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議長国ドイツのロゴ

2007年上半期 EU理事会議長国

ド イ ツ


 2007年1月1日、ドイツはフィンランドよりEU理事会議長国のポストを継承する。EU(EC)の原加盟国であるドイツが議長国を務める2007年上半期には、@ E(E)C条約制定50周年(参照)、A同じく原加盟国であり、欧州統合の牽引力であるフランスの大統領選、B欧州憲法条約に関する再協議(参照)、また、CブルガリアとルーマニアのEU加盟(正式には未決定)など、多くの重要案件が存在する。EC設立から半世紀が経過しようとする現在、欧州統合は新たな段階に突入するが、2006年10月7日、ドイツの Merkel 首相 は、政府の公式サイト(video-podcast)において、議長国期間中の重要テーマを発表した。首相自らも、来年上半期は多くの未解決問題に取り組まなければならないであろう(EU市民は欧州統合に対し懐疑的になるであろう)としているが、その重要課題は以下の5つである。 なお、現在の議長国フィンランド のプログラムとの調整も必要になるため、正式には11月に決定される予定である(参照)。





理事会議長国
の順番


フィンランド国旗
フィンランド
(2006年下半期)

矢印

ドイツ
(2007年上半期)
矢印
ポルトガル国旗
ポルトガル
(2007年下半期)



リストマーク 2007年 上半期(ドイツ議長国期間中)の主要課題 リストマーク


@ ヨーロッパの共通の価値の再認識

 3月25日のローマ条約(EEC条約とEuratom条約)の締結50周年を記念し(参照)、加盟国は共通の価値観を再確認しなければならない。これによって、異文化や異宗教との誠実な対話も可能になる。なお、かねてより、Merkel 首相は、変革の時代における基本的価値観の確立を訴えている(参照


New

 2006年10月11日、Merkel 首相は、ローマ条約締結記念日にあたる3月25日、ベルリンにて記念式典を開催する意向を示した。これは、冷戦を乗り越え、再び一つに統合されたヨーロッパを祝する行事となる予定であるが、開催地でドイツの首都ベルリンは、「冷戦終結後のヨーロッパ」の象徴であるとされる。式典では「ベルリン宣言」(EU加盟国〔理事会〕、欧州委員会、欧州議会の共同宣言)の発表も検討されている(参照)。

(参照) 欧州委員会のプレスリリース
 
式典におけるMerkel 首相の演説 New


  





 ローマ条約(EEC条約とEuratom条約)の締結50周年を記念し(参照)、EUはロゴを募集していたが、1700を超えるEU内の若手デザイナーの作品の中から、2006年10月17日、左上の作品が大賞に選出された。製作したのは、ポーランド出身の男子大学生 Szymon Skrzypczak (23歳)である。様々なフォントを組み合わせてできた "Together" の文字はヨーロッパの団結や一体性を、また、"SINCE 1957" はローマ条約の締結年を表しており、戦後の欧州統合を簡潔に表現している(参照)。なお、これらの単語は、製作者である Skrzypczak の手によって、その他のEU公用語に翻訳される予定である(参照)。

Gemeinsam seit 1957

ドイツ語版

    リストマーク ベスト10内に入った応募作品



  


A EU拡大の(地理的)限界を明確にすること

 すでにクロアチアトルコともEU加盟交渉が開始されているが、さらなるEU拡大は近いうちに実現しないこと、また、トルコに対しては、EU加盟を約束するものではないことを明確にしなければならない。


 ドイツの Merkel 首相 は、首相就任前より、トルコのEU加盟に消極的な態度を見せているが(詳しくは こちら)、就任後は、所属政党党首としての立場と、ドイツ首相としての立場を使い分けている(後者はトルコの加盟に中立もしくは賛成)。2006年10月5日には、ドイツ・トルコ経済フォーラムに出席するため、イスタンブールを訪問している。翌6日の首脳会談では、主催国のEU加盟が公約されているものではないと述べる一方、異宗教間の対話促進の必要性も強調している。



B 国際競争力の強化

  中国やインドを初めとする諸国の経済発展に対抗し、豊かさを維持するため、EUは団結し、またビュロクラティーの撤廃、技術革新に取り組む必要がある。


   (参照) リスボン戦略



C (社会的)経済秩序確立への貢献

 知的所有権の保護や公正な国際貿易秩序を世界規模で確立するため、EU加盟国は一致団結して取り組まなければならない。



D 欧州憲法条約の発効

 EUと加盟国の役割分担を明確にし、EUの巨大化に対する市民の不安を取り除くため、憲法条約が必要となる。なお、2004年10月、ローマで締結された憲法条約がこのような機能を果たすかどうかは疑わしい。膨大な憲法条約のどの側面を重視するかによって見解は異なり、賛否両論主張されているが、Merkel 首相はかねてより、憲法条約の重要性を強調している(参照)。


    (参照) 各国の批准状況



 2006年10月11日、Merkel 首相は、理事会議長国期間中、ドイツは憲法条約の発効に向けた「時刻表」の作成に力を入れると発表した。これは、2006年6月の欧州理事会決議に沿った政策課題であるが、議長国期間中の発効は想定されていない。

 Merkel 首相は、特定の規定を憲法条約から切り離して発効させる案を批判し、EU機構制度改革を実現させるだけでは足りず、EUの基本的価値を定めた「真の憲法」の発効が重要であると述べた参照)。





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 議長国期間中の重要テーマについて話し合うため、ドイツ政府は、2006年10月11日、欧州委員会の Barroso 委員長 と協議する予定である。


 2006年10月11日、Merkel 首相を初めとするドイツ政府閣僚は、Barroso 委員長 とドイツ理事会議長国期間中の主要課題について協議した。その後に開かれたプレス・コンファレンスにおいて、Merkel 首相は、特に、@ 3月25日の式典開催と、A 欧州憲法条約の重要性について語っている(参照)。




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(参照) Deutsche Bundesregierung, 7. Oktober 2006 (Video-Podcast zur deutschen EU-Präsidentschaft)



Deutsche Bundesregierung, 11. Oktober 2006 (Europäische Verfassung bis 2009 verabschieden)

 

Deutsche Bundesregierung, 11. Oktober 2006 (Pressestatements von Bundeskanzlerin Merkel und dem Präsidenten der EU-Kommission José Barroso)



EU理事会議長国ドイツ、EU共通の価値の確立を目指す New

議長国ドイツの公式サイト

 



(2006年10月9日 記  12月2日 更新)