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欧州憲法


憲 法 条 約 批 准 手 続 の ゆ く え
協議



1. フランスとオランダにおける国民投票

2.直後のEUの対応

3.独仏首脳会議

4.イギリスの「クールな」反応
 

5.その他の加盟国の反応

6.2005年6月の欧州理事会

7. イギリス − 2005年下半期のEU理事会議長国

8. EU拡大への影響


9. 欧州委員会の対応



10. 2006年1・2月の動き


11. 2006年3・4月の動き

12. 2006年5月の動き

13. 2006年6月の動き

14. 2006年下半期の動き

15. 2007年上半期の動き New

 






  1. フランスとオランダにおける国民投票


 2005年5月29日のフランス国民投票で欧州憲法条約の批准は否決された。批准反対票は、54.87%であったが(詳しくは こちら)、3日後の6月1日、オランダ国民は、反対姿勢をより明確に示すことになった。63.9%という比較的高い投票率の下、有権者のほぼ3分の2は反対票を投じた。この結果を受け、本来は拘束力のない投票結果を尊重するとオランダ政府は表明している(詳しくは こちら)。

 なお、国民投票で政府の方針(批准支持)が否決されたことを受け、フランスでは首相が交代している(詳しくは こちら)。他方、オランダの政権に変化はない。

        リストマーク フランス国民が憲法条約の批准に反対した理由こちらも参照)
        リストマーク オランダ国民が憲法条約の批准に反対した理由




  2. 直後のEUの対応

 フランスとオランダが批准を見送ったため、憲法条約の「死」が指摘されるようになる中、欧州議会Josep Borrell Fontelles 議長EU理事会 議長国の Jean-Claude Juncker 首相、 また、欧州委員会Barroso 委員長 は、5月30日、共同で声明を発し、加盟国に批准手続の続行を訴えた(詳しくは こちら)。しかし、それ以外に具体的な「救済策」は講じていない。この問題は、6月16・17日の 欧州理事会 で検討されるものと解される。


 Barroso 委員長 は、各国が独断的な行動に出ること(批准手続を一方的に中断すること)をけん制しているが、それ以外には打開策を提示していないとして批判されている。また、将来、EUは 安全保障政策経済発展 に集中すべきであるとのビジョンを示しているが、フランスやオランダの国民投票の結果を考慮すると(参照)、現在、求められているのは、社会政策 の強化・改正であるとして批判されている(参照)。

 他方、EU理事会 議長国の Jean-Claude Juncker 首相 (ルクセンブルク)は、自国では国民投票を予定通りに実施し(7月1日)、批准が否決されるようなことがあれば、辞任するとして強い態度で臨んでいる(詳しくは こちら)。

 
  リストマーク Barroso 氏と Juncker 氏の対応





  3.独仏首脳会議(2004年6月)


 批准手続の中断について検討する加盟国も出る中、独仏首脳は、6月5日(土)、ベルリンで2時間以上にわたり会談し、今後の対応について協議した。終了後、@ 両首脳は他の加盟国に批准手続の続行を要請するとともに、A 6月16・17日の欧州理事会を成功させるため、加盟国は互いに譲歩し合わなければならないという声明が発表された(詳しくは こちら)。

 なお、当初は、EC原加盟6ヶ国(独仏伊とベネルクス3国)の首脳会談が検討されていたが、オランダの不参加によって、この計画は流れた。




  4.イギリスの「クールな」反応

 さらに、イギリスは、独仏首脳の呼びかけには応じず、憲法条約の批准手続を無期限に延期する方針を即座に示した(詳しくは こちら)。そして、週明けの6日(月)には、国民投票の実施は、もはや意味をなさないとする Blair 首相の見解が発表された(参照)。また、同日の午後、Straw 外相は国民投票の「暫定的」凍結について下院で説明した。なお、国民投票の実施を当面、見送ることは、憲法条約の「死」を意味するものではないとされている(参照)。


リストマーク Blair政権の判断の背景

イギリスの批准手続凍結に関するEUのコメント


これまでのイギリスの対応

イギリス人のものの見方





  5.その他の加盟国の反応

(1) ラトビアの批准、ポーランドとデンマークの国民投票

 このように憲法条約の「生命」が危ぶまれる中、ラトビアの国会(一院制)は、6月2日、圧倒的多数の議員の賛成の下、批准を決定した(詳しくは こちら)。

 また、イギリスの反応とは異なり、6月6日、ポーランドの Rotfeld 外相は、国民投票を予定通り、10月9日に実施することを明らかにした。なお、フランスやオランダで批准が否決されたことについて、同外相は、ポーランドの国民投票には拘束力がないことを指摘している(詳しくは こちら)。

