CDU・CSUとSPDの政権両立協約では、ドイツの負担軽減が目標として定められている。これを踏まえ、Merkel 首相 は、当初、容易に妥協する姿勢を見せていなかったが、12月15日に開始された欧州理事会で英仏の対立を目の当たりにし、同日の夜には、最大の資金拠出国として、EU財政を支え続ける意向を表明した。また、ポーランドへの予算配当を確保するため、ドイツ国内の地域に対する補助金の削減に合意している。
この結果、ドイツは、2007〜2013年も、従来通り、最大の資金拠出国となる。EUより還元される額(ドイツがEUより受け取る資金)を差し引くと、1年当たり、平均して100〜105億ユーロの負担になるとみられている。なお、2004年の純拠出金額は85億ユーロ、また、1990年代末はそれよりも負担が大きかった(参照)。
(参照) 2003年の負担額
各国の経済力と比較した場合、従来は、オランダ やスウェーデンの負担の方が大きかったが、新しい財政計画では、ドイツが両国を上回る(参照)。その理由について、ドイツの外交筋は、東方拡大 の結果であると説明している(参照)。1989年の東西ドイツ統一後、EUは旧東ドイツ地区の復興を支援しているが、新加盟国を支援するため、旧東ドイツ地区に対する補助金は、約40億ユーロ切り詰められ、130億ユーロとなる。なお、これは、議長国イギリスの提案より2億2500万ユーロ多い。当初、Merkel
首相は3億2500億ユーロの増額を要請していたが、隣国ポーランドに対する予算を確保するため、これを放棄している。
旧東ドイツ地区は、EU補助金の削減に反発し、ドイツ政府(連邦政府)に補填を求めているが、旧西ドイツ地区は、自らの負担増を警戒している。Merkel
新首相は、連邦参議院(Bundesrat)での就任演説(12月21日)において、来年の国家予算編成の際に検討されなければならないと述べているが、近年、ドイツ国内では、中央と地方の財政負担・分配だけではなく、広く連邦制度のあり方について討論が繰り広げられている。また、近年、ドイツは相次いで
ユーロの安定・成長協定 に違反し、財政赤字の削減が急務となっているが(参照)、新しいEUの財政計画は、この点に関する議論にも影響を与えるものと解される。
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