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Barroso 欧州委員会、就任1周年を迎える

EUの旗 2005年11月22日、Barroso 欧州委員会は就任1周年を迎えた。その発足に際しては、一部の委員候補 の発言が欧州議会の批判を浴び、人選がやり直されるという異例の事態が生じたため(詳しくは こちら)、就任は、当初の予定より、約20日あまり遅れることになったが(参照)、インド洋津波 (2004年末)への対応を初めとし、EU内外の重要案件に取り組んできた。

 EUが25ヶ国体制になってから初めて発足した現欧州委員会は、歴代の委員会が画期的かつ野心的な目標(① 域内市場の完成、② EUの発足(マーストリヒト条約の発効)、③ ユーロの導入、また、④ 東方拡大の実現 など)を有していたこととは対照的に、大きな目標に欠ける。むしろ、EU発展の負の遺産を取り崩し、EUと市民相互間に横たわる深い溝を埋め合わせることが重要な課題と言えよう(参照)。また、その任期中に開始されることになった トルコとのEU加盟交渉 をどのような進展させるか注目される。



 Barroso委員会自らが、任期中の戦略課題に掲げる経済発展と雇用の創出については(参照)、近時は、取り組みが一段と強化されているとはいえ、まだ大きな成果を挙げるには至っていない。目標の実現に必要とされる サービス市場の自由化国際化への対応 は、一部の加盟国の反発を招いているだけではなく、イギリス寄りであると批判されることもある(参照、11月9日に発表された行政機構の人事改革については こちら)。また、 欧州憲法条約の批准EUの次期予算計画の策定 など、EUが直面する重大案件に関するイニチアチブが弱いと批判されている(参照①)。特に、Barroso委員長が欧州憲法条約の早期発効の可能性を否定したことは(参照)、波紋を広げている。

Barroso 委員長

Barroso委員長

© European Community,
2005

 他方、厳しい状況下においても、絶えず笑みを絶やさず、流暢な弁舌を行う Barroso委員長の政策運営は、就任から1年が経過した現在、一般に受け入れられつつあると言えよう。委員長自らが指摘するように、Delors 元委員長が、域内市場の完成ユーロの導入 といった野心的な政策を推進しえたのは、Mitterrand 仏大統領や Kohl 独首相を初めとする各国首脳の信頼を得ていたことにある(参照)。政治的対立がより顕著になっているEUレベルで、各国の支持を獲得し、進展する国際社会におけるヨーロッパの価値を高めるためには、各加盟国の国内事情をも考慮した多面的な政策立案が求められている。



欧州委員会

Barroso 欧州委員会 © European Community, 2005




(参照) FAZ v. 21. November 2005 (Zunehmend umstritten)

Der Standard v. 20. November 2005 (Barrosos magere Bilanz

 

 


(2005年11月22日 記)