 さらに、デンマークの Rasmussen 首相も、6月6日、Blair 首相と電話で話をした後、国民投票を予定通り2005年9月27日に実施すると発表した(参照)。なお、近時のアンケート調査によれば、批准反対派(38%)が賛成派(34%)を上回っている(参照)。


New  6月7日、ポーランドの Kwasniewski 大統領とデンマークの Rasmussen 首相は、国民投票の実施については、6月16・17日の 欧州理事会 の終了後に判断すると述べた。

New ポーランド国民の支持率急落

New ポーランド、国民投票の実施を延期


(参照)  FAZ v. 7. Juni 2005 (EU-Verfassung: Europäisches Domino)

Der Standard v. 7. Juni 2005 (Auch Polen erwägt Verschieben des Referendums)

Der Standard v. 6. Juni 2005 (Dänemark verschiebt Entscheidung über Verfassungs-Referendum)



(2) アイルランドとポルトガル

 他方、アイルランド政府は国民投票の延期を検討しているとされる。また、ポルトガル外相は、6月16・17日の欧州理事会で、加盟国首脳は批准手の中断を決定することになろうとのべている(参照)。

   New 欧州理事会の決定



(3) ルクセンブルク

 現在、EU理事会 議長国を務めるルクセンブルクは、7月1日に国民投票を実施する方針を変更していない。Jean-Claude Juncker 首相 は、批准が否決されるようなことがあれば、辞任するとして強い態度で臨んでいる(詳しくは こちら
 
 なお、6月9日、ルクセンブルク政府が発表した世論調査では、依然として、批准賛成派が多数を占めている(詳しくは こちら)。


New  6月21日、ルクセンブルクの国会は、国民投票を予定通り、7月10日に実施することを決定した。

New  6月28日、ルクセンブルクの国会は批准を支持した(仮決定)(詳しくは こちら)。

    
New  7月10日に実施された国民投票で、批准が可決された(詳しくは こちら)。



(4) ギリシャ

 ギリシャ国会は、すでに憲法条約の批准を決定しているが(詳しくは こちら)、6月9日に公表されたアンケート調査結果によれば、批准反対派が賛成派を大きく上回っている(詳しくは こちら)。



       リストマーク チェコの状況については こちら





  6.2005年6月の欧州理事会

 直面している危機的状況 について、EU加盟国は、2005年6月16・17日の定例 欧州理事会 で審議するものと見られているが、批准手続の中断が濃厚である。しかし、それによって危機は、むしろ深まるだけであるとの見方もある(参照)。

 原加盟国であるフランスとオランダ抜きのEU統合は考えられないため、両国に有利な条項を憲法条約内に盛り込むといった打開策も完全には否定されないが、その場合には、すでに批准を決定した国も、手続を最初からやり直さなければならない(憲法条約が修正されるため)との指摘もあり(スウェーデンの Persson 首相)、6月16・17日の欧州理事会で、フランスやオランダがどのような要請を行うか注目されている。

 アイルランドとチェコは、国民投票の実施について、まだ検討中であるが、最終決断は、6月16・17日の欧州理事会まで待たれることになろう。なお、かねてより、オーストリア政府は、EUレベルで統一して国民投票を実施することを提案しているが、支持されていない。

 欧州憲法条約は、批准が難航する場合について、予め定めている(詳しくは こちら)。


リストマーク  欧州理事会における、その他の重要議題

 ・ EU財政計画 (イギリスの優遇策の見直し
 ・ 第2次東方拡大こちらも 参照)
 ・ トルコのEU加盟問題


 ・ ルクセンブルク首相の見解

 ・
ラトビア大統領の見解

 


 New 2005年6月16日、欧州理事会は、フランスオランダ の国民投票の結果を考慮し、「検討、説明、議論の期間」(une période de réflexion, d’explication et de débat/a period for reflection, clarification and discussion )を設けることを決定した(いわゆる Plan D の採用)。憲法条約の批准に先立ち、EU市民との対話や議論を徹底させ、憲法条約に対する理解・支持を深めることになるため、批准手続は一時中断されることになるが、具体的な判断は個々の加盟国に委ねられている。


 
リストマーク 欧州理事会の決定
Plan D
7ヶ国、批准手続を延期
 
 

