2006年3月23・24日、ブリュッセルにおいて 欧州理事会 (EU加盟国首脳会議)が開催された。毎年3月の会議では、経済問題を中心に協議されているが、今回も、リスボン戦略 やエネルギー政策の強化といった経済的な案件に議題が集中した。主な成果は以下の通りである。
リスボン戦略へのてこ入れ 〜 雇用の創出と経済成長
2005年末より、EU経済は次第に回復しつつあり、2006年は本来の水準に到達するものと解される。2005年から2007年までの3ヶ年間、EU内では、新たに600万の雇用を生み出すことができるであろう。他方、失業率は、最も悪かった2004年末の9%から、2007年には8%台に低下すると考えられる。このように状況は好転しつつあるが、失業者の削減、生産性の向上、また、ダイナミックな経済発展は、今後もEUの最も重要な課題であることに変わりがない(para.
7)。
2005年3月の欧州理事会(リスボン戦略の中間評価)の決議に従い、各加盟国は国内制度改革計画を提出しているが、2006年秋、各国は、その実施状況について報告するものとする。また、欧州委員会は、2007年3月の欧州理事会に備え報告書を作成し、優先事項や追加措置の必要性について提案するものとする(paras.
10-15)。
雇用の創出と経済成長を達成するため、従来どおり、 教育(生涯教育を含む)、職業訓練、研究・開発を強化し、また、中小企業を奨励する(paras.
16-33)。また、2010年まで、毎年、200万の雇用を新たに創出するだけではなく(para. 36)、学校中退者の割合を10%削減し、すべての者の教育水準を引き上げる(para.
38)。さらに、2007年末までに、学校を卒業した者は6ヶ月以内に職業、見習い職、進学、または、その他の職業に有利な措置を受けることができるようにし、2010年までに、この期間を最高4ヶ月に短縮する(para.
38)。
労使双方のニーズを満たし、EU経済や労働市場を活性化させるため、加盟国は、柔軟性(flexibility)と社会保障(social security)のバランス関係("Flexicurity")を調整する(para.
41)。
経済のグローバル化によって生じた構造変化に対応し、また、労働者の再教育を支援するため、欧州委員会の提案に従い、グロバリゼーション・フォンドを設ける。この基金は、2007年1月1日より運用されることが望ましい(para.
42)。
エネルギー政策 〜 EUレベルでの政策の強化
原油・ガス価格の高騰、世界的な需要の伸び、エネルギー生産や運搬の安全性、環境に与える影響、また、2007年6月のEUエネルギー市場の自由化など、現在、EUは多数のエネルギー問題に直面している。これらの課題に取り組まなければ、環境、雇用、経済成長に悪い影響が生じると解される(para.
43)。それゆえ、欧州理事会は、EUレベルでの環境政策の強化を要請する。この政策の目標は、@ 供給の確保、A 競争力の維持、B バランスの取れた環境保護の3点にあるが、従来、エネルギー政策に関する基本的な権限は加盟国の下に残されており、ECに強力な権限は与えられていない。それゆえ、各 国の需要や政策に十分配慮した上で、その政策を調整する必要がある。また、エネルギー政策は、環境政策、域内市場、雇用政策、地域政策、対外貿易、第3国の発展支援など、内外の多くの政策に関連している。そのため、諸政策との調整を図る必要性がある(paras.
44-46)。
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