欧州委員会は、EU加盟申請国の加盟準備状況を調査し、毎年、報告書を作成しているが、2005年11月9日、トルコに関する報告書(2005年度版) が発表された。146頁からなる同報告書では、経済的基準は満たされつつあるのに対し(なお、民営化に対してはさらなる取り組みが必要とされる)、政治的・法的基準の充足は、2005年に入ってから鈍っていると指摘されている。特に、一部の人権保護(拷問の禁止 や集会の自由)に関しては、改善がみられるものの、侵害のケースも報告されているため、徹底した取り組みが必要とされる。他方、表現の自由 や 宗教上の自由 の保障、少数派の保護に関しては、(ほとんど)改善されていないとして警告している。また、2005年6月1日に発効した 新刑事法(参照 @、A)の適切な執行、裁判所(裁判官)の独立性の保障、軍隊に対するシビリアン・コントロールや議会による国防政策の統制をトルコ政府に要請している。
懸案の キプロス問題 の解決については、国連による和平実現(参照@、A) やギリシャとの関係改善を評価する一方で、さらなる取り組みと 関税同盟 の誠実な履行を求めている。
他方、EU加盟に関する新しい要件である EUの受入れ能力 について、欧州委員会の Rehn 委員 は、現加盟国では最高水準にある 7100万人の人口(参照)と 加盟国の水準を下回っている経済力を持つトルコを迎え入れることは、EUにとって大きな挑戦であると述べている。なお、フランス や オランダ の国民投票で 欧州憲法条約
の批准が否決されたことを受け、さらなる拡大のテンポを緩めるべきであるという見解(参照)については、かつての共産主義国にとって、EU加盟は制度改革の重要なモチベーションになったとして、退けている(参照)。
欧州委員会の報告書を受け、トルコの Gul 外相は、報告書には納得し
がたい点もあるが、まだまだ改善すべき点が多数あることは承知済みであるとした上で、制度改革の続行に意気込みを見せている(参照)。
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