 7. イギリス − 2005年下半期のEU理事会議長国


 6月の 欧州理事会 で事態を完全に収拾することは困難と解されるが(ポーランド大統領)、7月1日に予定されている ルクセンブルクの国民投票 が一つの試金石になろう。これを皮切りに、2005年下半期には、「批准危機」の打開策について本格的に協議されるものと解されるが、向こう半年間は、イギリスが EU理事会議長国 として、議事運営を司る。イラク戦争時のパートナーであるポーランド(やイタリア、スペイン)と共に、独仏連合 に対抗する構図も浮かび上がるが、社会政策(社会モデル)や経済政策(サービス市場の自由化)が新たな争点になろう。まさに、これらの問題がフランス国民投票に大きな影響を及ぼしているが(詳しくは こちら)、イギリスは、アメリカ型の自由経済を目指しているのに対し、ドイツやフランスは、伝統的なヨーロッパ型社会モデルを基調に据えている(参照)。
議長国イギリスの主張に押されると、フランス国民は、ますます憲法条約に背を向けることになると解される。





 8. EU拡大への影響


 「憲法条約批准危機」は、EUのさならる
拡大 に影響を及ぼさないとする見解も主張される中、当面は、「拡大」ではなく、「深化」を重視すべきであるとする意見も聞かれる。

   リストマーク ブルガリア、ルーマニアへの警告


 とりわけ問題視されているのは、トルコのEU加盟 であるが、フランスとオランダの国民投票の後、トルコの Gül 外相は、批准が否決されたのは、自国のEU加盟のせいではないと述べている(参照)。しかし、オランダでは反イスラム主義が強く唱えられていたし(参照@A)、また、フランス国民の35%は、トルコのEU加盟に反対するあまり、憲法条約の批准にも反対票を投じたと解されている(参照)。

 EU加盟国政府やEUは市民の見解に耳を傾けなければならないことが指摘されているが、これは、トルコとの加盟交渉の開始 に大きな影響を与えるものと見られる。

 また、国民投票の結果を受け退陣した Raffarin 首相に代わり、政権の座についた de Villepin 氏(フランス)は、EU加盟ではなく、「特権的パートナーシップ」の形成について検討すべきであると発言している(こちら も参照)。この代替案は、かねてより、ドイツの最大野党 CDU・CSU によって提唱されているが(詳しくは こちら)、2005年5月の地方選挙の後、ドイツ国内の勢力図版は完全に塗り替えられており、9月に前倒しで実施される国政選挙では、CDU・CSU が8年ぶりに政権を奪還する可能性が濃厚である。実際に政権交代が実現すれば、トルコとの加盟交渉に大きな影響が生じるものと解される。

 トルコとの加盟交渉の開始は再検討すべきとする見解は、スペインからも聞こえる(Miguel Angel Moratinos 外相)。



リストマーク トルコの反応

キプロス承認拒否に対するEU加盟国の批判




 9. 欧州委員会の対応 

   "Community Lisbon Programme" の採択

  ・ 新しいコミュニケーション戦略 

  ・ Barroso 委員長、憲法条約の早期発効を否定
New





 10. 2006年1・2月の動き


 2006年6月、欧州理事会は憲法条約の批准について、再び協議することになっているが(参照)、上半期、理事会議長国を務めるオーストリアに対する期待も強まっている。


 憲法条約の見直しや、分割(現時点でも、特に争いのない部分や今後のEUの発展に非常に重要な部分のみを切り離し、批准手続を進める)を求める見解も有力に主張されているが、1月19日、欧州議会は、現在の条文案を支持し、2009年中の発効を目標にすべきとの決議を採択した(参照)。

 また、2月8日、ベルギーではすべての地方・共同体議会の意思決定が終了した(参照)。これによって、2005年10月、ルクセンブルク国会が批准を正式決定してから約4ヶ月ぶりに批准手続を整える加盟国が現れた。




  New  2006年上半期議長国オーストリアと憲法条約論議


 2006年6月26日付けの日刊紙 Die Welt によれば、議長国就任に際し、オーストリアのPlassnik 外相は、他の加盟国に書簡を送り、憲法条約に関する議論について意見を求めたが、若干の加盟国からしか返答は得られなかったとされる。憲法条約の批准を見送ったフランスやオランダはもとより、イギリス、ポーランド、チェコなどによって懐疑論が主張される一方で、議長国オーストリアのイニシアチブの下、6月の欧州理事会 は今後の方針を決定するにいたっている。


(参照) Die Welt v. 26. Juni 2006 (Klein-klein für die große Union)





