2000年3月、EU加盟国首脳は、2010年までにEUを世界中で最も競争力のある経済圏に発展させるという目標を設定した(リスボン戦略)。米国を念頭においた、この政策目標によれば、2010年までに、3000万の雇用を創出することになっているが、採択から4年以上が経過した現在、様々な分野において欧米間の格差は縮まっていないことが
スウェーデンの Think Tanks "Timbro" の調査で明らかになった。同様に、次期欧州委員長に就任予定の
Barroso 氏 も、期限内の目標達成は不可能であるとの見通しを示している。
多くの加盟国の労働市場は回復基調にあるが、EUレベルでみると、失業率は上昇傾向にある。リスボン戦略は、雇用率70%を目標にしているが、現在の雇用率は64%に留まっている。また、一人あたりのGDPは、米国の約65%に過ぎない(ユーロ圏では約70%)。高い所得と軽い税負担に支えられ、アメリカの個人消費は高水準にあり、"Timbro"
の調査によると、EUとの格差は77%に達している。また、アメリカの生産力は、年間2%の割合で上昇しているのに対し、EUでは、0.5〜1.0%と停滞している。さらに、研究開発費の伸びも米国に比べると鈍い。
スウェーデンの Think Tanks "Timbro" によると、ヨーロッパの政治家や市民は、現実から逃避しており、今日の経済問題に対応しきれていないとされる。また、今後、制度改革が迅速に進むにせよ、大幅な遅れの回復は困難とされるが、そもそも速やかな改革は期待しえない。特に、ドイツでは、現在進められいる社会制度改革(失業・低所得者保障の切り詰め)に対し、毎週のようにデモが行われている。
他方、EUによる規制強化を批判する企業も少なくない。1990年以降、環境政策の分野だけでも、約600以上の法規が制定されており(参照)、世界一の企業活動規制は、経済成長を鈍らせているとされる(参照)。
さらに、リスボン戦略の実施に必要な権限がEU(EC)に与えられていないことも見過ごしてはならないであろう。つまり、雇用政策、租税政策、競争政策、産業政策、また、加盟国の財政に関して、EU(EC)には、強力な権限が与えられていない。Lisbon
Agenda を達成すべく、諸分野を統括する「スーパー欧州委員」の創設を求める声も聞かれていたが(参照)、Barroso 新委員長(内定)はこの要請に応えなかった。現在、EU拡大を担当する
Verheugen 委員がこのような職務を遂行しうるかどうかは明らかではない(参照)。なお、今年11月に就任予定の欧州委員会の任期は5年間である。つまり、リスボン戦略の目標期限である2010年が到来する直前まで継続する。
(参照) Die Welt 2004年のEU雇用統計 Wok報告書
|