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ド イ ツ  2005 年 秋 の 総 選 挙 と E U 統 合

ドイツ国旗 ドイツの首相(Bundeskanzler)は、連邦議会(Bundestag)によって選出されるが(ドイツ基本法第63条参照)、2005年9月18日(日)、連邦議会(Bundestag)選挙が実施された。主要政党はおろか、連立政権の樹立に合意していた諸政党のいずれも議席の過半数を獲得するには至らなかったため、政権獲得を目指し、水面下では駆け引きが繰り広げられている。

 少なくとも、9月初めまでは、野党 CDU・CSU (保守系)が7年ぶりに政権に返り咲く可能性が濃厚で、制度改革に対する期待も高かった。しかし、投票日が近づくにつれ、与党 SPD (社民党)が集中的な追い上げをみせ、最終得票率は、34.3%に達した。CDU・CSUは、35.2%と僅差(議席数では3つの差)で優位に立っているに過ぎない。選挙戦の最終局面に入って、現状維持を望む国民が増えたことは、改革を訴える CDU・CSU の指導力を低下させただけではなく、同じく、改革が求められているEU政治にも抑止的な効果をもたらすと解される。かねてより、独仏両国は、サービス市場の自由化社会モデル改革 を阻止してきたが、今回の選挙結果は、改革の足取りを緩めることになろう。

 

 CDU・CSUの首相候補 Angela Merkel (写真右)は、旧東ドイツ出身ということもあり、米国寄りの外交政策を標榜してきたが、Merkel の強力な指導の下、政権交代が実現していたとすれば、中東欧諸国(新規加盟国)をも巻き込み、EUはアメリカとの関係を強化することになっとも解される。

 また、トルコのEU加盟問題 についても、大幅な軌道修正を迫られることになっていたであろう。かねてより、保守系の CDU・CSU は、イスラム文化圏に属する国のEU加盟に反対の立場を明確に表明してきた(参照)。なお、かつて、CDU は、外国人問題を選挙テーマにし、勝利を収めたこともあるが、今回の総選挙では、特に触れられていなかった。


 9月20日現在、次期政権のゆくえは、まだ霧の中であるが、EU内におけるドイツの指導的役割を重視し、欧州委員会の Barroso 委員長は、政権の早期発足の必要性を訴えている。同委員長は、6月の首脳会議でまとまらかなった EU次期財政計画 の年度内作成を目指しているが、そのためには、ドイツの国内政治が早期に軌道に乗る必要がある(参照)。しかし、刷新的な新政権が誕生しないとすれば、EUの政策発展は滞ることになろう。


Frau Merkel

Angela Merkel (CSU)

 Merkel が首相に選ばれれば、ドイツ発の女性首相の誕生となるが、欧州委員会の Kroes 委員(競争政策担当)は、Merkel が 同じく女性であることを理由に支持すると述べているが、これは、加盟国政治への干渉ないし選挙の中立性を害するとして批判されている(参照)。



Bundeskanzler Schroeder

Gerhard Schröder
現首相 (SPD)

 総選挙では、CDU・CSU に僅差で敗れたが、個人的な支持率は、Merkel 氏よりも高い。


写真提供:
Audiovisual Library European Commission




(参照) Die Presse v. 17. September 2005 ("Deutsche Wahl entscheidet über Reform-Trend in EU")

Der Standard v. 19. September 2005 ("Barroso fordert Einigung auf EU-Budget bis Jahresende")

Spiegel Online v. 15. September 2005 ("EU-Kommissarin spricht sich für Merkel aus")




(2005年9月19日 記  9月20日更新)