 11. 2006年3・4月の動き


 2006年6月、EU加盟国首脳は、憲法条約の批准について協議する予定であるが(参照)、3月、ポーランドの Kaczynski 大統領は、民意を考慮すれば、条約の「復活」など望ましくないと発言し、批准推進派をけん制している。これは、憲法条約の発効は、ポーランドにとって必ずしも好都合ではないといった事情に基づいていると解されるが(参照)、他方、憲法条約が有利に働くドイツは、2007年上半期のEU理事会議長国就任をにらみ、批准手続の活性化に着手するとみられている。2006年4月18日付けの Die Welt 紙は、一面のトップ記事で、Merkel 首相は、5月11日にもこの方針を表明するであろうと報じている(Merkel首相、早期発効を否定)。ドイツが理事会議長国を務める2006年5月ないし6月には、フランス大統領選も予定されているが、フランスの最大のパートナーであるドイツのイニシアチブが憲法条約の「生命」を救う最後の手段になるとみられる。なお、その功が奏し、批准手続が再開されるにせよ、最終的に、イギリスが批准を否決するため、大プロジェクトは失敗に終わるとの見方もある(参照)。


 他方、4月の総選挙で辛勝し、次期イタリア首相に内定した Prodi 氏(前欧州委員会委員長)は、フランス大統領選の後に協議を再開すべきとしているが、憲法条約の修正(簡素化)の可能性をも視野に入れている。また、修正が施された条約は、2009年の欧州議会選挙の際に、是非を問うべきとしている(参照)。

 憲法条約の発効には、フランス大統領選が少なからぬ影響を与えると解されるが、Chirac大統領は、同じ条約を再び国民投票にかけることはないとしているため、憲法条約の発効は見送られるか、修正ないし細分化が避けられないと考えられる。なお、2006年4月25日、フランス外務省は、憲法条約の発効を待たずに、現行条約の枠組みを維持した上で、EUの機能を改善するための提案を行っている。それには、テロ・組織犯罪対策に関する意思決定手続の簡素化、外交政策の強化、国内議会のEU立法手続への参加、労働者保護の強化などが盛り込まれているが、フランス政府は、6月の欧州理事会での検討を要請している(参照)。


(参照) Dominik Hierlemann, Europa in der Midlife-crisis, FAZ v. 9. März 2006

Der Standard v. 26. April 2006 (Paris macht Vorschläge zum "besseren Funktionieren" der EU)

New ドイツのMerkel首相、早期発効を否定  




 リストマーク 欧州委員会、検討期間の延長を提案

 2006年6月の協議 に先立ち、現在、EU理事会議長国を務めるオーストリア は、欧州委員会に意見を求めていたが、Die Presse 紙 によると、委員会は、4月27日、欧州憲法条約の将来について決定しうる状況にはないため、いわゆる Plan D の延長を理事会に提案する方針を固めた。

 憲法条約の批准を否決したフランスとオランダでは、2007年前半に選挙が予定されており、国内政治に対する影響が懸念されていたが、憲法条約の見直しをも含めた再協議は、選挙前に実施すべきではないと欧州委員会は捉えているものと解される。

(参照) Die Presse v. 28. April 2006 (EU-Verfassung:
EU-Kommission verlängert Denkpause
)

 


 12. 2006年5月の動き


 2006年5月、欧州委員会の Barroso 委員長 は、EEC条約締結50周年 を記念し、EU加盟国は、2007年3月25日、EUの新しい目標や行動計画を発表すべきであると提案した。これは欧州憲法条約の発効には、少なくとも後数年を要し、来年までに適用されることはないとの考えに基づいている。もっとも、このような提案は欧州憲法条約の発効をさらに遅らせることになるとして、一部の加盟国政府や欧州議会より批判されている。また、欧州委員会は、憲法条約のよいところのみを「つまみ食い」しようとしているとの指摘もあるが、これに対し、Barroso 委員長は、現行法が設ける可能性を実現しようとしているだけであると反論している。

     New 欧州理事会の最終決議(2006年6月)

(参照) Die Welt v. 11. Mai 2006 (Barroso fordert ein "Europa der Resultate")




 リストマーク 加盟国外相会議

 2006年5月27~28日、EU加盟国の外相はウィーン郊外のクロースターノイブルク(Klosterneuburg)で非公式の会議を開き、EUの危機 打開策や、欧州憲法条約 について協議した。

