2005年4月13日、欧州議会は圧倒的多数の下、ルーマニアおよびブルガリアと EU加盟協定 を4月25日に締結することを了承した。投票結果の詳細は以下のとおりである。
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賛 成 |
反 対 |
ブルガリアとの加盟協定締結 |
522 |
70 |
ルーマニアとの加盟協定締結 |
497 |
93 |
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ルーマニアの新規加盟に反対した議員が多いのは、①汚職対策、②司法制度(特に刑事訴追)の改善、③少数派の保護、④環境保護、⑤競争政策の面で、依然としてEUの水準に達していないと判断されたためであるが、現時点では、ブルガリアもすべての加盟要件を満たしているわけではない。特に、汚職や組織犯罪対策の拡充が不可欠とされているが、ルーマニアに比べれば、状況は優れている。なお、4月12日、欧州委員会の
Rehn 委員(EU拡大担当)は、両国の諸制度改正の進捗状況によっては、加盟時期を遅らせることもありうることを明確にしている。
ブルガリアとルーマニアのEU加盟は、2007年元旦に予定されているが、21ヶ月も前に加盟協定が締結されるのは異例である。欧州議会内の最大党派である保守政党会派も、当初は、加盟協定の締結は時期尚早と捉えていたが、現EU理事会議国ルクセンブルクの
Juncker 首相(同じく保守系政党に所属)の見解に従い、賛成に回ったとされる。加盟協定の早期締結は、次期EU予算枠の決定 に新規加盟国も参加させる意義があるとされている(参照)。なお、加盟協定の早期締結に関する懸念を取り除くため、EU理事会は、今後の状況いかんによっては加盟時期の延期もありうること、また、ブルガリアとルーマニアの加盟予算は440億ユーロであることを明確にしている。
2005年4月19日付けのオーストリアの日刊紙 Der Standard には、ブルガリアの Georgi Parvanov 大統領のインタビュー記事が掲載された。新聞社との会見において、大統領は、自国のEU加盟や、東欧やCIS(独立国家共同体)におけるロシアの役割について語っているが、EU加盟に関しては、以下のように述べている。
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4月13日の議決において、欧州議会は、ブルガリアとルーマニアの早期加盟に冷めた見方を示したことについて
歴史的なEU拡大が実現した現在、さらなる拡大に対するEU加盟国の熱意は冷めていることや、2007~2013年の予算決定について議論が過熱していることは、理解できる。
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ブルガリアのEU加盟の意義について
ブルガリアのEU加盟は、2つの点で重要である。まず第一に、ブルガリアは南ヨーロッパにおいて重要な役割にを果たしており、EUの南欧政策や地域の安定化に貢献しうる。
第2に、ブルガリアはヨーロッパ半島の東端に位置し、アジアや黒海に隣接する諸国との関係強化に貢献しうる。
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欧州議会が、汚職対策、民主主義の徹底化や人権の保護を加盟条件に挙げていることについて
これまで我々は大きな進歩を遂げているが、欧州議会の批判は完全に理解しうる。
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EU加盟が2007年に実現せず、1年間延期された場合について
現在、ブルガリア国民の70%はEU加盟を支持しているが、支持率は大きく低下することになろう。その結果、現在、進行中の制度改革を完成させることは非常に困難になると共に、EU懐疑論を助長し、その他の南欧諸国にも悪い影響を与えることになろう。
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