リスボン戦略が採択されてから4年あまりが経過したが、顕著な成果は現れていない。逆に、EU経済は停滞し、米国やアジアとの格差は広がっている。また、雇用問題や高齢化対策の必要性は、これまで以上に高まっている。さらに、2004年5月の東方拡大は、戦略の必要性をより強く裏付ける結果となった。
主要経済データのEU・USA比較 @
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E U |
米 国 |
労働生産性
(1996〜2003年平均) |
+1.4% |
+2.2% |
経済成長率
(1996〜2003年平均) |
+1.4% |
+2.8% |
雇用率 |
EUの雇用率は、1999年の62.5%から2003年は64.4%に上昇したが、依然として、米国より7%ほど、低水準にある。 |
研究・開発への投資 |
GDPの2% |
約3% |
(参照) |
Europäische
Kommission, Vertretung in Deutschland, EU-Nachrichten, Nr. 39, Seite 5.
この統計は、High Level Group 報告書 に基づいている。 |
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主要経済データのEU・USA比較 A
2003年の予測
一人当たりのGNP |
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一人当たりの
労働生産性 |
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雇用率 |
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(参照) |
Europäische Kommission, Vertretung in Deutschland, EU-Nachrichten, Nr.
40, Seite 5.
この統計は、High Level Group 報告書 に基づいている。 |
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確かに、基調に据えられていた米国IT産業の勢いは衰え、代わりに大規模なテロ事件が発生するなど、外的環境は不利に働いているが、最大の要因は、加盟国の意気込みは弱く、断固とした取り組みがなされていないことにある。もちろん、加盟国は無策に興じていたわけではないが、社会モデルの現代化(柔軟化)に対する市民の抵抗が非常に強く、改革を阻んだ。さらに、掲げられた目標があまりにも高く、相反するものも含まれている一方で、加盟国間の見解にも対立が見られ、必要な調整が十分になされていないことも指摘すべきである。
中間評価について
加盟国の取り組み
EU拡大の影響
経済力に劣る中東欧諸国がEUに加盟すれば、地域間の格差や貧困は、これまで以上に深刻な問題になることが当初より予測されていたが、実際にはこれを上回った。EUの人口は20%増加したのに対し、GDPは5%しか増加していない(一人当たりの生産高は、12.5%も減少した)。また、新規加盟国では地域間の格差が大きく、一人当たりの生産量がEU平均の75%に満たない地域に居住する住民は、7300万人から1億2300万人に増加した。
EU拡大が実現した現在、リスボン政策の目標の幾つかは、これまでに以上に達成困難な課題になっている。例えば、拡大によって、平均失業率は、約1.5%も悪化した。長期失業率は、3.3%から4%に上昇している。
確かに、ほとんどの新規加盟国では、米国を凌ぐペースで、経済成長率や生産性が向上している。もっとも、これは、低税率や低賃金に惹かれ、従来のEU加盟国からの投資が増えていることに基づいており、新旧加盟国間には軋轢が生じている。EU内の結束力を高めるためには、リスボン政策の目標をEU全域で実現することが重要となる。
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