 Die Presse 紙 によると、 各国の外相は、いわゆる Plan D を1年間延長することで合意したとされる。また、2007年、ドイツ(2007年上半期のEU理事会議長国)は実効性のある提案を行い、遅くとも2009年までに新 しい条約を発効させることで見解がまとまったとされる(New 2006年6月の欧州理事会はこれを非公式にしか認めていない〔参照〕)。これは、同年6月に予定されている欧州議会選挙に照準を合わせたものと解される。なお、欧州委員会も同年11月に改組される予定である。ルクセンブルクの Asselborn 外相は、2010年ないし2011年を目標にする者は一人もいなかったと発言している(参照)。

 2009年までに発効すべきとされる新条約が、欧州憲法条約と同一ないしそれを部分的に修正したものになるかどうかは定かではないが、2005年6月の国民投票で憲法条約の批准を否決したオランダの Bot 外相は、新条約の名称が「憲法条約」となることはないであろうと述べている。また、ドイツの Steinmeier 外相や、ホスト国オーストリアの Plassnik 外相は、現在の憲法条約の良いところだけを「つまみ食い」するのは良くないとし、憲法条約の細分化ないし部分的な発効を牽制している(参照)。これは、性急な決定の回避を意図した発言と解されるが、最終的には、憲法条約内の機構制度 に関する部分をモデルにし、新しい条約(現行法である ニース条約 を改正するための条約)が制定される可能性が高い。

(参照)    Die Presse v. 28. Mai 2006 (EU-Verfassung soll bis 2009 stehen)

Die Presse v. 29. Mai 2006 (2007: Nächster Anlauf für EU-Verfassung)

New 国民投票から1年が経過したフランスの状況




 13. 2006年6月の動き 


 2006年6月6日、ドイツの Merkel 首相とフランスの Chirac 大統領は、ベルリン近郊の Rheinsberg 城で会談し、2007年上半期、EU理事会議長国を務めるドイツは欧州憲法条約について新たな提案を行い、フランスの理事会議長国期間中(2008年下半期)に採択することで合意した。両国首脳の見解がEU加盟25ヶ国の正式見解になるわけではないが、過去50年間にわたり、欧州統合を統率してきた両国の影響力は決して小さくない。なお、憲法条約に関する議論は、フランスの大統領選終了後(2006年上半期)に再開することで各国の見解はおおむね一致している。打開策ないし妥協案は、フランスの理事会議長国期間中、そのイニシアチブの下で採択される可能性も大きい。 

   New 欧州理事会の最終決議(2006年6月)



 リストマーク 欧州理事会、今後の方針を決定

 Plan D の導入から1年が経過した2006年6月15・16日、欧州理事会は当初の予定通り(参照)、憲法条約について再び協議し、今後の方針を決定した。それによれば、2007年上半期、議長国によって新たな提案が提出され、それに基づき議論が重ねられる。最終決定は、遅くとも2008年末までに採択されなければならないとされている(詳しくは こちら)。これは、27ヶ国体制について定める ニース条約 はさらなるEU拡大に対応しきれないとの認識に基づいているが、クロアチアが2009年に加盟する可能性も強まっている(参照)。なお、2008年末までの採択が目標とされているのは、翌年6月に欧州議会選挙が予定されているためである。2006年5月、加盟国外相会議(EU理事会)は、遅くとも2009年までに新条約を発効させるべきと決定しているが(詳しくは こちら)、欧州理事会はこれを非公式に了承しているに過ぎない(参照)。

 新提案(叩き台)が提出される2007年上半期、議長国を務めるのはドイツであり、同国の Merkel 首相は、憲法条約の必要性を強調しているのに対し(参照)、2008年下半期の議長国フランスは、憲法条約の発効を重視せず、現行条約制度の発展を訴えている(参照)。

 憲法条約の修正に関しては、さらなるEU拡大に不可欠な部分のみを切り離すとする分割案の他に、市場の自由化に対するEU市民の不安を取り除くため、社会的側面を重視する条項ないし宣言を盛り込むことなどが提案されている。また、議長国オーストリアの Schüssel 首相は、条約名から「憲法」という文言を削除することについても指摘しているが(参照)、憲法条約の最大の問題は、その名称にあることが従来より指摘されている(参照)。
 

 なお、2006年7月より議長国を担当するフィンランドの Vanフィンランドの Vanhanen 首相hanen 首相(写真右)は、欧州憲法条約の見直しの動きを警戒しているそれは全加盟国が妥協しうる修正案の採択は不可能であるとの考えに基づいているが(参照)、フィンランド政府は、現在の憲法条約を支持し、批准手続の早期終了(2006年秋)を目指している(参照)。

