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EU 東方拡大より1年
欧州の家の建設


新 加 盟 国 の 躍 進

EUの旗 2005年5月1日、歴史的なEU拡大(リストマーク 東方拡大)は、1周年を迎えた。戦後45年にわたるソ連の支配から解放され、「本来帰属すべきところへの回帰」として熱狂的に支持されたEU加盟は、12ヶ月が経過した現在でも、中東欧諸国では歓迎されている。国内経済が著しく発展し、2007年中のユーロ導入が見込まれる国も出てくる中(参照)、欧州統合懐疑論はすっかり鳴りをひそめてしまった。具体性を帯びつつある、さらなるEU拡大(詳しくは こちら)についても、支持する見解が強い(参照)。


リストマーク  

東方拡大より1年、中東欧諸国の現状




従 来 の 加 盟 国 の 慎 重 論

EUの旗 これに対し、従来の加盟国では、東方拡大や、さらなる拡大に慎重な見解が有力である(欧州議会の冷めた見方について)。その背景には、国内経済の停滞や、それに伴う雇用情勢の悪化だけではなく、EU内の競争条件の激化が横たわっている。つまり、域内市場が完全に自由化された場合、労働力の安い新規加盟国に対抗しえず、職の喪失や労働・生活条件の悪化といった事態に不安を抱くEU市民も少なくない(詳しくは こちら)。また、活動の拠点を外国(特に新規加盟国)に移し、国内では人員削減を進める企業に対する批判も高まっている(詳しくは こちら)。




リストマーク 欧州憲法条約の批准

 このような状況下、フランスでは、欧州憲法条約の批准の是非を問う国民投票(5月29日)は、憲法条約そのものではなく、現在または将来の欧州統合のあり方を問う機会として位置づけられる傾向にある。これは、確かに、憲法条約の理解は困難なであり、また、大半のEU市民は憲法条約を手にしたことすらないが(参照)、欧州統合や国内政治に強い不満や不安が存在するといった現状を反映している。不況や社会・生活水準の低下に対する不満、新規加盟国の安い労働力に対する不安、また、さらなるEU統合への警戒感から、5月29日の国民投票では、憲法条約の批准が否決される危険性が指摘されている(フランスの批准見送り危機)。

 なお、スペイン国民は、すでに2005年2月20日に実施された国民投票で、批准を支持しているが(賛成票は76.7%に達した)、ここでも欧州憲法条約の内容そのものではなく、欧州統合に対する国民の見解が大きく反映されている(スペイン国民、憲法条約を支持)。


 東方拡大から1年、欧州憲法条約の批准を機に、EU市民は欧州統合のあり方について再検討することになったが、(東方拡大やさらなる拡大を直接的ないし間接的な理由として)憲法条約の発効が見送られるとすれば、EUの発展に大きな障害が生じかねない。確かに、憲法条約は、市民により身近な形で欧州統合を進展させることを目的にして制定されたが、大きな効果は期待できない。また、憲法条約は、国際舞台におけるEUの発言力強化を目的にして制定されたが(EU外相の任命)、その効果も疑問視されている(参照)。そのため、憲法条約が発効しない場合は、ニース条約の下での現状が維持されるに過ぎないとの見方も可能である(参照)。しかし、統合のあり方について影響が生じるのは避けられず、拡大EUの細分化も予測される(参照@A)。



リストマーク さらなる試金石

 フランスの国民投票(5月29日)の2日後には、オランダでも国民投票が実施される予定であるが(参照)、6月にはEU予算枠の決定(参照)、また、10月にはトルコとの加盟交渉の開始など、欧州統合のあり方が問われる案件が待ち受けている (参照 Süddeutsche Zeitung v. 4. April 2005, Seite 4, "Wie Europa besser wird" )




25 ヶ 国 体 制、統 制 可 能


 2005年4月30日、欧州委員会の Ferrero-Waldner 委員(対外関係担当)は、母国オーストリアのラジオ放送において、東方拡大後、EUの作業は困難になったが、不可能ではないと語り、当初危惧されていた機能麻痺状態は生じていないと語った。また、さらなる拡大(ブルガリアやルーマニアの加盟)を歓迎する立場を再確認している。


(参照) Presse v. 30. April 2005 ("Wichtig, dass wir als großer Akteur auftreten")

オーストリアの Ferrero-Walder 外相、欧州委員に指名



(参照) FAZ v. 30. Apirl 2005 ("Auf der Baustelle")

東方拡大より1年、中東欧諸国の現状

ラトビアの Vike-Freiberga 大統領、新旧加盟国間の軋轢について語る


東方拡大より2年 New


(2005年5月2日 記)




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