者の社会保障〔第42条〕、EU市民への選挙権の賦与〔第19条〕、EU市民への新しい権利の賦与〔第22条〕、差別の撲滅〔第13条〕)や、一般規定(第308条)の適用に際し、理事会は全員一致で決議しなければならない。また、理事会が委員会案を修正する場合や(第250条第1項)、欧州議会との協力手続ないし共同決定手続において、理事会が議会案を修正する場合(第251条第3項、第252条第c号)も同様である。なお、出席した加盟国代表が棄権することは、この全会一致の決議を妨げない(第205条第3項)。

 

(2) 絶対多数決

 EC条約第205条第1項は、絶対多数決を原則として定めているが(すなわち、過半数の賛成が得られれば、議案は採択される)、実際には、後述する特定多数決の方が一般的である。

 

(3) 特定多数決

 特定多数決制度は、域内市場 に関する案件に適用される議決方式として採用されたが、現在は、その他の案件で広く用いられている。

 各国の持票数は各国の人口に照らし決定されるが、国際舞台における各国の形式的平等を考慮し、修正されている(EC条約第205条第2項、詳しくは こちら または こちら。その結果、大国に不利で、小国に有利な票数配分になっている(リストマーク民主主義上の欠陥)。

 ブルガリアとルーマニアの新規加盟 が実現し、27ヶ国体制に発展した現在(2007年1月)、各国の持票の合計は345票である(各国の持票数は こちら。欧州委員会の提案を受けて審議するときは、255票(全体の約74%)の賛成があれば、議案は採択される(単純特定多数決)。この票数は、大国のみの賛成によってEU法が制定されることを阻止し、また、逆に、小国のみの反対でEU法の制定が阻止されることを防ぐように定められている。

 欧州委員会の提案を受けずに理事会が審議する場合には、255票の賛成と、少なくとも3分の2以上の加盟国の承認が必要となる(二重の特定多数決)(参照)。


   リストマーク 特定多数の賛成が得られなかったケース





 各国の持票数や、法案の採択に必要な票数は、① 6大国のみや、中小国のみで法案を採択したり、② 小国のみが採択を阻止することができないように考慮されている。




6大国

(計170票)


ドイツ 29
フランス 29
イギリス 29
イタリア 29
スペイン 27
ポーランド 27



10の中規模国

(計117票)

ルーマニア 14
オランダ 13
ギリシャ 12
ベルギー 12
ポルトガル 12
チェコ 12
ハンガリー 12
スウェーデン 10
オーストリア 10
ブルガリア 10



11の小国
(計58票)

デンマーク 7
スロバキア 7
フィンランド 7
アイルランド 7
リトアニア 7
ラトビア 4
スロベニア 4
エストニア 4
キプロス 4
ルクセンブルク 4
マルタ 3





 なお、ニース条約 に基づき、人口を考慮する制度が導入された。これによると、各国は、法案に賛成する加盟国の人口が、EU全体の62%に達することを要求しうる(第205条第4項)。この数値による人口は、Eurosat の統計に基づき毎年算定されるが、ブルガリアとルーマニアの新規加盟 を経て27ヶ国体制に発展した2007年は、3億0550万人である(総人口は4億9280万人)(参照)。


  リストマーク 欧州憲法条約による改正について

  リストマーク リスボン条約による改正について





リストマーク 従 来 の 特 定 多 数 決 制 度 リストマーク


 2004年5月の 東方拡大 後、2004年10月末までは、持票数の総数は、124票であった(EC条約第205条第2項)[17]。また、理事会が委員会の提案を受けて法律を制定するときは、88[18]の賛成票が必要であり、その他の場合には、少なくとも10の加盟国の賛成を含む62の賛成票が必要とされた。

 2004年10月から2006年末まで、持票数の総数は321で、232の賛成票があれば特定多数決は成立したが、ブルガリアとルーマニアの新規加盟により、2007年元旦からは、前述のように変更されている。

  ◎ ニース条約に基づく改正について
  ◎ 欧州憲法条約による改正について



 EU理事会の審議は公開されない。つまり、ECの法律は、閉ざされた部屋の中で制定される。内外からの厳しい批判を受け、2006年6月、欧州理事会は、立法手続を公開する方針を決定した(参照)。



   4.  EU理事会に関するリンク


EU理事会の公式サイト  英語 仏語 独語



欧州理事会のサイト 英語
 仏語 独語


 


[1]      See OJ 1993, L 281, p. 18.