  写真提供:© European Community 2006





 13. 2006年下半期の動き 


 2006年9月26日、欧州委員会はブルガリアとルーマニアの2007年元旦EU加盟を支持する見解を表明したが(詳しくは こちら)、その際、Barroso 委員長は、憲法条約の発効前に、さらなる国を迎え入れるのは賢明ではないと述べた。これはEUの公式見解ではないが、2009年内の加盟を目標に掲げ、現在、準備を進めているクロアチアに影響を及ぼすものとみられている。他方、EU内では、評判の悪い憲法条約の発効について新たに協議する代わりに、クロアチアの加盟時に機構改革を行うのが望ましいとの見方も出ている(参照)。第3国のEU加盟に際しては、同国とすべてのEU加盟国間で協定(EU加盟協定)が締結されるが(詳しくは こちら)、その中で、EU外相の新設など、憲法条約が定める機構改革を実現することも可能である。なお、EU加盟協定の発効には、すべての締約国の批准が必要とされる点では憲法条約の場合と異ならない。もっとも、「憲法」という名称が削除されれば、市民の抵抗感も和らぐものと解される(参照)。

 2006年下半期、EU理事会議長国のフィンランドは、欧州憲法条約について、個々の加盟国と協議してきたが、12月中旬の欧州理事会 において、Vanhanen 首相 よりその成果が報告された。なお、同理事会の最終決議内に、特筆すべき新しい事項は含まれていない(参照)。

(参照)    Die Presse v. 7. Oktober 2006 (Institutionen: Bekommt Kroatien Verfassung als Rucksack?)





 14. 2007年上半期の動き New


 2007年元旦より半年間、EU理事会議長国を務めるドイツの Merkel 首相は、かねてより欧州憲法条約の重要性を訴えており(参照)、そのイニシアチブが注目されているが、首相は過度の期待を牽制している(参照)。実際に、この半年間で状況が大幅に改善することはほぼありえず、具体的な議論の再開はフランスの大統領選終了後と解されている。いずれにせよ、ドイツ政府は、6月の欧州理事会で、憲法条約の発効に向けた新しい案を示すことになっているが、憲法条約に強く反対している隣国ポーランドやチェコとの見解調整が当面の主要課題にあたる。なお、ポーランド政府は、2007年3月に新しい憲法条約案を発表するとしている。


Friend "Friends of the Constitution"

 1月26日、憲法条約の批准を完了ないし決定している 18ヶ国 の代表は、スペインの首都マドリッドで会合を開き、憲法条約の必要性を確認した。

     リストマーク 詳しくは こちら



 2007年夏のフランス大統領選に出馬予定の Sakorzy 内相は、2月21日、自らが当選した場合には、欧州憲法条約を分割し、国会に提出する方針を改めて表明した。内相が提唱する、いわゆる「ミニ憲法条約」はEUの機構制度に関する部分を中心としており、議論の多い経済・社会政策に関する規定は除外されると解される。また、野党である社会党の大統領候補 Royal も同様に憲法条約の分割に賛成しているが2009年6月の欧州議会選挙にあわせ、国民投票を再度実施することも提案している(参照)。




 リストマーク 新条約の制定へ

 2007年6月21・22日、欧州理事会(EU加盟国首脳会議)は、批准手続が滞っている欧州憲法条約の発効を断念し、新しい条約の締結に向け、政府間協議を開始することを決定した。新条約は、遅くとも2007年末までに起草され、欧州議会選挙が実施される2009年6月までに、全加盟国によって批准されるべきとの目標が掲げられている。








区切り線




TOPICS

  加盟国首脳の見解

   2005年初夏の国民投票 

  欧州憲法条約の批准状況


  憲法条約の最大の問題点

  憲法の受け入れには時間が必要

  EU市民の支持率低下





(参照)

Der Standard v. 6. Juni 2005 ("Fatale EU-Fehler")

Der Standard v. 7. Juni 2005 (Die "Schluckimpfunge" der EU)

FAZ v. 6. Juin 2005 (EU-Verfassung: Blair sagt Referendum ab: "Brauchen Denkpause")


Die Presse v. 6. Juni 2005 (Briten versciheben EU-Referendum auf unbestimmte Zeit)


Die Welt v. 7. Juin 2005 (Im Streit um die Regeln der Ratifizierung)

Tagesschau.de v. 04. Juni 2005 ("EU-Verfassung schon vor dem Ende?")




(2005年6月6日 記 2007年2月22日 更新)


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