国境検問の廃止も人々の往来の自由に貢献しうるが、これはEC法(EU法)ではなく、1985年制定の シェンゲン協定、また、1990年制定の シェンゲン協定実施協定 という国際条約に基づき、実施されている。なお、イギリスとアイルランドは、同協定に基づく国境検問の廃止に完全に参加していない( 特定の加盟国間における緊密な政策協力)。
EC条約は、域内における人の移動についてだけではなく、域外から人の移動についても定めており、EU域境検査、ビザ、庇護、移民などの諸政策がこれに該当する(EC条約第61条以下参照)。1993年11月のEU発足当初、これらは、第3の柱における案件として扱われていたが(参照)、1999年5月発効の アムステルダム条約 に基づき、これらの諸政策と前述したシェンゲン協定(実施協定)の成果は、第1の柱、すなわち、ECの管轄事項に移されることになった(参照 @、A)。
なお、刑事に関する警察・司法協力 は、第3の柱の管轄事項に留まっていた。これは、これらの案件が国家の主権に密接に関わるためであるが、EU内における人の移動の自由の保障(ないし、自由、安全および正義の空間 の創設)という点で、両者の目標は一致している。言い換えるならば、人の移動の自由に関しては、EC条約内の新しい規定(第3部第4編)だけではなく、EUの第3の柱(第6編)を参照する必要がある
。ただし、リスボン条約によってECないし「3本柱構造」は廃止され、EUに一本化されるため、これらの政策はすべて統合される(詳しくは こちら)。
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