第1次世界大戦中、オスマン・トルコ帝国は、約150万のアルメニア人を殺害したとされるが(自由国民社『現代用語の基礎知識1991年版』参照)、トルコでは、「大量殺戮」という言葉を用いることは禁止されている。それにもかかわらず、「大量殺戮」という表現を
使用した場合は、トルコの新刑法第303条(国家侮辱罪)に基づき、刑事責任が問われることになる。
作家(詩人)の Orhan Pamuk 氏は、「大量殺戮」という言葉を用いたわけではないが、30万人のクルド人と100万人のアルメニア人がトルコで殺害されたと公の場で発言したため、起訴されている。欧州委員会は、有罪判決が下されてはならないと警告し、刑罰が執行されるような場合には、EU加盟交渉を中断する可能性も示唆している。なお、本来、表現の自由を制約する国内法は、加盟交渉が開始される前に廃止されていなければならないため、起訴されたこと自体、厳しく批判されているが、司法当局内の保守派は刑の施行に賛成している。
New 刑事手続の中止
2005年10月、ジャーナリストの Hrant Dink 氏も、アルメニア人の大量虐殺事件について触れ、有罪判決を受けている(参照)。また、2005年夏、トルコ政府や裁判所は、この事件に関するシンポジウムの開催を禁止しているが、EUの圧力を受けたトルコ政府は態度を変更し、開催を許可した経緯がある。
|