[2]      Matthias Herdegen, Europarecht (Verlag C. H . Beck 2003, 5th edition), p. 91 (para. 114).

[3]      EU条約第4条は以下のように定める。

The European Council shall provide the Union with the necessary impetus for its development and shall define the general political guidelines thereof.

The European Council shall bring together the Heads of State or Government of the Member States and the President of the Commission. They shall be assisted by the Ministers for Foreign Affairs of the Member States and by a Member of the Commission. The European Council shall meet at least twice a year, under the chairmanship of the Head of State or Government of the Member State which holds the Presidency of the Council.

The European Council shall submit to the European Parliament a report after each of its meetings and a yearly written report on the progress achieved by the Union.

[4]      EC条約第223条第1項によれば、加盟国政府は、相互の了解の下、EC裁判所判事と法務官を任命する。詳しくは こちら

[5]      Waltraud Hakenberg, Grundzüge des Europäischen Gemeinschaftsrechts (Verlag Vahlen 2003, 3rd edition), paras. 37-38; Herdegen, op. cit., p. 91 (para. 114).

[6]      この意味において、理事会の議決方式を柔軟にすることは重要であると言える。

[7]      20038月現在、EUには15の国が加盟しているため、理事会の構成員は15名になる。

[8]      Hakenberg, op. cit., para. 24.

[9]      Decision of Council (1 January, 1995), OJ 1995, L 1, p. 220.

[10]     交通政策の分野における権限ないし任務と、サービス提供の自由の分野における権限ないし任務との違いについて、See ECJ, Case 13/83, European Parliament v Council.

[11]     なお、欧州石炭・鉄鋼共同体では、High Authority (最高機関)が主たる立法機関であった。同共同体条約第26条参照。この機関は、ECの欧州委員会に完全にではないが相当する。

[12]     なお、この点に関し、欧州議会と理事会はすでに規則(Regulation (EC) No. 1049/2001, OJ 2001, No. L 145, p. 43)を制定している。

[13]     例外的に、理事会は法規の執行に関する権限も行使することができる(第202条)。

[14]     連合協定は、通常の国際条約とは異なり、ECと第3国(または国際機関)間に緊密な関係を構築することを目的とした国際法で、通常は、第3国のEU加盟を前提にして締結される(第310条参照)。

[15]     欧州議会の議決には、総議員の過半数の賛成を必要とする。

[16]     なお、EUは国際法人格を持たないため、国際条約を締結しえない。

[17]     各国の持票数は、以下の通りである。

ドイツ、フランス、イギリス、イタリア

各10票

スペイン

8

ベルギー、オランダ、ギリシャ、ポルトガル

各5票

オーストリア、スウェーデン

各4票

デンマーク、アイルランド、フィンランド

各3票

ルクセンブルク

2

計 87

   新規加盟10か国の票数は以下の通りである。

 ポーランド 

8

 チェコ、ハンガリー

5

 スロバキア、リトアニア、ラトビア、スロベニア、
 エストニア

3

 キプロス、マルタ

2

 

計 37

[18]     東方拡大が実現する前(すなわち、15か国体制当時)、持票数は合計87で、その内、62票の賛成が得られれば、法案は可決された。この62という数字や、各加盟国の持ち票数および総票数は、各加盟国の政治力やECの政策運営方法など、種々の事項を考慮して定められている。例えば、大国2国のみの反対では、議案の採択を阻止することはできない。また中小国のみの賛成票でも議決は採択されない。




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